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#14 蠢動

「望、昼飯行こうぜ!」

「今日はパス」


 昼休み。

昼食に誘う同僚の越路こしじ 純也じゅんやに恨めしそうな視線を向けると、望は純也の誘いをあっさり断った。

昨日、山盛りのから揚げと味噌抜きの味噌汁を未来の前で完食した望は、まだ消化しきってない胃袋をさすりながら、胸焼けの薬を飲む為に給湯室に向かおうとした。


「つれない事いうなよ。行こうぜ!」

「お、おい。俺は無理だって」


 自分の判断を他人にひっくり返されるのも、ここまでくれば特技といって差し支えないだろう。

 

 突然の不幸とはいえ、有給込みで十日間もの休暇申請に何も言わず承認印を押してくれた上司。望が留守の間、業務の代行や得意先への連絡を肩代わりしてくれた同僚達。職場復帰した望はまず、迷惑をかけたお詫びとそんな自分を受け入れてくれる課内の皆へ謝意を述べた。

事が事だけに手を叩いて喜ぶ事はできないが、課内の皆も笑顔で頷き望を暖かく迎え入れた。休暇申請の承認印を押した上司である課長の来栖くるす 伸一しんいちはただ肩をたたくだけであった。



「……で未来ちゃんは元気か?」

「おかげ様でなんとかな。純也には全く関係ない事だが」

「そうか、今回の事で未来ちゃんがどれだけ小さな胸を痛めたかと思うと、俺は食欲も失せる気分だったよ」

「……どの辺の食欲が失せたのか、一応聞いておこう」


 カツ丼の大盛りをペロりとたいらげ、付け合せの味噌汁を一気に飲み干す純也を見て、胸の当たりをさすりながら胸焼けが酷くなるのを抑えつつ、横目で純也を見ながら望が聞いた。


「まぁまぁ、望兄さんの事も頭の片隅に無かった訳じゃ無い事を、この際白状しよう。将来俺の兄貴になるかもしれないお方だからな。あっはっはっ」

「そうか、心配してくれたのはありがとう。まぁ将来、純也の兄貴に誰がなるのかは知らないが、そいつには全力で逃げてくれ、と忠告だけはしてやりたいよ。はっはっはっ」


 ”望兄さん”は意図的に無視して、お冷をチビチビと飲みながら、見るとも無しに定食屋に備え付けのテレビに目をやった。丁度昼時のニュースの時間で、眼鏡をかけた男性アナウンサーがニュースを淡々と伝えていた。


「次のニュースです。

 昨日午後十一時頃、路上を歩いていた二十代の女性が、刃物を持った何者かに襲われ腹部を含む数箇所を刺され、その後病院に搬送されましたが、二時間後に出血多量により死亡しました。場所は躑躅ヶ先つつじがさき)三丁目の~」


ーー躑躅ヶ先? 昨日のファミレスのすぐ近くじゃないか。まさか選家さん達じゃないよな?


「……犯人は未だ捕まっておらず、警察は今も全力をあげて捜査を続けている模様です」


ーー犯人はまだ捕まっていないのか。未来も心配だな。メールでもしておくか。ま~あいつに限って大丈夫だとは思うが


「望、どうした? 昼休み終わるぞ」

「え? あ~今行く」


 未来にメールをしようと携帯電話を取り出した望であったが、先に会計を済ませた純也に呼ばれ

結局メール出来ないまま定食屋を後にした。


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