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第25話 俺は殲滅担当

「じゃあ、まずはこれからの事を色々と決めたい」


 これからの方針を決めようという俺の提案に、カイト達は一斉に頷く。


「それにリナさんには早速、頼みたい事があるから一旦、俺が購入した支部の建設予定地(さいくつげんば)に行かないか?」


「あ、あたしに何か頼みたい事があるのですか?」


 リナが自分自身を指差しながら少し困った表情を浮かべる。


「メカニック担当の初仕事だよ。あそこにある採掘機器がまだ使えるかどうか見て貰いたい」


「!」


 俺がそう答えると、途端にリナの目つきが変わった。


「あの採掘機器は新品同然だが、もしかしたらマウントバイパーに何処か壊されている可能性もあるからな?ちゃんとに使えるかどうか見て貰えんか?」


「お安い御用なのです!!」


 リナは俺の頼みを聞き、生き生きした表情を浮かべながら自分の胸をグーで叩いて力強く返事をした。


「リナさんは頼もしいな。よし、じゃあ行くか」


 俺が採掘現場に向かおうと先頭で歩き出したら、横からアクリアが話し掛けてきた。


「あ、あの花村さん…。私が何かお力になれる様な事はありませんか?」


 アクリアはどこか焦っているような様子で俺に質問してくる。アクリアのそんな姿を見て、近くにいたリナとシロナがニヤニヤしている。


 …何かまた変な空気に…。


「そ、そうだな…では、一般的な建築費の基準など聞きたいんだが…」


 …支部の建物を建てるなら、やはりこの世界の建築物の価格基準を知っておきたいからな…。


「お安い御用でございます…」


 アクリアは俺にそう言いながら、上目遣いでどこか切なそうに何かを求めている。


 …だから何なのこの変な空気は?しかもアクリアさんの表情の威力が半端ないんだが…。


 俺は堪らずアクリアから視線をそらして彼女が俺に求めているであろう言葉を必死で考えて…


「アクリアさんも頼もしい限りだな…」


 出た答えはこれが精一杯だった。


 だがその答えは正しいかったようで、アクリアの表情は途端に明るくなった。


「は、はい光栄です!!」


 …どうやら正解のようだ…。


「あ、あのつかぬ事をお伺いしたいのですが…」


 …質問していたのはたしか俺の方だった筈だが…。


 俺はそんな疑問を持ちながらも、アクリアの気がそれですむならと思い。歩きながら返事をする。


「俺に答えられる事ならなんでも聞いてくれ」


「で、では……花村さんはご結婚されていますか?こ、恋人などはおられますか?」


 アクリアが意を決した感じで俺に質問して来た。


 …なんでそんな祈るような目で俺を見てんだよ…。


 周りにいる女性陣もアクリアが俺に質問した事が気になる様で聞き耳を立てている。


 …女性は本当にこういう話しが好きだな。まあいいか…。


「…はぁ…いないよ。更に付け加えるなら生まれてから32年間できた事すらない…」


 俺がため息交じりでそう答えると、アクリアは何故か安心した様に自分の胸に手を当てて深く息を吐いている。


「そ、そうですか…」


「まあ俺は今、天涯孤独だからな?恋人はおろか親兄弟すら一人もいない」


 俺が何気なくその言葉を発した次の瞬間、この場の空気が凍りついた。


「す、す、すみません花村さん!」


 アクリアは、かなり狼狽した様子で俺に謝っている。


 …失敗した。あんな事を言ったら皆、気にするに決まってるよな…。


「いや、全然気にしないでくれアクリアさん。もう慣れたから」


「っ!…ほ、本当に申し訳ありません……」


 俺がアクリアの気を紛らそうと必死になって思いついた台詞を言った途端、彼女(アクリア)の顔は青ざめ、俺への申し訳なさで泣きそうになっている。


