第5話 鳥と空と老人と
ジョブ検査は10秒、また10秒と、おわっていく。
「シロム・シャル・クロウルさん、こちらへ。」
頷くライムの横を通りすぎ、ミリアの前に行く。
目を閉じ、ライムや他の子供達と同様に頭に手を乗せられた時だった。
「何年ぶりか・・・・。」
男の声がした。
声の低い、年取った声質。
シロムがいた部屋にはミリアと自分のような子供しかいなかったはずなのに。
思わず目を開ける。確かめるように。
ちょうど10羽ほど鳥の集団が目の前を通りすぎていく。
いつもはもっと小さく、点のようなものにしか見えないが、
鮮明に大きく見える。
その鳥達が行く場所はわからないが、一面青色に染まっている。
足元は白く霧かかって、雲だと直感的に感じる。
シロムは空にいた。
周りにいるはずの人達が1人もいない。
正面に1人立っているだけで、
白髪で短髪で耳がとがってるのが見え、
獣族ということがわかる。
口角が上げ、頬の筋肉も上がっている。
目尻にシワ多く出来ている。
老人だった。
敵意がない様子が伺えるが、瞳の色が白く、不気味。
不気味さを感じながら、まず状況を整理してみることにした。
名前を呼ばれ、龍族のミリアの前へ行った。
そこで目を閉じて、頭に何かが乗せられた。
検査される子達にミリアが手を乗せせていたからそれだろう。
そのあと何が起きた?
目を閉じて1秒も経っていないのに違う場所にいる、しかも空。いきなり空である。
獣族と思われる老人が1人いて、周りには誰にも居ない。
考えても余計に困惑するだけだった。
そんなシロムを無視するかのように、
老人は続けて口角をあげたままアゴが動く。
「私の名前はシャウル。
とつぜんに申し訳ないが、協力してほしい。」
本当に突然だ。
――――――しかし、このシャウルとの出会いでシロムは大きく運命が変わる。