第8話 虫送
雨が降ったおかげで草木の葉に水滴がついている。太陽の光を浴びてきらきらと輝くそれに朱羅は顔を近づけた。雨と草の匂いが入り混じり、雨上がりの独特の匂いとなり辺りに広がっている。土も柔らかい。だが、ここ最近降ったり止んだりを繰り返す雨ももうそろそろ終わるだろう。村では明日行われる祭の準備をしている者もいた。それに参加したくても朱羅は出来ない。朝日村に荷物を届ける仕事に駆り出されたのだ。草太や藤助も文句を垂れているが、祭の準備よりかは楽な仕事にまんざらでもないらしい。
「朱羅、おめェいつまでそこにいんだよ」
「皆が来るまで」
「そこで待ってたって何にもなんねェだろうが。こっち来い」
「はいはい」
腰を上げ朱羅は草太のいる所まで歩く。山のふもとから少し離れた所に立つ草太は背負子も背負わず、仁王立ちをしていた。朱羅も藤助も背負子を背負っていない。引率役の善右衛門が全員分の背負子を持っているからだ。彼が来ないと行くことも出来なければ、他の仕事をすることも出来ない。もうとっくに昼は過ぎていた。早く行かないと朝日村に着く頃には夜になっているだろう。それを危惧しているのか藤助はそわそわと忙しない。それから少しして遠くから文吉と権之助が来る姿が見え、その後ろから背負子を持つ善右衛門の姿も見えた。彼らを見た草太は地団太を踏み、善右衛門を指差して怒鳴る。
「おっせーぞ! いつまで待たせるつもりだ、このくそジジィ!」
「誰がジジィだ。文句あるなら帰れ」
「おぅおぅ、帰ってやんよ!」
「ちょっと草太、落ち着いてよ」
帰ろうと善右衛門が来た方角とは逆の方に足を向けた草太を朱羅は止める。肩を怒らせた彼は気が収まらないのか善右衛門を睨みつけた。朱羅はどうにか草太の怒りを解こうと彼の肩を掴み揺さぶる。それに気を削がれた彼は舌打ちをし、乱暴に善右衛門から自分が運ぶ荷を積んだ背負子を奪い取った。朱羅はため息をつき、善右衛門から自分の背負子をもらい背負う。ぎこちない空気が一行に漂っていた。その空気を抜けるように善右衛門は子供たちを追い立てて山に入っていく。雨が完全に乾ききっていない山道はいつも以上に歩きにくい。気を抜けば足元に生える草に滑ってこけそうになる。そのおかげでなかなか進めない。
「なんで雨降った後に行くんすかぁ?」
「雨が降ろうと降るまいと今日行くことになっている。それでも文句があるか」
「……ないっす」
口を開けば文句があるかと言う善右衛門に藤助はため息をつく。それをニヤニヤしながら見ているのは文吉だ。他人が怒られるのは見ていて気持ちいい。そう言いたげな彼に藤助はがっくりとうなだれる。小鳥が鳴き、緑の匂いがいつもより濃厚な山の中でも文吉は変わらなかった。藤助をこずいたりからかったりして楽しんでいる。それに一緒になっているのが権之助だ。藤助はいくらからかわれても軽く言い返すが、時には彼らをからかって楽しんでいる。その様子を後ろから見ているのが朱羅と草太の役割のようなものだ。
「ねぇ、草太。俺、決めたんだ」
「何をだよ」
「皆に認めてもらえるまでどんなことがあっても、どんな目にあっても逃げない。あの目にもう負けたくないから」
「そっか。じゃあ、おめェが認められるまで応援してやる」
「ありがとう」