 …ま、不味い。傷口に塩を塗ってしまった!…。


「アクリアさんが人の地雷、踏むなんて珍しいし…」


「アレはしょうがないのです…。まさか恋愛話しの中に、あんなに強力な地雷が埋まってるなんて思わないのです…」


 シロナとリナは我関せずと、離れてヒソヒソと話しをしている。


 下を向いたまま顔を上げないアクリアを尻目に、俺はカイトに視線を送って助けを求めた。俺の視線を受けて少し慌てながら、カイトはアクリアへのフォローの言葉を発する。


「そ、そうだアクリア!さっき兄さんがお前に建築費の事を質問してたよな?」


 アクリアはカイトの、その言葉に反応しておずおずと顔を上げた。


 …流石カイトだ!いいトス上げやがる!…。


「アクリアさん。俺の育った所はこの町より更に山奥の様な場所でな?実は機械どこか世間全般の常識に疎いんだ」


 俺はアクリアの目を見て真剣に話す。そして、何故か俺に話しかけられているアクリアは顔を赤らめている。


 …さっきよりはマシだがなんかやり辛いな…。


「納得したのです。だからAランクの魔石換金とか訳の分からない事をやったのですね」


「本当だし!アレは普通ならあり得ないし!」


 …お前らは、助け舟も出さずにこんな時だけ俺の言葉に反応するな!…。


 俺はそんな事を思いながらも、更にアクリアのフォローをする。


「幸いこのチームにはアクリアさんを始め、カイトやリナさんといった常識的な事に詳しそうな人物が多い。どうか無知な俺に力を貸してくれないか?」


「わ、わ、私でお役に立てるなら喜んで!なんでもお尋ね下さいませ!」


 アクリアは顔を真っ赤にして何度も頷いてからそう答えた。


 …どうやら軌道修正出来たみたいだが、やっぱりなんかやりにくいな…。


「天の兄貴!なんで僕の名前だけないんすか!」


「「「当たり前だ(と思うぞ)(なのです)」」」


 俺に対するシロナの訴えをこの場にいたアクリア以外の全員が口を揃えて一蹴する。


「み、皆、酷いし!!」


「で、では一般的な住宅やホテルなどの建築物を建てる時にかかる費用の基準等をお話しいたします」


 そんなシロナを完全に無視して、アクリアは深呼吸をしてから落ち着いて俺に話し始めた。


 …ある意味、彼女が一番、狐娘への対応が酷いかもな…。


 アクリアの話しによると、この世界では俺がいた世界よりも建築物の価格がかなり安い事が分かった。


 住宅は2階だての一軒家で一般人が住むような5LDKでも、建てるだけなら500〜800万円で済み、俺が最初に行った村のビジネスホテルぐらいの建物でも3000万はかからないとか。


 …だからおっさんは支部設立資金が5000万もあれば後は自分が出すとか言ったのか…。


 では土地が高いのかといえば、それも違うようで(ふもと)の町の一等地でも一坪10〜15万で済むらしく、俺があの鉱山を一億円で購入した事は普通なら考えられないらしい。


 …この世界では土地がかなり余っているから当然と言えば当然だな?それにしても今の話しを聞くと、動力車って相当に高いんだな…。


 そう、この世界で一番高い物とは良くも悪くも魔石動力の機器、機械の様だ。建物自体を建てる事には資金は余りかからないらしいが、これに家電製品ならぬ家魔製品を揃えるとなれば話しは別の様で、良い物を揃えようとするとかなりの失費を余儀無くされると言われた。


 一般的な新築を建てる時でも、かかる費用は家500〜700万、土地150〜200万、家の水回りや後付け家魔製品で800〜1000万ぐらいとダントツで魔石動力の機器は高い。しかもこれに新しい家具や追加の家魔製品を買うとなれば合計で2000万を軽く超えるらしく、俺のいた世界と結局は余り変わらない費用がかかる様だ。


