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間話 あれからのラム達

「……烈火玉」


 ボンッ


「ブヒーー!」


 ジュリさんの魔技がオークに直撃して、オークが美味しそうな匂いを出しながら燃えていますです。


 あたしの名前はラムといいますです。この前にランクがEになりましたが、まだまだ半人前以下で淳さん達に頼ってばかりのチームのお荷物です。


 …早く皆さんの役に立ちたいです…。そしたら天さんが帰って来た時に、あの時みたいに頭を撫でて貰うです…。


 最近はこうして自分のやる気を上げるのが、あたしの習慣になりましたです。いつかまた天さんに会った時にって。


「オークばかりでつまらないのだよ…」


「面白いつまらないで仕事をするなよジュリ…」


「…そうですよジュリさん…」


 皆さんはどこかさみしいそうにしてますです。


 …天さんがいなくなってから一週間以上経ちましたけど、やっぱり皆さんもさみしいんです…。


 あたしも天さんがいなくなってから最初の2、3日はよくトイレで泣いてましたです。


 …でもそれじゃ駄目なんです。あの時あたしは天さんと約束したんです。もっとしっかりするって…。


「あ、あたし、オークをドバイザーに入れちゃいますです!」


 あたしはそう言いながら丸焼きになって倒れてるオークに駆け寄りました。


「……ラムは何時も楽な役回りで羨ましいのだよ」

 

