恋になるための一歩 2
「お前達の情報網を甘くみていた俺が悪かった」
溜め息と同時に呟かれた言葉に、舞は苦笑いするしか無かった。
柏木に出会って数日後、舞は銀行に振り込みついでに名古屋を見ようと市役所に来ていた。手続きを終え、柏木が見掛けたというパスポートの窓口に向かおうとした時、左腕を掴まれた。びっくりして振り向くと懐かしい顔が、先ほどの言葉を呟いたのだ
「そんなにみんなきたんですか?」
「こっちに帰って来てる奴はほとんど現れたんじゃねーかな」
剣人は地下にある自販機でジュース買い、舞に渡す
「まあ、出雲は騒がなかったからご褒美」
自分に向ける笑顔が昔と変わらなくてドギマギしてしまう
「名古屋先生は、先生になってると思ってました」
「教育実習したからって、皆が皆なるわけじゃないよ。それから『先生』はやめるように! あいつら市民ホールで『先生』とか叫びやがって。目立って大変だった」
「お疲れ様です。で、まだ剣道はやってんですか?」
「ああ、一応な。じゃ、仕事に戻るから」
缶ジュースをゴミ箱にいれ、先に歩き出した剣人を引き止める
「名古屋せ、さんは、なんで津山に帰ってきたんですか?」
「もう一度会えると思ったからかな?」
誰に? と尋ねる前に剣人は行ってしまった→