 …仕方がない事だがな。燃料となる魔石自体が言ってみれば高級品だ。だからこそ魔石を動力にしている機器、機械が高価なのは道理だ…。


 そんな話しを採掘現場に向かう道すがらアクリアに聞いていたら、いつの間にか目的地の採掘現場に着いていた。


「到着だな。アクリアさん、大体の基準は理解出来た。ありがとう」


「い、いえ!お役に立てて幸いでごさいます!」


 …かしこまり過ぎでしょ…。


「リナさん、まだそれ使えるか?」


 採掘現場に到着してすぐに、リナは俺が頼んだ採掘機器の点検に取り掛かっていた。 彼女は目の色を変えて採掘機器の点検をしている。


 …気づいたら既に採掘機器の運転席にいた。やはり彼女(リナ)は相当のメカマニアだな…。


 しばらく返事のないままリナは無言で色々と採掘機器を弄っていた。 たまに採掘機器が機動しているのを見るかぎり、恐らくはどこも故障していないと思われる。


「…うん、うんうん…これもよしなのです…」


「ちょっとリナ、使えるの?」


 シロナが痺れを切らしてリナに話しかける。


「……うん、これも大丈夫そうなのです…」


 リナは相当集中しているのか、点検作業以外の事が目に入っていない。


 …良い意味で集中している。自分が取り組んでいる事に対して高い集中力を発揮するのは一流の条件の一つだからな…。


「ちょっとリナ聞いて…むぐ」


 俺は集中しているリナの邪魔をさせない様にシロナの口を塞ぐ。


「少し静かにしろ狐娘、リナさんは今、自分の役目に集中してるんだ」


 近くにいたカイトとアクリアも俺に口を塞がれているシロナに目線を合わせて無言で頷く。シロナも理解した様で俺に口を塞がれながら二回ほど頷いてからリナを黙って見守っている。


 それから数分してリナが採掘機器の点検を終わらせてこちらに戻って来た。点検の結果は…


「どこも異常ないのです」


 やはり新品同然のままだった。


「リナさん、ご苦労様だ。では気になる事も解決したのでこれから支部立ち上げ会議を始めたいと思う」


 俺はカイト達の顔を見渡しながらそう告げる。皆も一つ頷いて真剣な表情になった。


「すまない、誰か紙とペンをくれないか?」


「かしこまりました」


 俺が紙とペンを要求するとアクリアが即座に渡して来た。俺は余りの手際の良さに少したじろぎながら紙とペンを受け取る。


「あ、ありがとう。じゃあ俺が考えた皆の支部での役割分担を今から書くから、それを見て何か言いたい事があったら言ってくれ」


 俺はそう言いながら自分が考えたカイト達の支部での役割分担を紙に書いて皆に見せた。


 鉱山町新支部の人事


・支部長 カイト(表の仕切り 一般事務担当)

・副支部長 アクリア(総務や経理全般担当)

・メカニック リナ(機械全般の整備 管理担当)

・皆のサポート役 狐娘((きつね)担当)

・スカウトマン 俺(職員スカウト 殲滅(せんめつ)担当)

 以上。


「「「「…………」」」」


 カイト達は、俺が見せた支部の役割分担の書いてある紙を見て呆気に取られている。


「ちょ、ちょっと待つし!!僕の役割の(きつね)担当ってなんすか!」


 シロナが叫びながら俺に抗議した。


「そのまんまだよ」


「そのまんま過ぎだし!!こんなの担当でも何でも無いし!!」


 俺の返答を聞いて、更にシロナは叫び声を上げる。


「うるさいのですシロナ。そんな事よりカイトさんが支部長って…」


「俺もそこが気になった…。支部長は兄さんじゃないのか?」


 リナが俺の決めた人事で一番不自然であろう点を指摘し、カイトもそれに同意して俺に疑問を投げかけて来た。


「ちょっ!僕には大切な事だし!」


 …さっきから、だんだんとリナさんも狐娘の扱いが酷くなってきたな。まあ今はカイト達の疑問に答えるか…。


 俺は抗議を続けるシロナを無視して、カイトとリナの疑問に答える。


「簡単な事だ。俺は各地を回ってスカウト活動をするからな。拠点の支部に殆どいない俺が支部長をやるわけにはいかんだろ?それに表の支部長だと目立つと思うしな。どの道、俺に支部長は無理だ」


