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第16話 冒険士達に対する俺の提案

 俺は今、(ふもと)の町からこの鉱山町にモンスター討伐の依頼を受けて来た若者冒険士グループの男女達と対峙している。


 その冒険士グループメンバーはまずカイトと名乗るBランク冒険士の若者男性エルフでこのチームのリーダーだ。


 見た目は20代前半で流石はエルフだけあって顔は美形の髪の色は金髪で肩の辺りまで伸びており目は緑色の爽やかイケメンと言った所だ。


 だが先ほどの町長や女店主との絡みを見る限りでは、けして軽い印象ではなく、仕事に真面目なプロ意識の高い紳士だと思われる。


 次にこのチームのもう一人のBランク冒険士のアクリアという女性だ。


 彼女も見た目の歳はリーダーの男性と同じく20代前半ぐらいで髪は腰迄届く長髪で顔は超美形、スタイルも抜群で特に胸の大きさがかなりあり、目と髪は共に透き通るような青だ。


 ただ印象は色っぽい女性というよりはしっかり者の優しいお姉さんという感じで落ち着いた雰囲気と何処か気品がある立ち振る舞いは貴族や王族を思わせるほどで、同僚の目に余る失礼な態度を諌めた所を見ても淑女という印象だ。


 …こんな超美形、淳達以来だな。しかも髪と目が綺麗な青だ。この世界に来て初めて見たな…。


 次はこのチームの亜人女性の一人でCランク冒険士の名前はリナという恐らくは犬の亜人の冒険士だ。


 彼女は歳は前の二人よりも若そうでまだ10代後半といった所でクリーム色のショートヘアー、目の色は茶色で顔は前の二人よりも劣るがそれでもかなり可愛い部類に入るレベルだ。


 余り先ほど会話には入って来なかったのでどんな人物かはまだハッキリしないが、それでも前の二人同様、俺に失礼な態度を取った狐の亜人女性を注意した所を見る限りでは常識人だと思われる。


 そして最後にその狐の亜人女性だが、名前はシロナといい、この女性もCランク冒険士だ。


 もう一人の亜人女性と歳は同じぐらいで名前と被っているのか髪は白髪のポニーテールで目の色は綺麗な黄色、顔も可愛いいとは思うがレディースの様な見た目の柄の悪さでそれが霞んでしまっている。


 そして印象は見た目と同じでかなり口が悪く軽い性格をしていると思われ、先ほどの仕事に対する姿勢からしてもプロ意識が薄くてとてもCランクとは思えない。


 …まあ、あのゴリラもCランクだったから素行の悪さはランクには関係ないか…。


「カイトさんにアクリアさんにリナさんに狐女(きつねおんな)だな。よろしく頼む」


「…ねえちょっと、なんで僕だけ、さん付けはおろか名前すら呼ばれないわけ?」


 俺が狐の亜人女性を狐女と呼んだら途端に狐の亜人女性が俺を睨みつけた。


「それはお前も俺の名前を呼ばないからだ。 別に俺に対して礼儀正しくしろとは言わないが自分が礼を欠いた態度をしている癖に人に礼儀を求めるな」


「なっ!」


 そう言うと狐の亜人女性は一瞬驚いてから、俺の事を更に睨む。


 …悪いが俺は誠意や礼儀にはそれと同じ姿勢で相手に接するが、逆に傲慢、無礼といった態度にもそれと同じ様な姿勢で接する。これは目上、身分が高くても関係無い。言わば俺の中のルールだ…。


「それにさっきお前が言った、今の事態が終息した事に対してつまらないという発言は俺から言わせて貰えば0点だ」


「なっ!あんたには関係無いでしょ!!」


 狐の亜人女性は、先ほどにも増して、俺に対して怒りだす。


「確かに関係は無いかも知れん。だが同じ冒険士として言わせて貰うがプロの冒険士ならあの場合はそこのお前のチームのリーダーのカイトさんやリナさんみたいに間に合わなかった事を申し訳ないと思うか事態が無事に終息した事に対して安心するかだ」


「僕だってモンスター討伐に間に合わなくって残念がったし!」


「お前のそれを今言った二人と一緒にするな。二人は申し訳なさと不甲斐なさからここに来た時に落ち込んだんだ。お前のは単なる娯楽的な理由でとてもCランクの冒険士とは思えない発言だ。俺から言わせて貰えばお前はランクは関係なく冒険士として半人前以下だ」


