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第20話 俺の冒険士協会支部設立計画①

 今、俺は魔石製造店の中でカイト達4人の冒険士チームに自分の頼み事を告げた。


 俺の頼み事を聞いてカイト達は困惑した表情で俺を見ている。


「に、兄さんそれは本気で言ってるのか?」


「勿論だ」


 冒険士チームのリーダーであるカイトを始めそこにいる冒険士全員が俺の突飛押しもない頼み事に半信半疑でいる。


「天の兄貴…マジっすか?」


「だからマジだって言ってるだろ」


「と、とにかくその冒険士支部を立ち上げる理由をお聞かせ願えますか?」


「あ、あたしもそれは気になるのです」


「勿論それは今から話すつもりだ」


 その場の空気が緊張感に包まれ、皆が俺の話しに静かに耳を傾ける。


「まず、この町や鉱夫達の作業場である鉱山は比較的に魔素が薄い事はカイト達なら知っているよな?」


「ああ、その事なら把握している」


「私もそれは承知しております…」


 …二人とも流石がBランク冒険士だけの事はある。当然の様に自分達が活動している地域の事は熟知しているな…。


「し、知らなかったし…」


「シロナ、その事に関しては結構ここら辺では当たり前の事なのです…」


 …狐娘は知らなかったのか。まあチーム中、3人が知ってれば十分だな…。


「ここら辺の魔素が薄いという事情が、今回この町に兄さんが冒険士協会支部を作ろうとしている理由と何か関連があるんだな?」


「その通りだカイト」


「でもそれだとおかしく無いっすか天の兄貴?」


「あたしもそう思うのです」


 狐娘とリナは俺の言った話しと冒険士協会支部を立ち上げる事に関して辻褄が合ってない事に気付く。


 …リナさんはともかく狐娘も一発でこの話の違和感に気付いたか。やはり腐ってもCランク冒険士だな…。


「二人が言いたい事はわかる。魔素が薄いならモンスターの被害も少ない。それならわざわざこの町に冒険士支部を立ち上げる必要性は低いって事だろ?」


「言う通りなのです」


「僕もそう思ったっす」


 …普通なら当然そう思うよな…。


「…何か今回の事件と関係があるんですね?」


 アクリアが真剣な表情で俺に問いかけて来る。


 俺はその問いかけに無言で頷いた。


「これから話す事はあくまで俺の推測でしかない。もし検討外れの事を言っていたら遠慮なく皆ツッコんでくれ」


「承知いたしました」


「了解だ兄さん」


「「わかった(のです)(っす)」」


 その場にいた全員が頷く。


 それを見て俺は今回の大型モンスター騒動の事件に対する違和感とこれからこの鉱山町で起こってしまう可能性がある被害についての自分の推測を話し始めた。


「まず俺は今回の事件に関して、ある一つの矛盾を感じたんだ」


「矛盾とは?」


「こんなに魔素が薄い地域でBランク以上のモンスターが発生するのはおかしいということだアクリアさん」


「「「!!」」」


 その場に居た俺とアクリア以外の3人の表情が変わった。


 …アクリアさんは余り驚いてないな?俺と同じく今回の事件に対する違和感を少なからず持っていたのかもしれん…。


「い、言われてみればその通りだな…」


「はい、普通ならBランク級のモンスターは魔素が強い地域にしか生息しません。私も実はこの依頼を聞いた時にそこに違和感を感じました…」


「全然、気にも止めなかったのです…」


「僕もだし…」


 …まあ一つの仕事に関して通常はそこまで深く追求せんだろうからな…。


「それで俺はその事に関して逆の発想を考えたんだ…」


「逆とはどういう意味だ兄さん?」


「大型モンスターが魔素の薄い所にいるのではなく大型モンスターがいるから魔素が薄いということだ」


「「「「!!」」」」


 …どうやら皆、俺の言いたい事がわかったみたいだな…。


「…その事から察する俺の考えはこうだ」


 皆が俺に注目する。


「あのモンスターは長年この町一帯の魔素を独り占めしていてこの町の周辺は魔素が薄い代わりにあのモンスターはあそこまで巨大に成長した」


「…それなら確かに色々と辻褄が合うな」


「はい。そして恐らく花村さんの推理は正しいと思います…」


「僕もそう思うし!あんな巨大サイズは普通ならそれぐらいの事がないと育たないし!」


「じゃ、じゃあ天兄さんの気にしてる事って…」


 リナは俺が何を思ってこの鉱山町に冒険士協会の支部を立ち上げたいのか察した様だ。


 …さっきの採掘現場でもそうだが彼女(リナ)は思考能力がかなり高い様だな…。


「ああ、多分リナさんの察してる通りだ。あのモンスターがいなくなったという事は同時に魔素を取り込む存在もいなくなったという事。つまり…」


「…この辺りの魔素は少なからず濃くなり町ではこれからモンスターの被害が多くなる可能性が高いという事ですね?」


「その通りだアクリアさん」


 …本当にこのチームの皆は話しが早くて助かるな…。


「普通ならそれでも冒険士支部を町に作る程ではないんだが、この町の場合は無いと厳しい…」


「兄さんが何を心配してるか俺もわかったよ…。確かにこの町の所在地を考えたら町自体に小さくても冒険士協会の支部が必要だ」


 …カイトもどうやら俺の考えをわかってくれたみたいだな…。


 この鉱山町は交通の便が悪く、魔動バスなども通っていない。


 町まで続く山道も車が通れるほどには整備されているが、そもそもこの鉱山町に訪れる者自体ほどんどおらず、いたとしてもたまに製鉄を受け取りに来る業者の者ぐらいだ。


 実質この町はこの辺りの地域で一応は町と言われてはいるが俺が住んでいた人里離れた山奥と大差ない。


 一番近い麓の町の冒険士支部が車で1時間近くかかり人足なら鍛えた者でも急いで2時間以上はかかる場所にある町で今回の様なモンスターの被害が起こってしまった場合、町自体に冒険士支部が無いとどうしても対応が遅れてしまうと考えられる。


 余談だが車はこの世界では高級品で個人で所持している者は少なく離れた地域に向かう手段は大抵は魔石動力のバスや機関車になる。


 しかしこの鉱山町に来るには車か徒歩の選択肢しか存在しないので所持している人口がこの世界では圧倒的に少くない魔石動力車は除外して考えるのが普通だ。


 よってこの鉱山町の一番の交通手段は徒歩ということになり、そうなるともしモンスターの被害が発生した場合、麓の町の冒険士支部に連絡→依頼を冒険士が受ける→被害現場に冒険士到着といった流れにかなりの時間がかかってしまう。


