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第21話 俺の冒険士協会支部設立計画②

「…どうやら大統領に冒険士支部設立の許可が取れた様ですね…」


「何か俺達はとんでもない人と知り合ってしまったみたいだな?」


「…まあ、あの化け物を一人で倒した事自体がとんでもないのです」


「……ぼ、僕、そんな人に、さ、最初あんな態度を取っちゃったし…」


「シロナがすぐに土下座して謝ったのは正解なのです」


「…シロナさん、花村さんに土下座したんですね…」


 周りにいるカイト達は俺とシストの会話に対してヒソヒソと自分の意見を交換している。


 …なんか俺のイメージが…と、とにかく今は向こうは気にしないでおっさんとの会話に集中しよう…。


「実はおっさんにまだ頼みたい事がある」


「何かね?」


「出来れば今回の冒険士支部設立はおっさんが信頼を置く冒険士や役員にしか伝えないで欲しい。つまり秘密裏に設立して欲しい」


「「「「!!」」」」


 俺のシストへの提案に対して周りで聞いていたカイト達の表情が険しくなる。


 …これからここにいる四人とは運命共同体になるかも知れんから丁度いいかな?…。


 俺は周りにいた四人に目で合図をして話しを近くで聞いて貰おうと手招きをする。


 カイト達はその俺の仕草を見て何を伝えたいかすぐに察し、俺に近づいて真剣に俺とシストの会話に耳を傾けた。


「…それはどうしてかね?」


「これからの事を考えたらこの支部は余り目立たない方が何かと便利だからだ」


「話しが見えんな?」


「いやな?何事にも縛られない自由でフットワークが軽い支部が冒険士協会にも一つぐらいあってもいいと思ってな」


 気付けば周りにいる四人もドバイザー越しのシストも静かに俺の話しに聞き入っている。


「縛られないと言うのは、言い方を悪くするなら手段を選ばないと言う事だ。例えば邪教の連中に対してとか…」


「「!!」」


 俺の邪教と言う台詞を聞いてカイトとアクリアが怒りと憎しみに歪んだ顔になる。


 …やはりエルフの天敵だけあってあの二人もあいつらの行ないには思う所があるんだろう…。


「あんたは俺に前に話したが(じゃきょう)らを保護する様な事をする連中も中にはいるらしいじゃないか?」


「ああ、教会の連中だな?保護と言う程ではないが人型は皆、法の下に平等だとか言っているな…」


 …考え方は俺のいた世界と全く同じだが対象者に邪教(モンスターわく)の連中も入るのが個人的に気に食わんな…。


「そういうのに縛られたくないんだよ俺は」


「…君が言いたい事は儂もわかる気がするぞ」


「一般人に対して犯罪紛いの事をするつもりは勿論無いが、俺がモンスターと変らんと敵認定した奴に対しては人型だろうが魔族だろうが慈悲を与えるつもりは皆無だ。法とかは関係なくその場で消す」