にこっと微笑む朱羅に草太は照れてそっぽを向いた。素直にお礼を言われたら急に恥ずかしくなる。素っ気ない反応をされて困る方がまだましかもしれない。ちらりと朱羅を見ると上機嫌で歩いている。その目にはやる気と決意が宿っていた。これで良かったのかはわからないが、朱羅が怯えて逃げなくなるのならそれで良い。いつまでも逃げるようなら一喝してやろうかと草太は思っていた。それをしなくても良くなったらしい朱羅に安堵する。草太は肩の力を抜き、前を向いて歩き出した。そのせいか、つるりと足が滑り後ろに倒れかかる。地面に倒れ込んでしまうのか、草太がそう思った瞬間、ぐんっと体が何かに引っ張られた。前を見ると朱羅が手を伸ばし、必死に木にしがみついている。草太の方が彼よりも重いおかげでずるずると木から離れそうになっていた。このままだと二人揃って地面に倒れこむだろう。草太が諦めて目を閉じると誰かが近づく音が聞こえ、彼の背中を支えて起こした。
「何やってんだよ、草太」
「悪かったな、滑っちまって」
「別に良いけどよ。それより混血児から手を離せよ」
「混血児って……たまには名前で呼んでやれよな」
「やだね」
ふんっと鼻を鳴らし、足早に歩いていく文吉に草太は首を傾げる。混血児よりも朱羅の方が呼びやすいだろうになぜ呼ぼうとしないのか。それがわからない。朱羅も文吉が苦手なのか、木に張り付いて彼のために道を開けている。善右衛門は草太が歩き出すとともに朝日村に向かって歩き出した。まだ山を越えられていない。急がないと日が暮れてしまう。ずんずんと歩きながら足元にも気をつける善右衛門に草太たちは必死について行った。置いていかれたら朝日村の人々に迷惑をかけることになる。そうなると怒られるのは自分たちだ。
夕日が山の向こうに沈んだ頃、善右衛門たちは朝日村にようやく着いた。出迎えに来ていた村長の末吉も顔をほころばせ、家の者に何事か言ってから彼らの元にやって来る。善右衛門たちの持ってきた布地や乾物、紙などの荷物が無事であることを確かめると家の中に運んでそれらを広げ始めた。
「今回は少し来るのが大変だったでしょう。飯や寝床も用意していますのでごゆるりと泊まっていってくだされ」
「それはありがたい。ガキども、世話になるぞ」
「へぇい」
「さぁさ、こちらへ」
子供たちが家の中に入って行くのを見届けてから善右衛門も彼らの後に続く。入ってすぐの所にある台所ではご飯の用意が着々と進んでいた。彼らが来ることを見越していたのだろう、器も客人の用の物が出されている。末吉は子供たちを急かせ、客間に案内した。大人が五人は寝られるその部屋は綺麗に片づけられ、さっぱりとした畳の匂いがする。その片隅に荷物が入っていない背負子を順番に並べていく。それが終わると善右衛門たちは囲炉裏に用意された席に着いた。だが、朱羅だけは座ることが出来ずにおろおろしている。不思議に思った草太が囲炉裏を見てみると、末吉の家族分に五人分の客用の座布団しかない。どうあがいても一人座ることが出来ないのだ。
「なぁ、末吉のおっさん。なんで座布団が一個足りねェんだよ」
「少し破れていて使うことが出来ないのがあってねぇ。ない分は自分でどうにかしてくだされ」
「はぁ? それが客に対する態度かよ」
「こちらとしても用意してやりたかったんですがねぇ」
苦笑する末吉に草太は不満げに唇を歪める。こうなったら譲った方がいいかもしれない。草太がすぐ後ろに立つ朱羅に声をかけようとしたら、彼はその場に座り込んでしまった。目が譲ってくれるなと言っている。仕方なく前を向いた草太は料理が盛られた器が順番に回ってきていることに気が付いた。ようやく飯にありつける。そう思った草太だが、またしても朱羅の分が足りない。まるで意図したかのように配られない食事にもう一度末吉を見る。そこでも彼は皿の数が足りないから仕方がないとしか言わない。不服に思った草太は悲しそうに俯く朱羅に器を差し出す。だが、彼は首を横に振って受け取ろうとはしなかった。