 しかもこの鉱山町の住民は誰も動力車を所持しておらずモンスターなどの被害から逃げる手段が殆どない為、小規模でも冒険士の支部を町に置くのは必須である。


「話しはわかったよ兄さん。でもそれだと俺達だけではコトが大き過ぎて何とも言えないな…」


「ええ…。いくらカイトと私がBランク冒険士でも協会の支部を小規模でも設立する場合は冒険士本部に許可を必ず取る必要がありますから…」


 …当然そうなるよな?だが、そこは俺のコネと交渉術でなんとかするつもりだ…。


「そこは心配しないでくれ。実はその事でコネがないわけでもないんだ」


「マジっすか天の兄貴!」


 …お前はそれしか言えんのか狐娘…。


「恐らく大丈夫だと思う。それでなんだが誰かドバイザーを貸してくれないか?」


 俺のその頼みを聞いて皆、不思議そうに俺を見る。


「あ、あの、こんな事を聞くのは失礼ですが花村さんは自分のドバイザーを…」


「ああ、訳あって持っていないんだ」


「も、申し訳ありません。思慮に欠ける質問でした」


「気にしないでくれ。それに、それを言ったらさっきの俺の発言の方がよっぽど失礼だったからな…」


「そ、それこそお気になさらないで下さいませ!」


 何故か急にアクリアの顔が赤くなりそれを見たリナと狐娘がヒソヒソ話しをしている。


「ま、まさかアクリアさん…」


「いや、多分それはないし。剛ちゃんよりはマシだけど兄貴の顔だってイマイチだし」


 …何か急に変な空気になったな…。


「兄さん。とりあえず今、俺のドバイザーのロックを解除したから好きに使ってくれ」


 そんな空気の中、カイトは平常運転で俺に自分のドバイザーを渡して来た。


「悪いな」


「なに、お安い御用さ」


 …歯が光ったかと思わせる様なスマイルしてくるよなこいつは…。


 そんなどうでもいい様な事を考えながら俺はカイトから借りたドバイザーで先ほど話したコネに連絡を取る。


 …トゥルルル、トゥルルル…ガチャ。


「もしもし、こちらシストだ!!」


「「「「!!!」」」」


 カイト達が俺の連絡をかけた人物を知り皆、驚愕の表情を浮かべた。


 …声デケえよおっさん。皆に丸聞こえじゃねえか…。


「ご無沙汰しております大統領。花村です」


「おお!!天君か!!この前はすまんな!マリーから後で事情を聞いたが儂も重要な会議中でな!!」


 …だからもう少し声のボリュームを下げろおっさん…。


 俺はドバイザーを自分の耳から少し話して会話を続ける。


「いえ、それは仕方のないことですからお気になさら…」


「がははは!!なにをかしこまっているんだ天君!!何時も通りに話したまえ!!」


 …いつから俺が大統領(シスト)に対しての何時も通りがタメ語になったんだよ…。


「まあいいけど…。実はおっさんに頼みがある…」


「「「「!!」」」」


 俺の大統領に対しての口の聞き方を聞いていた周りの4人は更に驚きの表情をする。


「だ、大統領をおっさんとか呼んでるぞ兄さん…」


「で、ですが今の大統領の口ぶりだと花村さんにそういう風に呼ばせたと捉えるのが正しいかと…」


「天兄さんは、本当に何者なのですか…」


「天の兄貴は伝説の超人型だし」


 …もう余り気にせずに話しを進めよ…。


「天君の頼み事とは興味深いな。言ってみてくれ、儂が力になれる事ならいくらでも力を貸そう」


「…恐らく俺の今から頼む内容であんた以上に力になれる人物はいないよ」


