第四話《殺害》
「はぁ……? 地獄落としに勝ったと? 嘘を吐くのはよくないと思いますが」
らいらいちゃんは呆れたようにそう言った。
何言ってんだよこいつは……みたいな目で見てくる。
「いや、本当だから!」
「ふーむ、まぁ隊長に勝ったのだからありえないことはないでもないかもしれないかもですけど」
「あ? あの隊長、地獄落としほどは強くないだろ」
「いいえ、強いですよ。この町の五代能力者に入りますから……」
「ふーん、因みにその五代能力者ってのは?」
「隊長とその地獄落とし、後は時空切りや物々生成、後一人は私も知りませんね」
「ふーん、そいつらは敵なのか? それとも味方なのか?」
「敵ですね。隊長と地獄落としは死にましたが、残り三人はかなりの強敵です。これからの殺人は少し控えめのほうがいいと思いますよ」
「殺人に控えめも糞もねーよ。殺したいやつを殺すだけだ」
「はぁ……」
「んじゃ! 行ってくるわ」
「はーい」
……
「さてと……ショッピングモールにでも行くか。いっぱい人がいるだろうし」
「おい」
「あん? 誰だよ…………ってお前は!」
「相変わらずだなてめえは……」
「あの時の……あの時のドーナツの⁉︎」
「はっはっは! そうだ! 俺がドーナツコンビの一人、問答 夏尾だあっ!」
「そして俺もドーナツコンビの一人、霧笹 目的だぁっ!」
「それで、お前遊園地から出てきたようだが何してたんだよ」
「いや、俺最近、遊園地の下に住んでんだよ」
「最近も何も前住んでたとこすら知らねえよ」
はっはっはっはっはっー! 二人で笑った。
「うん、まあ遊園地に住んでることはわかったけどどこに行こうとしてんだよ」
「ちょっとショッピングモールにでも行こうかと」
「はっ、そいつはいいねぇ、何しに行くんだ?」
「ちょいと人殺しをね」
「そいつはよくねぇな」
「よく言うぜ。てめぇ、俺より殺ってるだろ?」
「はっ、わかるか。まぁお前ぐらいになると当然か……」
「あったりまえだろ」
「さーて、と……お前はアムッカーズなのか?」
「ちげえよ。そんなダサい名前の組織入るか?」
「それは俺も思ってた。名前ダサいよな」
「考えたやつの顔が見てみたいぜ」
「見せてやろうか?」
「どうやってだよ」
「全員殺せばいつか見れるだろ?」
「そいつはそうだ」
「お前、俺に協力しろよ」
「あぁ、いいぜ。味方になってやろうじゃねえか」
「はっ、味方は味方でも正義の味方にはなれねえからその辺は頼んだぜ?」
「はっ、当然だ。貴様が正義な訳がない」
「ふん、こう見えても殺人鬼界では正義と呼ばれてんだぜ?」
「ならばその殺人鬼界そのものが正義じゃないんだろう」
「そうかよ。まぁ、期待してんぜ?」
「してねえ癖に」
……
「着いたな」
俺は言う。
「あぁ、着いた」
夏尾もそう言った。
「シリアスな雰囲気ってやっぱ似合わねーわ。とにかくついたなー!」
「だな。とにかく着いた」
「とりあえず俺は一階から最上階まで糸撒いてくるわ」
「おう! 俺は待ってればいいか?」
「んな訳ねーだろ。適当に殺しとけ」
「しゃあねえなぁ」
「んじゃあな!」
言って俺は走り出した。
……
「おい、夏尾、終わったぞ」
用意を済ました俺が、夏尾のところに向かうと、果たしてとんでもない風景が待っていた。
「ん? そうか。じゃあそろそろ行こうぜ」
パッと見て三百はあるであろう死体をバッグに、歩いてくる夏尾がそこにはいたのだ。
「お、お前この時間に三百人もやったのか?」
「んあぁ、そうだけど?」
「お、お前能力は?」
「無限再生だ」
「なんだよ、その無限再生って」
「名の通り、無限に再生出来る。さらに身体能力も少し上がるんだ」
「ふ、ふーん」
不死身ってことか。こいつは強そう。
「お前の能力は何なんだよ?」
「え? えーっとだな。俺に能力はねえんだよ」
「は? お前それで能力者だらけのこの町の住人をぶっ殺そうとしたのか?」
「あ、あぁ……」
「アホじゃねえのか?」
「アホじゃねえよ! てめえ俺を舐めすぎなんじゃねえか?」
「舐めてねえよ」
「嘘吐くなよ」
こうなれば少しショータイムを見せてやろう。何のためにショッピングモール中を走り回ったと思ってるんだ。
「なぁ、夏尾……少し上を見ろ」
「あ? 人がいっぱいいるな」
「ああ、ざっと千人以上はいる。ショッピングモール全体でなら万は行くかもしんねえな」
「あぁ、それがどうしたんだ?」
「全員殺してやるぜ」
「は?」
「行くぞ!」
全ての糸を利用して。
集中力を研ぎ澄まし。
微調整を繰り返し。
一人一人を掌握し。
糸で人を巻きつける。
締め付け締め付け巻きつける。
巻きつけ続け、切り落とす。
全集微一糸締巻!