「す、すみませんです…」


 …ジュリさんの言うとおりです。あたしは今回も少し離れて見てるだけでした…。


 あたしがジュリさんの言葉で少し落ち込んだら、淳さんと弥生さんがジュリさんに怒りましたです。


「ジュリ!!」


「ジュリさん…チームメイトに対してそういう事を言うのは余り感心しませんわ」


「本当の事なのだよ…。弥生だって今日も何もしてない…」


 ジュリさんが弥生さんにも文句を言うと、淳さんがさっきよりも激しく怒りましたです。


「そのセリフは聞き捨てならないぞ!!弥生の出番がないって事は俺達が無傷な証だろうが!!」


「…兄様いいんです。私も毎回、見てるだけなのは本当の事ですから…」


「……ラム、早くオークをドバイザーに入れて欲しいのだよ…」


「は、はいです!」


 最近は何時もこんな感じです。天さんがいなくなってからジュリさんはずっとピリピリして弥生さんはどこか悲しいそうで、淳さんは前より少し怒りっぽくなりましたです。


「…ジュリ、一人でなんでも出来ると思ってるとその内に痛い目にあうからな」


「…とっとと冒険士協会に行って仕事の達成報告とオークの魔石製造をするのだよ…」


 ジュリさんは淳さんの言葉を無視して冒険士協会に向かって歩いて行ってしまいましたです。


「…兄様、ラムちゃん、私達も行きましょう」


 弥生さんは淳さんとあたしにどこか悲しそうに微笑んでそう言いましたです。


「弥生、ラム、ジュリの言う事は気にしなくていい。あいつは不機嫌だと昔から回りに当たるからな…」


「…はい。昔からそうですね」


「あ、あたしお腹空いちゃいましたです!ファミレスに行きたいです!」


 …本当は最近、余り食欲がないんですがこういうと二人が少し笑ってくれるんです…。


「…はは、相変わらずだなラムは」


「育ち盛りなんですよ兄様。そうだ、ラムちゃんのEランク祝いも兼ねてファミレスでわなく、少し奮発して本部の9Fにあるステーキハウスにしませんか?」


「それはいいな弥生。じゃあステーキハウスに…」


「ファ、ファミレスで十分です!あたしあそこが、お、お気に入りなんです!」


 あたしは慌ててお二人にお返事しました。


「そうですか?ラムちゃんがそれでいいならファミレスでいいのですけど…」


「ラム遠慮しなくていいんだぞ?」


「本当にあたしはファミレスが一番なんです!」


 …何もやってないのにステーキなんて食べれないです…。それにあのファミレスにはあたしの特等席があるんです。そこに座ると天さんがそばにいるみたいで落ち着くんです…。


「…ならいいが」


「お〜い、何をもたもたしてるのだよ」


 少し先に歩いていたジュリさんが立ち止まっていたあたし達に声をかけてきましたです。


「ワガママ娘が呼んでるし早く行くか…」


「そうですわね兄様」


「ファ、ファミレスにレッツゴーです!」


 あたしは元気な振りをしてファミレスに向かいました。でもそのおかげで淳さんと弥生さんの顔が少し明るくなってくれたので良かったです。


 そして冒険士協会についたあたし達は淳さんと弥生さんの提案で、先にあたしのEランク昇進祝いをやるためにファミレスに向かいましたです。


 …あっ!今日もあの席が空いてましたです!…。


 あたしはファミレスに入ってすぐに、何時もあたしが座る特等席、天さんが何時も座っていた席を取りに行きましたです。


「…毎回ラムはそこに座るのだよ」


「こ、ここ、何か落ち着くんです…」


 …ま、まずいです…。天さんを意識してると思われたかもです…。


 天さんが出ていった時から、皆さんは天さんの事には触れない様にしてるんです。あたしもそれはなんとなく分かるので口に出さない様にしています。


「……俺達も席に着こう…」


「…はい、とりあえず何か注文いたしましょう」


 なんだか少し空気が重くなりましたが、あたしは気づいてないふりをしましたです。


「では、ラムのEランク昇進祝いと大分、経ってしまったが俺達のDランク昇進を祝って、かんぱ〜い!」


 淳さんが明るく振る舞いながら乾杯の音頭を取りましたです。実は皆さんもハイオークを倒した実績とレベルがアップしたおかげで、天さんと別れた後すぐにDランクになりましたです。


「か、かん〜ぱいです!!」


「かんぱいですわ。ラムちゃんおめでとうございます。兄様、ジュリさんお疲れ様です」


「…今さらなのだよ…」


「ジュ、ジュリさんもかんぱ〜いです!」


 …あの時はあたしも含めて皆さんがお葬式みたな雰囲気だったのでお祝いとかそんな事は考えられなかったです…。


「別にいいだろ。こういう場を作る事はチームワークを良くすることに繋がるんだ」


「はい、そうですわね」


「はいです!天さんともファミレスにくるたびに仲良くなりましたです…あっ」


 …あわわわ、しまったです…。


 あたしが口を滑らして天さんの名前を出した途端、弥生さんとジュリさんの顔が暗くなって、淳さんが凄く怖い顔になりましたです。


 バン!