「「ひぃっ!!」」


 リアと狐娘が途端に怯えだした。


 …いかん、いかん。殺気を少し出してしまったな…。


「がははは!!儂は好きだぞ君のその考え方は!」


「やっぱりあんたとは気が合うな。それとこの話しはおっさんにもメリットがある」


「ほほう。儂の方にも何かいい事があるのかね?」


 ドバイザー越しのシストは子供の様に期待した声で俺に今回の件での自分のメリットが何か聞いて来る。


「俺を正式に冒険士協会の…いや、あんたの下につかせられるというメリットだ」


「がはははは!!それは確かに素晴らしいメリットだな!」


「俺はこれからあんたの権力と立場を利用する。その代わりあんたは俺のSS判定の脅威とその力を利用しろ」


「…い、今、兄さんはSSがどうとか言ってなかったか?」


「……聞いてなかったし、僕なにも聞いてなかったし!!」


「きっと天兄さんの服のサイズなのです…」


「花村さんはどう見ても服のサイズはL以上だと思いますが…」


 その場で俺の話しを聞いていたカイト達は余りの話し内容に仰天してしまっている。


「面白い!!君のその提案は実に魅力的だ!」


「首輪や鎖で繋がれる気は全く無いが、あんたが俺の力を必要とした時はよほどの事でも無い限り最優先でこの力を貸すと約束しよう!」


 …おっさんの依頼する仕事は俺にあってそうだしな…。


「がははは!それで十分だぞ!!もとより君は手に負えんと思っておったからな?形だけでも正式に儂の傘下に入ってくれるならこれ程、魅力的な条件はないのだよ!」


 シストは興奮しながら俺の条件に食いついた。


「それと今、あんたの権力と立場を利用すると言ったが正確には俺達の隠れみのになって欲しい」


「君の言いたい事はわかったぞ!つまりさっき君が言っていたこれからその町に内密に設立する支部こそ…」


 …そういうことだ…。


「ああ、俺達の拠点にする支部だ」


 俺は自分の計画の全貌をシストに告げる。


「表向きでは一般の仕事をこなすが裏では規則に縛られず、邪教の処理やあんたが直々に頼む危ない事情が絡んでいる様な仕事を請け負う。支部というよりは特別な部署かな?」


「お、おい、なんか兄さん裏とか言ってなかったか?それに大統領と秘密裏に設立する部署の話しを俺達に聞かせるって事は…」


「聞こえないし!僕、今日は耳の調子が悪いからさっきから何も聞こえないし!!」


「き、きっとその部署は天兄さんが個人でやるつもりなのです!」


「でも花村さんは今、俺達とおっしゃっていましたが…」


 その場にいたカイト達はついに現実逃避を始めた。


「がはははは!!実に面白い提案だ!儂もその支部と部署の設立の話しに乗らせて貰うぞ!!」


「それはなによりだ。俺の提案を受け入れてくれて感謝するよ」


「感謝するのは儂の方だぞ!こんなに胸が踊るのは久しぶりなのだよ天君!!」


 …な、なんか急におっさんがジュリみたいな話しかたになってんだけど…。


「他に何か儂に出来る事はないかね!」


「そ、そうだな、では支部の建物を建設する大工をおっさんのコネで用意してくれないか?」


「そんな事ならお安い御用だ!すぐに信頼できる建設業者をそちらの町に送ろう!なんならついでに儂のコネで高ランクの冒険士を何人か派遣するが?」


「有難い話しだが気が早いぞおっさん。まだ支部の建設すら始まってないからな?恐らくその部署を立ち上げるとしてもこれから半年はかかるだろうしな」


「がはははは!!確かに少し気が早かったな?だがそんな役割の部署だ、それなりの実力がある者でないとやって行けんぞ?」


「「「「ビクッ!」」」」


 シストのその台詞を聞いてカイト達は体を硬直させた。


「その事なんだが俺に考えがある」


 …元々、俺はこの世界を回るつもりだったからな?ついでに…


「俺はこの支部が設立されるまで各地を回って骨のある奴をスカウトするつもりだ。そいつらをこの支部と部署の職員にする」


「君自身がスカウトをするのかね?面白い!!元々、君に全てを任せるつもりでいたからな。構わんぞ!なんならスカウトする時に儂の名前を出せばいい!!」


 …めちゃくちゃ俺の提案に乗り気だなこのおっさん。その方がやり易くていいが…。


「そういえばマリーさんは今日は近くにいないのか?」


 …さっきから、かなりの声のボリュームで内密な話しをベラベラ喋ってるからなこのおっさん。近くにマリーさんがいたらきっとツッコミが入っているはずだ…。


「「!」」


 俺がマリーと言った途端にカイトとアクリアの顔色が変わった。


 二人は何か俺に言いたそうだがシストと話している最中なので俺に話しかけるのを躊躇している。


 …何かカイトとアクリアさんの様子が変だな?やっぱり同じエルフのBランク冒険士だし二人はマリーさんの事を知っているみたいだな…。


「なんだね天君、もしやマリーをスカウトするつもりかね?」


「違う。普段ならそろそろマリーさんのあんたに対する制止が入るのに今日はまだ一回もそれがないからだ」


「がははは!!そう言われてみればそうだな?ああ、君の言う通りマリーは今日は非番でここにはいないのだよ。儂自身もスケジュールが入っていないから会長室に一人でいるのだよ」