これが俺の究極奥義!
ちょっと準備に時間かかるけど。
「お、おいおい。全員、体千切れて死んだじゃねえか」
「これが俺の究極奥義だ」
「こいつはすげえな。でも本当に誰も死んでないのか?」
「多分な。普通の能力者ならまず死んでると思うぜ?」
「ほーん。じゃあ見て回ろうぜ?」
「あ? 疑ってんじゃねえか。でもまぁいいぜ。少し服でも買おうと思ってたんだ」
「うん? その赤い服中々似合ってると思うけど?」
「元々は黒なんだよ」
……
「おいおいおい! 生きてるやつがいんじゃねーかよ! つまりてめえらがさっきのショータイムをやったってことかぁっ? ヒャハハッ! 中々面白かったぜぇ? まぁでももうちょっと殺気は隠そうな? バレバレだったから別次元に逃げさしてもらったぜぇ!」
俺たち二人が歩いていると、前から男が現れ、そう言った。
「あ? なんだよ。こいつ生きてるじゃねえか」
「あれ? まぁしゃあなくねえか? 別次元に逃げられたんだし?」
うん、仕方ない。
「ってこいつ五代能力者の時空切りじゃねえか!」
「え? マジかよ」
じゃあまた地獄落とし並みに苦労しないといけないのか……。
「ご名答! 俺様こそが五代! 能力! 者! の! 一人! 時空切り! 時空切りの時空切り男様だぁっ! まぁ名前は嘘だけどな。ヒャハハッ! なんだぁ? お前ら俺様とやんのか? ヒャハハッ! さっさとやろうぜ? ヒャハハッ!」
「うっせえやつだな。ヒャッハー系は今時流行らねえぞ」
俺は呆れてそう言った。
「あ? てめえ俺様を舐めてんじゃねえぞ!時空切り!」
さぁて……どうなるのかな?
「あ? なんだよその穴は」
俺は時空切りが空で切ったところに出来た穴を見てそう言った。
「俺様はなぁ……時空を切れるんだよ。だからなぁ……」
言って時空切りはその穴に入っていった。
「グハッ!」
な、なんだ? 後ろから急に攻撃された?
「ヒャッハー! つまりどこからでも時空を切れば攻撃出来るってことだよ!」
「そ、そういうことかよ……おい、夏尾……お前こいつに勝つ方法思いつくか?」
「いや、全然? でもお前ならやれるって」
「何でお前はそんな冷静なんだよ」
「いや、だって俺は絶対死なねえし」
「そういやそうだったグハッ!」
するとまた後ろから攻撃された。
「雑魚すぎんよぉっ! もっと本気だせよ!」
「んあぁ! うっとしい! 夏尾! さっき買ってきた鉄バット貸せ!」
「あ? ほらよ!」
「よしこれでグハッ!」
うぜえええええええ!
「ヒャハハッヒャッハー! 雑魚雑魚雑魚雑魚!」
「残念だが必殺技は使わねえぜ? あれは一話につき一回って決めてんだ」
だから俺は鉄バットを全力で振り回した。
「ヒャッハーグハッ!」
時空切りに振り回していた鉄バットが当たった。
当たり前だ。振り回してればどんな所から出てこようといつか当たる。
「一発当たったら、フラフラじゃねえか。おらっ!」
言って俺は時空切りの頭を引っ張り、穴から出した。
「さぁて? 鉄バットを使えばどれだけの苦しみを味合わせれるのかなぁ?」
ニヤリと俺は笑い、撲殺を始めた。