「な、な、何よこいつ超ムカつくんですけど!!!みんなからもなんか言ってやってよ!!」


 シラーーー…。


 狐の亜人女性と同じチームの他の冒険士の若者達は誰も彼女を庇わないどころか皆、冷たい目で狐の亜人女性を見ている。


「…ごめんなのですシロナ…。普通なら貴方にシロナの何がわかるの!…的な発言をする所なのですが、その人の言った事は超正論なのです」


「リナの言うとおりだよ。その彼が言った言葉は正し過ぎて何も言い返せない」


「私もその方と全く同意見なのでむしろ何かを言うとすればシロナさんに対して言う事になりますよ?」


「み、みんな酷いし!」


 狐の亜人女性は他のチームメンバーの反応を見て泣きそうになる。


 …お前以外はまともなだけだよ…。


「な、何よ偉そうにさ!あんたこの中じゃ一番年下っぽいし年上に対して少しは遠慮しなさいよ!」


 先程までとは打って変わり、狐の亜人女性は半泣きで俺に対して強がって来た。


「悪いが俺にとって無礼な奴に年上年下は関係無い。それに多分、俺はお前より年上だ」


「は?僕は19なんですけど?お前、16か17って所でしょ?」


「何を勘違いしている。俺は32歳だ」


「「「「えっ!?」」」」


 その俺の回答に対して狐の亜人女性はおろか他の若者チームメンバーも驚いた。


 …いや、エルフ種に比べれば俺の場合は若作りに入らんだろ?…。


「信じられないのです。見た目とかよりも溢れ出てる生命力からして16〜17歳が妥当なのです…」


「だよねリナ?」


 …そういえば前にラムも言ってたな、獣型の亜人の女性はそういうことが敏感に察知出来ると。 でもそうするとこの狐女が俺の脅威に気づかんのは変だな?…。


「まさか年上だったとは…。すみません…俺もてっきり10代かと思って。ちなみに俺は27です」


 若者のリーダーが俺に敬語で謝って来た。


 …俺もあんたの事は21、2ぐらいだと思ってました。やはりエルフの歳を予想するのは難しいな…。


「改まらないで欲しい。さっきみたいにタメ語で構わない。 だから、俺もあんたに対してこの口調でも問題ないか?」


 そう俺が告げると彼は爽やかな笑顔で俺の提案を受け入れる。


「もちろん問題ないよ。これから何か困った事があったら俺に気軽に相談してくれ」


 若者のリーダーは爽やかスマイルでそう答えながら握手を求めて来た。


「ありがとうカイトさん。よろしく頼む」


 俺はそう言って彼と握手を交わした。


「さん付けはやめてくれ。そっちもタメ語を許してくれたんだ。俺もカイトと呼び捨てで呼んで欲しい」


「了解だカイト。俺も天で構わない」


「ああ、よろしくな天」


「男の方の友情は美しいですね。それと、私も呼び捨てで構いませんよ?ついでながら、今年で22歳になります」


 …別に友情ってほどでもないんだがな…。


「あたしも呼び捨てで構わないのです。 歳はシロナと一緒の19歳なのです」


「いや、あんた達は、さん付けで呼ばせて貰う。出会ったばかりの女性を呼び捨てにするのは抵抗がある」


 その俺の言葉を聞き、二人の女性はとても感心した様子で俺を見てくる。


「花村さんは今時珍しいタイプなのです」


「はい、先程のシロナさんに対する意見もそうですが、とても真面目な方なのですね。凄く好感が持てます」


「ちょっと待ちなよFランク、なんで二人はさん付けなのに僕は呼び捨てなのさ!!」


「お前の場合は名前ですらない。俺から見たお前の見た目の印象だから呼び捨てもくそもない。お前も俺の事をその呼び方で呼んで構わないしタメ語で問題ないが、その代わり俺のお前に対するこの態度も変える気はないぞ」