「ほ〜、ますます興味深いな…」


「実はなおっさん…」


 俺はシストにこの鉱山町で起こった今回の事件の詳細を詳しく話した。


 それに伴い俺が推測したこれから起こってしまう可能性があるであろう鉱山町のモンスター被害とその根拠を。


 そして鉱山町の所在地と交通の便の悪さの関係上、この町自体に小規模でも冒険士の支部を置かなければならない必要性をシストに説明した。


「…ふむ。天君の言いたい事と儂に頼みたい内容は理解できた…。理解できたがその頼み事にはいくつか問題がある…」


「問題とは?」


「確かに儂ならその町に協会支部を設立する為の許可を出す事だけなら容易だが、その支部を設立するにあたっての設立資金が下りるかどうかが微妙なのだ。それにそこで働く人員も少なからず必要になる…」


 …やはり、そこが問題になるんだな?だがなおっさん、そんな事は俺も百も承知だ…。


「そして何より、町に冒険士支部を設立するにはその町の町長殿の許可も必要になるだろう…」


「町長さんとは俺が交渉する」


 …さっきの200万の代わりに頼みたい事と言うのが、まさにその事だからな。多分、俺が理由を話して頼めば町長さんは首をすぐに縦に振ってくれると思うからその事は問題にしなくても大丈夫だろう…。


「その口ぶりだと、どうやら町長殿の許可の方は何か考えがあるようだな?では後は資金と人員の問題か…」


「その事なんだがなおっさん。俺に資金や人員の宛があるとしたら冒険士支部設立の話しは進むか?」


「…それが事実なら支部の設立の話しを進めるのは容易だが…。ちなみに天君の宛とやらに興味があるな、聞かせて貰えるかね?」


「勿論だ。まず資金はこれからまとまった金がほぼ確実に手に入る予定なんだが、その金というのが…」


「お、おい、もしやその金の調達手段とは…」


「ああ、多分おっさんの考えてる通りだ」


 俺はニヤリとほくそ笑みながらシストの疑問に答える。


「…今時おらんぞ?そんな事をする者は…。だがこれで君が近々3柱神様と接触する事が決まった様な物だな…」


 …3柱神が俺に接触して来るだと?いきなり何を言ってるんだこのおっさんは?町を救ったから英雄になるということか?いや、こんな小さな町をモンスターから救ったとしても英雄になれるとは考えにくい…。


 俺はシストが言った言葉の真意が理解できなかったがとりあえずその事を考えるのは止め、話しを続ける。


「どれぐらいの金になるかはわからんが恐らくは5000万程は手に入ると予想している」


「がははは!!相当な大型の奴を狩ったのだな?よし!それだけ資金があれば足りない分は儂のポケットマネーで補おう!」


「感謝するよおっさん。それとそこで働く職員のメンバーの宛の方なんだが、それはこれからその者達と交渉する」


「がははは!君なら恐らくその交渉も容易になんとかするだろうな……いいだろう!!そこまでお膳立てがすんでいるならマリーに言ってすぐにでも協会支部設立の許可をおりさせよう!」


 …よし、これでこの町に小規模でも冒険士協会の支部を設立する目処が付いたな。だが俺とあんたとの交渉はまだ終わらんぞおっさん…。


 俺は更にこれからこの鉱山町に設立する冒険士支部を他の支部とは異質な物にしたいという自分の考えをシストに提案した。

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