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紫煙をくゆらせる  作者: 如月春水
プロローグ
2/2

プロローグ-1-





警察官になりたい。


そう思ったのは、小学校2年生の夏のことだった。


夏休みになって、友達と遊ぶアポイントメントを取り付けることのできなかった平日の昼間ほど暇なものはない。


テレビをつけても奥様が好きそうな世間話の肥やしばかりで、昼寝を充分たっぷりとった昼下がりを持て余すばかりのこの時間を、なんとか有意義なものにしたいと幼いながらに考え、テレビのリモコンでぐるぐるとチャンネルをかえ、一瞬でも興味のひかれる話題はないものかと探していく。


1ミリもそそられることのない長寿コメンタリー番組に、ノンフィクションのどろどろ三角関係を取り上げたバラエティー番組、声ばかりが耳に残る通販番組、演歌ばかりの歌番組、面白みを全くもって感じない教育チャンネル、あげく淡々と原稿を読み上げるニュース番組ときた。


そんな中唯一見られそうなものが、再放送で一挙3話放送していた刑事ドラマだった。


枯渇していた喉を潤すには、じゅうぶんすぎるワクワクだった。


そんなわけで警察官になることを将来の夢とした少年は、その年の文集に、平々凡々ではあるが着実に夢と現実を盛り込んで、かつそれが如何に難しい「普通」であるかをわからない故の可愛らしさたっぷりの理想を語ったのだった。




「道重、」


「あ、はい。」




道重一真。現在29歳。警部補。




「文集、ありがとうな」


「…別に貸したくてお貸ししたわけじゃないです」


「わかってるよ。"寝ぼけて本棚から参考文献をとったつもりが、小学生時代の文集を持ってきてしまった"だろ?」


「馬鹿にしてます?」


「30歳になったら、立派な警察官になって、かわいいお嫁さんと子供と3人で、大きなお家で幸せに暮らしている。可愛らしい素直な小学生だったんだな」


「高橋さんっ!!」


「来週の30の誕生日、ウチの嫁さんがお祝いしてやりたいみたいだから、俺の家にくるといい。匠も会いたがってる。」


「…ありがとうございます。、ぜひお伺いします」




独身。現在29歳。彼女にも先日別れを告げられたばかり。


憂鬱にも、来週、30歳の門をくぐる。






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