法定利率について
「ご隠居って本当に物知りだよな?」
「藪から棒になんだよ? 褒めたからといって金ならこれ以上、貸さないけどな。」
「そんなつもりじゃないってば。」
「本当かよ? じゃあ逆にこの前、貸した2万円を返してくれ。なっ?」
「・・・2万円も借りてないって。」
「馬鹿だな。利子ってやつが付いたんだよ。」
「・・・そんなの、借りたときには一言も言ってなかったって。」
「でも契約書にサインしたろ? お前の自筆で。」
「契約書っていったって、居酒屋のレシートの裏だろ?」
「でもお前も内容を確認してからサインしたじゃないか? あれで立派に契約書なんだよ。」
「そう言われると・・・。じゃああれだ、『ほうていりりつ』ってやつをを守ってるのか?」
「・・・お前、意味分かんないで言ってるだろ? 法定利率について。」
「細かくはわかんないよ、俺は経済の専門家じゃないしな。でも要はあれだろ?」
「何だよ?」
「あれだよ、あれ。法で定められてんだろ、利率が?」
「まあそうだけど、それじゃ、漢字をそのまま読んだだけじゃないかよ。じゃあ言ってみろ、実際に何%なのか?」
「8%・・・くらい?」
「消費税か何かと誤解してないか?」
「10日で1割ってのは?」
「それは俗に『闇金』って呼ばれる業者がやっていたやつだ。実際には国が許可している利息分を大幅に超えている。」
「最近、よくCMでやってる過払い金ってのは何だ、ありゃ?」
「要は『国が認めた利息分だけ払えばいいよ』ってことだな。」
「無駄に払った分が取り返せるのか?」
「まあ、そういうことだ。」
「それはいいことだな。」
「まあ素人の知識が不足しているところにつけこんだのは業者側の問題だが、無理やり貸し付けたわけではなくって、一応、その利率に納得したから客のほうも借りてるはずなんだよ。」
「言われてみみればそうだな。」
「法律違反だから、急に返してやれって言われても業者も困るだろ?」
「まあ自業自得ってことで!」
「さらっとしてんな。」
「でもご隠居は何でそんなに闇金サイドに同情してるの?」
「儂も一時期、金融業界にいたことがあってな。」
「そうだったんだ? 何銀行?」
「それは・・・聞かない方がいい。一度、聞いてしまったら、お前にはその墓場まで情報を持っていってもらわないといけなくなる。」
「何でいきなりそんなプレッシャー? こわいよ! もっと軽い会話を楽しみたかっただけなんだけど。」
「つまり儂は取り立てもプロ並みだから早く返したほうがいいぞ、早く返せよ、3万円。」
「この短い間で1万円分増えてるじゃねーか! それはどういう利率なんだ?」