「いいから受け取れって」
「でも……。草太が食べなよ」
「おめェだって腹減ってんだろうが。食えって」
「でも……」
「あー、もういい! 勝手にしろ!」
ちらちらと末吉の方を見る朱羅に腹を立てた草太は料理をガツガツと平らげる。それを申し訳なさそうに見る朱羅の視線を感じたが無視した。どんどん鍋の中の料理が減っていく。半時もしないうちに空になった鍋を見た末吉は顔をほころばせた。そのまま片づけられる鍋を横目に再び客間に戻った草太たちを出迎えたのは綺麗に並べられた布団だ。また一つ足りない。そろそろ堪忍袋が切れそうな草太は末吉を睨みつける。彼は呑気に苦笑いを浮かべると、好きな布団で寝るように言ってから立ち去った。その言葉を合図に善右衛門たちはそれぞれ布団に潜り込む。
「あと二つっすねぇ。どうしましょ」
「そりゃあ、三人で寝るしかねェだろ。俺と藤助が左右にずれれば朱羅なら入るだろ。チビだし」
「それもそうっすね。じゃあ、お先に」
「おう、お休み」
部屋の真ん中あたりにある二つの布団のうち、客間の入り口に近い右側の布団に潜り込んだ藤助はそうそうに寝息を立て始める。草太も布団に潜り込むと朱羅も二人の間に入った。暗い部屋に寝息だけが響く。外から梟の声も聞こえるが、彼らには関係ない。
しばらく経って夜も更けてきた頃、客間の襖がすーっと静かに開く。手に持った灯りが部屋を照らしても起きる者は誰もいない。末吉は彼らを起こさないように慎重に歩きながら、並んだ布団のちょうど真ん中あたりで寝ている朱羅の前に行く。そっと屈んで布団を引きはがし、肩を叩いて起こすと彼は寝ぼけ眼で見つめてきた。
「今すぐ荷物を持って出ていけ」
「えっと……」
「早くしろ」
末吉の氷のような目に一気に覚醒した朱羅は体が震えた。どすの利いた低い声も相まって恐怖に支配されていく。朱羅は急いで自分の背負子を持って部屋を出ていった。玄関で草鞋を履こうとしているのに、手が震えてなかなか履けない。後ろから突き刺さる視線に焦る。ようやく草鞋が履けると朱羅は出来るだけそっと扉を開けて外に駈け出した。寂しそうな響きを持った梟の声が村に木霊する。
翌朝、ちゅんちゅんと鳴く小鳥の声で目を覚ました草太は、隣に朱羅がいないことに気が付いて飛び起きた。彼が寝ていた所を触ると冷たい。胸騒ぎがした草太は襖が壊れるくらいの勢いで開け、どたばたと音を立てて囲炉裏で寛いでいた末吉に詰め寄り胸倉を掴む。寝起きで髪が乱れていようと関係ない。末吉が何事かと目を丸くしている。
「朱羅がどこに行ったか知らねェか」
「あの紅髪のよそ者なら追い出した。あのガキがいなくなってせいせいするわ」
「てめェ、自分が何をしたのか分かってんのか!?」
「ガキには関係ないことだろう」
澄ました顔でそう言ってのけた末吉に草太は歯ぎしりする。そのまま乱暴に彼を離すと草鞋をひっかけて外に出た。まだこの近くにいるかもしれない。末吉の家のすぐ近くには森がある。この森と木の間村に通じる山は繋がっていた。朱羅が行くとしたらそこしかない。草太は森の手前まで駆け寄ると、どこかに彼がいないか目を凝らした。何本か木を通り過ぎた時、見慣れた背負子が目に入る。それが隠れている木の所まで行き、そっと覗き込むと朱羅が背負子を抱えてうずくまっていた。
「何してんだよ」
「そ、草太! こ、これはその……」