「し、しかしだな兄さん…」


「カイト、光栄ではありませんか。是非受けましょう。私も精一杯サポートいたします」


 俺の考えた人事を受けるか悩むカイトをアクリアが力強く説得する。どうやら彼女(アクリア)自身は俺の考えた人事に納得している様だ。


「わ、分かった…。ちゃんとした支部でも無いし、やることも実際余りないだろうしな?俺なんかで良かったら慎んで受けさせて貰うよ」


「感謝するカイト」


 俺はカイトに軽く頭を下げて礼をする。


 …間違いなくこの役回りはカイトが一番適役だ。引き受けてくれて本当に助かった…。


「僕を無視して話しを進めないで欲しいし!それに天の兄貴のスカウトは分かるけど殲滅(せんめつ)担当ってなんすか!」


「あたしも気になったのです。なんなのですかこの物騒な役回りは?」


 シロナとリナが怪訝そうに尋ねてくる。


「それこそ読んで字のごとくだ」


「…兄さんが言いたい事はなんとなく分かるが、それにしたって別の言い方があると思うぞ俺は…」


 …わかりやすくていいと思うが。…ん?…。


 皆から俺の役回りについて尋ねられている中、俺は今いる採掘現場の隣の空間から二つの気配がこちらに近づいてくるのを感じた。


「皆、どうやらお客さんみたいだ…」


「「「「え?」」」」


 カイト達は俺の言った言葉の意味が理解できず、奇妙そうに俺を見ている。


「花村さん、どなたかいらっしゃったのですか?」


 アクリアが俺に話しかけたその時…


 ザッ!ザザッ!


「「グガルルル…」」


「「「「!!」」」」


 朝の事件でこの採掘現場にマウントバイパーが開けてしまった穴からハイリザードマンが2体同時に現れた。


 この採掘現場は大昔に使われていた旧採掘現場の近くにあり、旧採掘現場は恐らくマウントバイパーの巣と思われる。今回の事件でそのモンスターの巣と鉱山町の採掘現場が繋がってしまった為、巣の中にいた他のモンスターが今みたいに外に出て来てしまうのはある意味、当たり前の事である。


 ちなみにマウントバイパーが開けてしまった穴は幅、高さ共に3m弱はありハイリザードマンぐらいなら少しかがめば余裕で出入り出来てしまうほどの大きさなのである。


「ハイリザードマンなのです!」


「しかも2体同時とか普通あり得ないし!!」


 リナとシロナは驚きながらもハイリザードマン2体に対して全く物怖じしておらず。ハイリザードマンを見る眼光は鋭く、ドバイザーから即座に自分の武器を取り出して臨戦態勢に入っている。


 …二人とも流石はCランク冒険士だな…。


「皆!!」


 カイトがその場で叫ぶと同時にシロナはドバイザーから出した棍を構えてカイトの横に付き、カイトも既に取り出してある自分の武器の剣を構えている。


 アクリアはハイリザードマンが視界に入った瞬間に、恐らくは高レベルであろう攻撃型魔技の生成を始めており、そのすぐ斜め前にリナが弓を引いてハイリザードマンに標準を合わせている。


 この時点でカイト達の普段の戦闘陣形であろうホーメーションは完成しており前衛にカイトとシロナが少し間を開けて立っており、その2メートルほど後ろにリナが弓を構えて、更にそのすぐ斜め後ろでアクリアが魔技を生成している。


 前衛の二人が少し間を開けているのはリナとアクリアの視界を妨げない為と援護攻撃を妨害しない為であろう。そして驚くべきはここまでの陣形と臨戦態勢に入るまでの早さである。


 ハイリザードマンが現れてからカイト達がこのホーメーションになるまで恐らくは10秒もかかっていない。流石は準上級者の冒険士チームである。


 …しかも全員がハイリザードマンから全く視線を外していない。やはりカイト達は色んな意味でかなりできる…。


 俺は感心しながら40mほど離れているハイリザードマンの方に向かって歩きながら皆に告げた。


「皆、手を出さんでくれ。こいつらは俺がやる」


「「「「!!」」」」


 カイト達はその場でホーメーションを崩さずに俺の発言に驚いた表情を浮かべている。


「に、兄さん本気か!」


「勿論本気だ」


 俺は歩行を止めずにハイリザードマンに近づきながらカイトに返答する。


「なんだかんだで俺の戦闘を皆に見せてないからな?いくらあの白蛇を倒したと言っても実際に力を見せんと完璧には信用して貰えんだろうし」


「…天兄さんに対して失礼だと思いますが、確かにその通りなのです」


 リナが俺の言葉を肯定する。


「で、ですが相手はCランクモンスターが2体同時です!それを一人で相手にするなど…」


 アクリアが俺の事を本気で心配している。思えば彼女は俺がマウントバイパーを運んだ現場すら見ていないから余計に信じられない所があるのかもしれない。


 …あ、そうだ…。


 俺はある事が気がかりになり、カイト達から更に10メートルほど前に進んだ位置で立ち止まり、自分の服の裾を両手で掴む。


 …あいつ等のヨダレや返り血で花坊から貰った俺の家宝(ふく)を汚すわけにはいかんからな…。


 ガバッ。


 俺はそう思ってその場で服を脱ぎ上半身だけ裸になる。


 ブハ!