 淳さんがテーブルを叩いて怒りましたです。


「ラム!あいつの名前は口に出すな!!」


「…ごめんなさいです」


「兄様…お店のご迷惑になりますわ…。ラムちゃん、気にしなくて大丈夫ですよ…」


 淳さんに怒られて泣きそうなあたしを隣に座ってた弥生さんが抱き寄せて頭を撫でてくれましたです。


 …弥生さんはいつも優しいです。そういえば天さんもいつもあたしを庇ってくれました…。


「…さっき僕にあんな事、言っといて…淳もラムに対してきついのだよ。人のことを言えないのだよ」


「それとこれとは話が別だ!」


「一緒なのだよ。それに丁度いいから皆、あいつについて自分が思っている事を吐き出すのもいいんじゃないか?そろそろ頃合いなのだよ…」


 ジュリさんのその提案を聞いて、また淳さんが怖い顔をしました。


「あんな奴の話しなんかする必要はない!あんな卑怯者の話しなんか!!」


「……落ち着いて考えれば、天さんがあの様な事をするはずがないですからね…」


「…その通りなのだよ。あいつはこのチームを抜ける為にあんな猿芝居をしたのだよ…」


 …やっぱり皆さんも気づいていたです…。


「……天さんは自分でモンスターを倒したいって言ってましたです…」


 あたしはいつの間にかあの夜に天さんと別れた時の事を思い出して、目から涙が出そうになっていましたです。


「だったら素直にそう言えばいいじゃないかよ!なんであんな真似する必要があるんだよ!」


 そう怒鳴った淳さんを見てみたら、淳さんは怒ってるというよりは凄く悔しそうな顔をしてたです。


「…でも、確か天さんは最初に兄様から盾役を頼まれた時に…」


「思いっきり嫌がってたのだよ…。それを無理矢理、淳が天にやらせたのだよ…」


「ぐっ!それを言ったらジュリだって魔力がない天に攻撃役は厳しいと言ってただろ!」


「……今さらその事をいくら言っても、もう後の祭りなのだよ」


「お前のその言い方も卑怯だぞジュリ…。だいいち話したくもない話しを最初に振ったのはお前だろ?」


「あ、あ、あの皆さん!」


 あたしはずっと思っていた事を勇気を出して言いましたです。


「天さんを探しに行きませんか?あ、あたし天さんとまた一緒に…」


「駄目だ!例えアレがチームを抜ける為の芝居だったとしても、そんな事は関係ない。弥生を傷つけたあいつを俺は許すわけにはいかん!」


 淳さんはあたしの説得を最後まで聞かないですぐに却下しましたです。


 …弥生さんは淳さんの大切な家族だから仕方ないですよね。あたしもお母さんがあんな事されたら今みたいな気持ちで天さんを想えるか分からないです…。


「…兄様…」


「僕はラムに賛成なのだよ。連れ戻すかは別として、天を何発か殴らないと気が済まないのだよ」


 …あれ?なんかジュリさんがさっきより明るくなってるです。気のせいかもですが、声も生き生きしてる様な…。


「駄目だと言ったら駄目だ!!」


「淳は頭が固いのだよ。それに弥生の事なら大丈夫なのだよ。さっきも言ったけど天が弥生を本気で襲うわけ無いのだよ。襲うとしたら普通に考えて僕の方なのだよ、だって天と仲が良かったのはどう考えても僕の方だし」


「…ジュリさん、今はそんな話しをしているのではないと思いますわ」


 ジュリさんの話しを聞いて、何故か弥生さんが機嫌を悪そうに言い返しましたです。


「この際はっきり言わせて貰うのだよ弥生。あんな事で泣き叫ぶなんて大袈裟なのだよ」


 バン!!


 また淳さんがテーブルを叩きました。さっきあたしに怒っていた時よりずっと怒ってるみたいです。


「ふざけるな!!なんで被害者の弥生が文句を言われなくてはいけないんだよ!!」


「………」


 今度は弥生さんも淳さんになにも言わないです。ただ目をつぶって辛い顔をしています。


「安心して大丈夫なのだよ。もし天が戻ってきたら、夜の世話の方は僕が体を張って担当するのだよ」


「ジュリさん、下品ですわ。ラムちゃんもいるんですよ?」


 そう言って目を開けた弥生さんは珍しくジュリさんの事を睨んでいますです。


 …あわわわ、あたしがあんな事を言ったせいで皆さんの雰囲気が悪くなってしまったです〜…。


「ジュリ…それ以上、言ったら…」


 淳さんがジュリさんの態度を見て、我慢できなくなって何か言おうとしたその時でしたです。


 ウォーーーーーン!!


『緊急警報、緊急警報、アラマ街道付近でリザードキングが確認されました。Cランク以上の冒険士は直ちに現地に向かって下さい。その他の冒険士は住民の避難誘導や先導、協会職員のサポートに回って下さい。繰り返します……』


「「「「!!」」」」


 冒険士協会本部とこの地域全域に緊急警報が鳴り響きましたです。あたしも生まれてから一度しか聞いた事がないです。B()ランク以上のモンスターが出た時にしか鳴らないこのサイレンの音を。



ちなみに余談なのですが鉱山町でマウントバイパーが出た時はこの警報は鳴っていません。理由は主人公が来た時にはまだハッキリとBランクモンスターが出たとは国にも冒険士協会にも教会にも確認されていなかったからです。そしてあの時は町長も目撃した鉱夫の言葉しか聞いてなかったのでマウントバイパー亜種をBランクと決めつけて冒険士協会にはBランクモンスターが出たと伝えてBランクモンスター討伐依頼を頼みましたがマウントバイパー亜種はAランクモンスター相当なのでAランクモンスター討伐依頼が正しいです。一応、補足として書かせて頂きました。

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