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第一話《目的》

「は? こんなもんかよ……」


俺はナイフを相手に向けた。


「期待外れにもほどがあるぜ……」


そして、ナイフをくるりと回し構える。


「お、お前……何なんだよ! 能力者でもない癖に!」

相手はそう言って俺を指差す。


「期待なんてしてねえけどな」


言って俺は相手の首を切り裂いた。



……



俺の名前は霧笹 目的(きりざさ もくてき)


今、俺は能力者(デヴィリティスト)に追われている。


「おいおい……いつまで逃げてんだ? 早く能力(デヴィリティー)を使えよ」

と敵は言った。だが、俺は能力が使えない。


この世界において、能力が使えないなんて奴はよっぽどの落ちこぼれでない限りありえないから、敵は俺が能力を使えると思っているのだろう。


ハハッっと俺は笑い。

「残念ながら俺は能力なんて使えねえんだよ!」

と言いながら突撃した。

もうやけである。


「はぁ? つまんね。ぶっ殺していいよな?」

言うと敵は手を前に出した。

炎出(フレイド)!」

突撃する俺の目の前に炎が迫る。


もう俺の命もお終いか……と思った。


「え?」


だが、炎は消えて、敵は真っ二つになった。


「大丈夫ですか? 霧笹君」

すると後ろから声をかけられる。

「だ、誰だよ……」


呪払 葉来(じゅばらい はらい)と言います。貴方がこれから入る組織、黒雲(ブラックライド)の副隊長を務めています」

「は、はぁ……そうですか」


ってちょっと待て! 黒雲って何だよ。なんで俺が入ることになってんだよ。


「では、着いてきてください。本部に繋がる入り口が、割と近くにあるんです」

「ちょーっとまってくれ? 俺はまだ現状を理解してないんだが?」

「いや、知りませんよ。理解してください」


うーん…………無茶苦茶である。

そもそも、なんで俺が能力者に追いかけられてたんだっけ?


えーっと今日の朝だったかな?

確か……。



「おい! 何俺のドーナツ取ってるんだよ!」

こんな風に言ったと思う。



「あ? お前どれだけドーナツ買うんだよ。ほとんど持っていきやがって」


「だからって奪うなよ!」


「あ? お前喧嘩売ってんのか?」


「何だよそれ。典型的な不良かよ。喧嘩なんて売ってねーよ」


「じゃあ俺が喧嘩を売るから買えよ」


「無茶苦茶すぎるわ! けど……まぁいいぜ? てめえの喧嘩ぐらいドーナツみたいに勝ってやんよ」


「ほぉ? 言ったな?」


「あぁ、言ったさ」


「じゃあ早速……」


始まる……久しぶりの喧嘩だ。


「ドーナツ屋さんから出よう。聖地を汚せない」

ってそっちかよ! でも……。


「聖地を汚せないってのは同感だ。もしかしたらこんなところで会わなければ俺たちは親友になってたかもな……」



「はっ、むしろここ以外では会えなかっただろうよ……」

「確かにな……俺たちドーナツ好き(ドーナツダイスキィ)はここでしか会えねえ」


「だろ? まぁ……そんなことを話してる内に空き地だぁ……!」

「おっと……やはりドーナツ好きと話していると時間が早く感じるぜ」



「よし……喧嘩(バト)ろうぜ?」

「おう……喧嘩(シバ)いてやんよ」



結果は互角だった。



俺たちはお互いを認め合い、二人でドーナツを分け合った。



あれ? この話は能力者に追いかけられてたことと関係ないか。


えーっとその後だったと思うんだよ。能力者に会ったのは……。


「はぁ……喧嘩とかもうちょっとの間したくねえなぁ……」

帰り道、そんな事を思っている時だった。


「ちょっと! やめてよっ!」

「はぁ? 俺が抱いてやるって言ってんだから黙って着いて来いや」

女性が襲われていた。

まだ夕方だぞ……。


「なぁ、その辺にしとけば? その女性嫌がってるじゃん?」


「はぁぁ? 嫌がってなんかねえよ!」


「明らかに嫌がってるだろ。なんかお前臭いし、後臭いし、それに臭いし、ついでに臭いし、おまけに臭いし」


「臭いだけじゃねーかよ! って俺は臭くねえよ!」


「いや、臭いぞ。そこの女性にも聞いてみろよ」


「え? 俺って臭いの?」


「え? あ、はい。かなり臭うかと……」


「嘘だろ⁉︎ 俺そんなに臭かったのかよ!」


「な? 言ったろ。お前は臭いんだよ」


「そ…………そんな」


臭い男は臭いことに絶望して臭いまま悩み始めた。


「今の内だよ。逃げるなら早く逃げた方がいい」

俺は女性にそう言う。


「あ、ありがとうございました!」


「うん、お礼は今度身体で返してくれればいいから」


「え?」


「あ? タダで助けたと思ってんのか? そんな何の理由も無く助けてくれるヒーローみたいなやつなんている訳ねえだろ」


「そ、そんな⁉︎」


「うーん? 返してくれねえの? それじゃあ助け損じゃん」


「そんなこと言われても……」


「あ、じゃあ今即払いってことで……」


「即払い⁉︎」


いいよね? そう言って俺はナイフを取り出した。



気づけば目の前の女性は倒れていた。


「呆気ないなぁ……」


呟いて、臭い男を見る。


「俺は……臭いのか?」

まーだ悩んでやがる。めんどくせぇ……。


「なぁ、臭男さん」


「あ? 何だよ! ってあいつはどこいったんだよ!」


「あぁ、そこで死んでますよ」


「俺が臭い事について悩んでる内に何があったんだよ!」


「知らねえよ。臭いんだよ」


「臭いのは関係ないだろ! 後お前口調変わりすぎだろ! キャラくらい安定させろ!」


「安定しないキャラって斬新でいいと思ったんだがなぁ……?」


「あぁぁぁぁ! 本気で腹立ってきた! お前は殺す! 絶対だ!」


そう言って臭男は炎を放ってきた。遠距離では勝てないと思った俺は逃げることにするのだった。



回想終了。



「あれぇ……わかんない。結局この呪払って女は何者なんだぁっ?」

「葉来と呼んで下さい。これからは仲間なんですから」


うん、その仲間になるまでの過程もわかんない。

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