 そしてその瞬間、後ろで魔技の生成をしていたアクリアが鼻血を出して仰け反った。


「だ、大丈夫かアクリア!」


「……やっぱりゅ、素敵(ひゅてき)過ぎまひゅ…。ハァ…全く…ハァハァ…問題…ハァ…ないわカイト」


 鼻血を出して魔技の生成を中断してしまったアクリアに側にいたリナが文句を言う。


「めちゃくちゃ問題あるのですアクリアさん!早く魔技の生成を再開して欲しいのです!」


「ハァ…ハァ…ご、ごめんなさい…ハァ…集中出来なくふぇ…ブバッ」


「だったら見なきゃいいだけだし!てゆうかいい加減慣れるしアクリアさん!」


 珍しくシロナがアクリアに突っ込みを入れている。


 …何をやってるんだあいつらは…。


 後ろが騒がしい事を一瞬気になったが、すぐ意識を戦闘に戻した俺は、自身で抜いだ花から貰った服を汚さないように、腰に巻いていた青いTシャツを風呂敷がわりにして、服を包んで足元にそっと置き、またハイリザードマン2体に向かって歩き始めた。


「「グガー!!」」


 自分達に近づいてくる俺を敵と認定したのか、ハイリザードマン2体はヨダレを垂らしながら俺を睨みつけて殺気を放っている。


 俺は気にせずに更にハイリザードマンに向かって歩きながら近づいていく。そして奴らとの距離間が50cmを切った辺りで2体のハイリザードマンが一斉に俺に攻撃して来た。


「「グガガーー!!」」


「あ、危ない!!!」


 カイトが叫び声を上げる。その叫び声につられて女性陣三人も俺とハイリザードマンの方に視線を戻す。


 ガッ!…ゴン!!


 勝負はハイリザードマン2体が俺に攻撃を仕掛けた次の瞬間に一瞬でついた。


 俺の胴体に噛みつこうとしてきたハイリザードマンに対して、俺は左手を熊手の形にしてハイリザードの下顎を掴む様にすくい上げて首を刈り取り、ほぼ同時に頭に噛みつこうとしたもう片方のハイリザードマンには練気を纏った足で後廻し蹴りを眉間に浴びせて頭を陥没させた。


 そして噛みつき攻撃の勢いがついたまま俺に体を預けてきた首無しのハイリザードマンと頭が潰れたハイリザードマンを躱すと、既に絶命した2体のハイリザードマンは少し勢いがついたまま地面に倒れこんだ。


「「「…………」」」


「………ブフッ」


 離れてその光景を見ていたカイトとリナとシロナの三人は、愕然して口を開けたままポカンとしている。そしてアクリアは片手で鼻と口を抑えながら俺に熱い視線を送っている。鼻血はまだ止まらない様だ。


 …アクリアさんはとりあえず置いて置こう…。


 愕然としているカイト達に、俺は持っていた片方のハイリザードマンの首を自分の前に出してカイト達に見せながらポーカーフェイスで言葉を発する。


「ほらな、俺は殲滅(せんめつ)担当だろ?」


 俺のその言葉を聞いてカイト達は即座に口を揃えて返答した。


「「「はい!間違いありません!」」」


「花村ひゃんのおっしゃる事に間違(まひがい)などあるわけがございまふぇん……ブッ」


 …何かアクリアさんだけ言葉の意味がちょっと違う様な気が……い、いや、それは気にしないで置こう…。


 鉱山町冒険士協会新支部の人事。


・支部長 カイト(表の仕切り 一般事務担当)

・副支部長 アクリア(総務や経理全般担当)

・メカニック リナ(機械全般の整備 管理担当)

・皆のサポート役 狐娘((きつね)担当)

・スカウトマン 俺(職員スカウト 殲滅(せんめつ)担当)


 にこの瞬間、正式に決定した。

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