 …大統領がSPも連れづに一人でいていいのかよ?まあこのおっさんの実力はS級だから心配いらないんだろうが…。


「ならいい。恐らく彼女(マリー)にもこの計画を遅かれ早かれ話さなければならんと思うしな」


「その事なら今日にでもマリーに話すつもりでいるぞ。どの道、新しい支部の設立で彼女には色々と動いて貰う事になるからな?今から呼ぶつもりだ!」


 …おいおい、有難い事だが気が早過ぎるだろ…。


「いいのか?彼女は今日は非番なんだろ?」


「なぁに、君の頼み事と言えば彼女は喜んで非番を返上して動いてくれると思うぞ?」


 …おっさんの言ってる意味がよくわからんな?何で俺の為に休みを返上しなくてはならんのにマリーさんが喜ぶんだ?…。


「「ビクッ!」」


 俺がそんな事を考えていたら、近くでその話しを聞いていたカイトとアクリアが体を痙攣させる。


 …さっきからマリーさんの話しにやたらと反応するなこの二人は?まあいいか…。


「そ、それは有難いな。マリーさんにお礼を言って置いてくれ…」


「承った。必ず伝えておくぞ。マリーもきっと喜ぶのだよ!」


「「ビクッ、ビクッ!」」


 カイトとアクリアはまた体を痙攣させる。


 …なんなのコレ?ふ、深く考えるのはよそう。もしかしたら地雷が埋まっているかもしれん…。


「そ、そうか…」


「他に何か儂に頼みたい事はあるかね?」


「いや、もう大丈夫だ。とりあえず支部の建物の建設だけお願い出来れば十分だ」


「了解した!2、3日中にそちらの町に建設業者を向かわせる!その前に町長殿に話しをつけて置いてくれ!」


「こちらも了解した。長い間、俺の話しに耳を傾けたてくれて心より感謝します大統領…」


 俺はシストに感謝の言葉を述べる。


「がははは!へりくだった態度はやめたまえ!君と儂の仲だ!これからもいつもと同じ調子で儂と接してくれて構わん!」


 …だから何で俺の大統領(シスト)に対するいつもと同じ調子が無礼講になるんだよ…。


「…まあおっさんがそれでいいなら…。じゃあまたちょくちょく連絡するからその時は頼むなおっさん」


「勿論だとも!いつでも連絡してきなさい!!」


 その後、俺はシストと軽く言葉を交わしてシストとの無線を切った。


 そして無線を切った俺は辺りにいたカイト達を見渡して四人に向かって第一声を放つ。


「そういう訳だから皆、協力してくれ」


「どういう訳っすか!聞いてないっす!僕は何も聞いてなかったし!!」


「話しのスケールが大き過ぎて何が何だがわからないのです!!」


 狐娘とリナは混乱している。


 …やっぱ普通は、いきなりあんな話し聞かされたらこの二人みたいになるよな…。


「そ、そんな事より花村さん!マ、マリーさんとはどういったご関係なのですか!!」


「アクリアの言うとおりだ兄さん!!俺もそれを聞きたい!」


 カイトとアクリアは堰を切ったように俺に質問して来た。


「それこそ今はどうでもいい事だし!!」


「シロナの言う通りなのです!!」


「「大切な事です!!」」


 …いや、俺もどうでもいいことだと思うが…。


「よくわからんが。マリーさんとはただの知り合いだぞ?まだ2、3回しか会った事も喋った事もないしな?」


 その俺の言葉を聞き二人は安堵の表情を浮かべた。


「そ、そうですか…」


「な、なら良いんだ兄さん…」


 …変な奴らだな?…。


「で、話しは戻るが…」


 俺は先程のおちゃらけた態度とは打って変わり真剣な態度で改めてカイト達に今回の事についての賛否を問う。


「俺の頼み事は今聞いた通りだ。それについて皆の意見を聞きたい…」


「「「「…………」」」」


 その俺の問いに対して四人は真剣に考え混んでいる。


「私は花村さんの提案を受けたいと思っております」


 最初に答えたのはアクリアだった。


「ア、アクリアさん本気なのですか!」


「はい…。むしろ私の場合は是非その部署で働かせて頂きたいです…」


「…確かにアクリアの事情を考えたら天兄さんの大統領に提案した部署は願っても無い職場だな…」


「ええ…。私は邪教の者どもを追い詰める為に冒険士になりましたから…」


 アクリアの目に冷徹な光が宿る。


 …彼女も邪教と訳ありみたいだな?本当にろくな奴らじゃないなあいつら…。


「ぼ、僕は無理だし!そもそも、さっき天の兄貴の頼み事は危なくないって言ってたじゃないっすか!!」


 …あ〜、そういえば言ったなそんな事…。


「危なくないぞ狐娘。基本、皆に頼みたいのは支部の建物の管理と表の仕事だ。裏の仕事は俺が担当する予定だ」


「い、いやそれでもやっぱり危ないし!」


「…狐娘…冒険士の仕事に危なくない物なんて無いだろ?」


「へ、屁理屈っすそれは!!」


 …俺もそう思うが、言ってる事は間違いじゃないぞ狐娘…。


「そ、そもそも、あたし達と天兄さんはさっき知り合ったばかりなのです!まだ貴方の事を完璧に信用するのは無理なのです!それに天兄さんだってあたし達の事を信頼できるんですか!?」


 リナが必死に訴える様に俺に疑問を投げかけて来た。


 俺は彼、彼女等に大統領との密談を聞かせて今までにない支部、部署を秘密裏に設立する計画の全貌を包み隠さずに、会って間もない四人の冒険士に教えた。


 その事に関しての俺に対するリナの疑問は当たり前の事である。


 だがそれに対しての俺の答えは単純なものであった。


 …もっともな意見だな。ま、俺には他に今のところ頼れる冒険士もいないし、それにな…


「信頼できるというよりはカイト達の事を……こう言ったら上から目線かもしれんが気に入っちまったんだよ…」


「「「「!!」」」」


 …そう、俺はカイト達を気に入ったから今回の計画に協力して欲しいと思ったんだ…。

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