「末吉のおっさんから聞いたぜ。なに逃げてんだよ、昨日逃げねェって言ったばっかじゃねェか」
「ごめん」
俯いて背負子をぎゅっと抱きしめる朱羅に溜め息を吐いた草太は、彼の頬に涙が流れた痕を見つけ眉を曇らせた。朝露に髪も湿っている。一晩中ここにいたのだろうか。後ろから草太を呼ぶ声がする。彼は俯いたままの朱羅を放っておくわけにもいかず、どうしたらいいのか頭を抱えた。無意識なのか草太の服の裾を掴んでいる手を引きはがすのも悪い気がする。草太が迷っているうちに声が近づいてきた。それと同時に朱羅も手を離し、彼を見上げた瞳に安堵の色を浮かべている。
「俺のことはいいから行ってきなよ」
「けどよ、おめェをここに置いて行ったら飯を食い損ねるぞ」
「大丈夫だよ。ほら、行ってきて」
「……わかった。俺たちが出発したらついて来いよ」
朱羅が頷くのを確認した草太は末吉の家に戻っていく。玄関口には機嫌の悪そうな善右衛門が仁王立ちしていたが、それを無視して藤助たちが集う囲炉裏に向かった。末吉はまるで何事もなかったかのように草太たちに接している。朱羅は少し前に出かけたことにしているらしい。草太は彼の態度に怒りを覚えながら朝食をかきこんだ。たとえ一刻でもここにはいたくない。
朝の爽やかな風が草木の葉を揺らし、涼しげな音が朝日村を包み込んでいる。末吉の家の前では草太たちが並び、善右衛門が泊めてくれたお礼を言っていた。それを聞いていない草太たちは善右衛門が出発するのと同時に歩き出す。山に入った頃、朱羅は草太たちに追いついた。黙々と歩く彼らに優しい木漏れ日が落ちる。昼過ぎには木の間村に着き、背負子を善右衛門に預けて草太たちはそれぞれの家に帰っていった。
夕暮れになり、村人たちが木間神社に続々と集まっていく。村人たちはそこで神主に祈祷をしてもらい、松明の火を焚いて幟を持って水田に向かった。その後ろに笛を吹き、鉦や太鼓を鳴らすお囃子が続く。さらにその後ろから松明を持った村人たちが続き、水田に火を振りかざしながら進んでいく。パチパチと竹が爆ぜ、火の粉がわずかに空に舞った。
独特の節回しで祭りの文句を唱える村人たちが練り歩く様子に朱羅は瞳を輝かせた。チンチンと鳴る鉦の音色は風鈴のように思える。松明の灯りが稲穂に近づいたり、遠ざかったりする光景は綺麗だった。
「ねぇ、楓。虫送りって綺麗だね」
「そうね。これで害虫を追い出せるんだもの。感謝しなくっちゃ」
「それにしても、あの松明大きいね」
「あれで追い出すんだから当然でしょ」
呆れたように目を細めた楓に朱羅は苦笑いする。言い返す言葉が見つからない。縁側に座る二人は田んぼを巡る行列が掲げる松明を見つめていた。松明を掲げながら山手から順番に廻っていくのは疲れるだろう。遠目にはそうは見えないが、朱羅にはそう思えて仕方がなかった。上下に揺れる松明はさながら龍のように見える。それが虫を惹きつけ、松明についていくのだろうか。どんどん川の方に向かっていく松明と共にお囃子の音が小さくなっていく。もうすぐ祭りが終わるという寂しさはあるが、こうして遠くから眺めるだけでも朱羅は満足だった。
「行列を追いかけてみない?」
「追いかける……?」
「遠くから見てるだけじゃつまらないじゃない。行きましょ」
