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第二話《技能》

「ここが黒雲(ブラックライド)の本部です」


呪払(じゅばらい)はそう言って指指したのは何の変哲もないような遊園地だった。


「なんだよ、遊びたいのか?」


「そんな訳ないでしょう? 貴方は馬鹿ですか?」


「説明してない癖に馬鹿扱いはねえだろ!」


「いえいえ、たとえどんな事情があろうとも馬鹿には馬鹿と言うべきなのです」


「動物園にでも行ってカバにカバとでも言ってろ」


「カバなんて生き物まだ信じてるんですか?」


「なんでカバをサンタクロースみたいな扱いにするんだよ! カバは普通にいるよ!」


「はぁ、やはり馬鹿はカバですね」


「混ざってるから!」


「まぁ、そんなことはどうでもよくて、とにかくここが黒雲の本部なんですよ」


「どうやって信じればいいんだよ……それこそ馬鹿みたいな奴しかいないこの遊園地を見て、俺はどうやって黒雲とやらの組織の存在を信じればいいんだよ」


「幻覚系の能力を施されてるからですよ。実はあそこの観覧車の下辺りに入り口があるんです」


「ふーん……」


今思ったけどなんで俺こんな奴についていってるんだろう……?

まぁ、好奇心だな。

俺はあの炎使いの臭男を一瞬で倒したこいつが属している組織がどんなものなのかとワクワクしているんだ。


「そういえばですが……」


「うん? なんだよ」


言いつつ、俺たちは入り口まで歩き出した。


「貴方の能力って何なんですか?」


「ん? 能力何か使えないよ?」


「は?」


「いや、は? と言われても使えねえんだよ」


「な、なら何故……隊長はこのような奴を」


「あ?」


「い、いえ……何でもありません」


「そっか」


「着きましたよ」


「うん」


「いや、入ってくださいよ」


「え? 俺からかよ」


「ボーイファーストです」


「そんな概念は知らねえなぁ」


そして、中に入ると急にデカイ、とてつもなくデカイ男二人が俺に向かってタックルするかのような勢いで走ってきた。


「あ、すまん。その辺に(ワナ)があるから多分お前ら死ぬぞ」


男二人は案の定死んだ。


糸に巻かれ、千切れ、死んだ。


「やっぱり張り合いねえなぁ……」


あのドーナツ屋で会った男くらいだろうなぁ……。俺と張り合える奴なんて。


「どうなってるんですか!」


「あ?」


「血の海じゃないですか! どうやったらこんなことに⁉︎」


「すまねぇ、うっかりおっさん二人殺しちまった」


「うっかり⁉︎ あの二人をですか⁉︎」


「ん? そうだけど」


「あの二人は能力者の中でも上位に入る二人ですよ? 黒霜(ダークネスシャワー)白布(ホワイトマント)を使うんですよ?」


「いや、なんだよ闇霜と白布って……そんなん知らねえよ」


「というか……貴方は警備員を二人共殺してどうするんですか? これから貴方が警備員するんですか?」


「ええ⁉︎ そいつは勘弁してほしいなぁ……」


「うーむ、まぁ、どっちにしろ隊長に話を聞かないことには進みません。とりあえず隊長室へ急ぎましょう」


「隊長って女? 男?」


「男ですよ」


「つまんね」


「隊長はつまんなくなんてありません!」


「へぇ、面白い顔でもしてんのか?」


「隊長は面白い顔なんかしてません!」


「わかってるわかってる。そんなデカイ声出すなよ。一旦落ち着こうぜ?」


「落ち着いています。おや」


「どうしたんだ?」


「着きましたよ。ここが隊長の部屋です」


「じゃあ早速隊長とやらを拝ませてもらおうじゃねえか」

俺は小型のドリルを出して、部屋の扉に穴を開けようとした。したのだが……。


「いや、ちょっと待ってくださいよ! 何で穴開けようとしてるんですか!」

と言われてしまったのでやめておく事にした。


「久々にドリル使いたかったってのに……」


「じゃあ……隊長に使ってみてはいかがでしょう?」


「あ? お前隊長に恨みでもあんのか?」


「違いますよ……隊長は貴方ごときには殺されないほど強いんです。それを身をもって感じていただこうと思います」


「ふーん……あ、そんなに強いなら隊長の能力を教えてくれよ。そんくらいはいいだろ?」


「ふむ、隊長はそのくらいで負けないでしょうしいいですよ。隊長の能力は血液爆発(ブラッディクス)、見た相手の血液を爆発させることが出来ます」


「は? なんだそれチートじゃねえか。見られただけでアウトかよ。てか死ぬじゃん? 俺負けたら死ぬじゃん?」


「貴方が勝ったら隊長も死ぬんですし条件は同じでしょう?」


「うーん…………うーん? まぁ………………いいかな? 隊長さんには期待させてもらうぜ」


「はぁ……さっき知り合ったばかりの人が死ぬなんてことは日常茶飯事ですがここまでの馬鹿を見るのは初めてですよ」


「じゃあ扉を開けてくれ」


「本気でやるんですね? じゃあ開けますよ?」


扉が開かれると……男が見えた。


「俺の勝ちだ」


「え? なにを…………」

流石の呪払も驚いているようだった。


俺は扉が開いてすぐに糸を巻きつけたナイフを投げ、相手の目を潰したのだから……。


隊長は目を抑えてしゃがみこんでいる。


「うーん? 隊長さん……弱すぎね? 殺しちゃってもいいの?」


「だ、駄目ですよ!」


「なんだよ呪払、ドリルで穴開けていいっていっただろぉ?」


「そ、そんなこと言ってませんよ!」


「あぁぁぁぁぁあっ! めんどくせぇなぁっ!」


「え⁉︎」


「いいからさっさと殺さしてくれよおおお!」


「は? え?」


「もう我慢できねえんだよおお!」


霧笹(きりざさ)君?」


「よし、殺そう」


俺はドリルを構える。


「普通に使うのはつまらねえな。刺して使おう。何回まで耐えられるかなー?」


いっくぞー!


「オラァッ!」


俺は勢いよく隊長の背中をぶっ刺した。


血しぶきが舞う。舞い踊る。

俺は踊り狂うように何回も刺し狂う。

頭も手も足も容赦無く。

抵抗されても関係無く。

肉塊だって刺し狂う。

肉片だって刺し狂う。

余った肉は食いちぎる。

骨も砕いて血と混ぜる。

混ぜたら飲んで口から吐き出す。

吐き出したものは誰かに任せる。


血俺頭抵肉肉余骨混吐(ダンシングサイキング)! これが俺の技能。


「あ、貴方は何者なんですか……」


「どこにでもいる技能力者だ」


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