唐突に言われて朱羅の思考は止まる。楓が何を言っているのか、理解しきれないうちに縁側に立たされていた。楽しそうに微笑む彼女に手を引かれて草鞋を履き、薄暗い外に出る。ここから行列まではわりと離れているのに楓はどうするつもりなのか。怪訝そうに朱羅が彼女を見つめていると、彼女は走り出す。着物の裾をはだけさせ、田んぼを縦横無尽に駆け抜けていく。どんどん近づいていく行列に朱羅の心も踊りだした。まだ、追いついていないのにどうして楽しくなるのだろう。軽快に進む足は少しずつ行列との間を埋めていき、行列が川に差しかかる頃には目と鼻の先まで追いついた。
「お前ら、いつの間に来たんだよ」
「ついさっきよ、兄様。虫送りの最後くらい近くで見てもいいはずよ」
「そりゃそうだが。お前も物好きだな」
「どこがよ」
ムッと頬を膨らませ、不満を露わにする楓に一太は苦笑いとも微笑みともつかない顔をする。祭りに参加していた一太は松明で彼らを照らした。耳に心地よいせせらぎに癒されていた朱羅は、川岸にあるものに目を奪われる。それは何かを乗せるのか船の形をしていた。一体何を乗せるのだろう。首を傾げてそれを見つめる朱羅の目の前で幟や松明が船に乗せられた。それを何人かの村人が押し、船は川に流されていく。燃えながら沈んでいく船はどこか寂しさも感じさせた。これが終われば稲も実を育てるのみ。今年は豊作になるだろうか。
「今年も無事に虫を送れたわね。しんみりと考え込んでいるよりもパァーっとした方が良いわよ」
「なんで分かったの!?」
「分かるわよ。どこか寂しそうだったもん」
「そんなに……」
頬を両手で包み込んで上下に動かす朱羅に楓はくすくす笑う。懸命に寂しそうな顔を消そうとする姿が心をくすぐった。それに気づいたのか頬を赤らめた朱羅に楓は吹き出しそうになる。必死に笑いを堪えていると、一太に背中をとんっと叩かれた。振り向くと何事もなかったように口笛を吹いている。これが朱羅にとって助け船になったのか、胸に手を当ててホッと一息ついていた。そこで一太たちは周りが静かであることに気付く。いつの間にか村人たちは木間神社に向かっていたらしく、周りには彼らしかいない。遠くから彼らの話声も聞こえてくる。まだ一太たちが来ていないことに気が付いていないらしい。
「急ぐぞ!」
「兄様、ちょっと待ってよ」
「待てるかっての」
背中に冷や汗を流した一太は土手を一気に駆けあがる。楓と朱羅もそれに続いた。暗い夜道、それも土手を駆けあがるとなれば楓にはきついはず。そう思った朱羅は彼女の手をそっと握った。これなら自分がこけない限り、楓もこけない。幸いにも空には満月が煌々と照っている。おかげで足元に生える草も朧げに見えていた。それを頼りに土手を上がったからか、誰もこけることなく畦道を駆けることが出来た。
ぞろぞろと歩いて行く行列の背中に一太が声をかける。最後尾にいた男が振り返り、少し息が切れた彼を見て納得した様子の男はにかっと笑った。あっという間に肩に腕をまわされ、絡まれた一太に朱羅はぽかんと間抜けな顔をする。それに気づいた男は一太を離すと朱羅を捕まえ、ぐりぐりと彼のこめかみを小突いた。男の手から逃れようとばたつく朱羅の姿にふてくされた楓は行列を追い抜くようにすたすたと歩いて行く。彼女の様子に気付いた朱羅はなんとか男の手から逃れ、行列から離れていく楓を追いかけだした。楓は後ろから聞こえる朱羅の声に焦りの色を感じつつも、それがどこか心地よかった。先ほどまで感じていた怒りはとうに消えている。
「あんたが取っ捕まるからでしょ」
ようやく追いついた朱羅にそう言ってやれば、彼は途端に申し訳なさそうにする。そんな彼の額を指で弾いて星が煌く夜空を見上げた。困惑する朱羅を尻目に楓は口元に笑みを浮かべた。星が変わらないように、きっと自分たちも変わらない。そんな気がした。