「き〜〜〜!!僕だって絶対にFランクなんかにさん付けなんてしないし敬語も使わないし!!」


 …むしろFランクさんとか言われたら逆に腹が立つからまだそこは呼び捨ての方がいい…。


「あの〜、お取り込みの所、申し訳ないのですが。皆様にお話しがあるのですぞ」


 鉱山町の町長がまるで話しが途切れない俺達に痺れを切らして申し訳なさそうに割って入って来た。


「お話しとはなんでしょうか町長さん?」


 自然にカイトが代表して町長と話しをする。


「ちょっと聞いてんのFランク!!」


「…だまってろ」


 俺は狐女の顔の前に手の平を出して、空気を読めと黙らせる。


 …お前は少し空気を読め狐女…。


「なっ!あ、あんたの……」


「…ストップなのですシロナ。 少しは空気を読むのです」


「ちょっと向こうに行きましょうねシロナさん。今、町長さんとカイトが大切なお話しをしているので」


「え?な、なにいきなり?ちょ、ちょっと二人とも!」


 狐女がまた俺に対して食ってかかろうとした次の瞬間に狐女の両脇を他の若者女性二人がロックしてこの場から少し離れる。


 …こいつは本当にプロ意識が薄いな。後、どうでもいい事だがアクリアさんは年下の狐女はさん付けで年上のカイトは呼び捨てなんだな?…。


 俺が、二人は付き合っているのかというその場で全く関係無い事を考えていたら、町長が今回の冒険士協会に依頼した仕事の支払いについて話し始めた。


「今回の依頼達成の報酬の事なのですが、この仕事を引き受けてくれた皆様に仕事のキャンセルに対する迷惑料として報酬三分の一の100万円を、天殿にはこの事件を解決して現場監督の命を救ってくれたお礼として200万円をお渡ししたいのですが…それで問題ありませんかな?」


 …つまり今回の件でこの町が冒険士に支払う報酬の取り分の三分の一をこのチームに、三分の二を俺にという訳か。それにしてもやはりBランクとなると300万も依頼料を出さんといけないんだな?だが、Bランク以上のモンスター討伐は熟練の冒険士でも命を落とす危険が高いと考えられるし、当然と言えば当然か…。


「自分達はそのお金を頂く訳にはいきません。確かに冒険士の依頼キャンセルは原則としてキャンセル料が発生しますが今回の場合は仕方ありませんし、何より自分達もプロとしてのプライドがありますから何もしないでただ目的地に来ただけなのに100万もの大金を受け取る訳には行かないのです」


 町長のその申し出に対してカイトはすぐにキャンセル料の受け取りを拒んだ。


 …やはり(カイト)なら当然そう言って断るか。貰えるお金は貰うのもあるいはプロとしての姿勢かもしれんが、カイトはそういうタイプではなく自分の仕事に誇りとこだわりを持っているタイプだ。間違っても今回の様な場合に報酬を受け取る感じの男じゃない…。


「なっ!か、カイトさん!貰えるもんは貰っときなよ!!」


 …そして当然、カイトの提案に対して狐女ならこう言う。まあプロとしてこれも間違ってはいないがそれに対して好感を持てるかといえば悪いがNO(ノー)だな…。


「あ、あたしもシロナの意見に……いえなんでもないのです…」


 …リナさんは狐女と同じくお金を貰いたいんだな。 しかし自分の中で様々な葛藤があった末に想いを押し殺した感じだ。良く考えれば無理もないかもしれんが。こっちの世界ではどうか分からんが、向こうの世界で10代に100万は喉から手が出るほどの大金だ。チームで山分けしたとしても一人頭25万になる。正直この額の金を諦めるのはかなりの苦痛だろう…。


「カイトの言うとおりですよシロナさん。私達にその報酬を受け取る資格はございません」


 …そして最後の一人のアクリアさんの場合も当然、受け取りは拒否するよな。彼女はある意味ではカイトよりそういう品格的なものを大事にしている印象だ。間違ってもこういう場合に報酬金を受け取るタイプじゃない。そして俺はというと…。


「町長さん…俺もその礼金(にひゃくまん)は不要です」


 …勿論いらん。今回の件は、ただ単に俺が自分自身で勝手に親父さんを助けたくて動いたことだ。その事でお礼を貰いたいとは思わん…。


 俺のその言葉を聞き町長が困った顔になる。


「これ程の事故を終息して下さった町の英雄に何の礼も無しとは…流石にそれは町長の私の立場から言わせて貰えば正直、困りますぞ」


 …まあ結果的には俺は町を救った冒険士だからな。その俺に対して何も礼をしなかったとなると町長の立場が悪くなるかもしれんな…。


「いや、報酬ならこの町の魔石製造店のおばさんから既に受け取ってるから問題ないですよ」


「…何を貰ったのですかな?」


 町長は俺のその言葉に対し不思議そうに質問してきて…


「昨日、握り飯を貰いました」


 俺の返答を聞き、更に困った顔をしている。


 …ここにおばちゃんがいたらこの返答は怒られるかもしれんな?…。


 余談だが女店主と花と若者二人はこの場所にはいない。重症を負った親父さんに付いている。


 …まあ、馬鹿(わかもの)二人は俺が狐女と険悪なやり取りを始めてからとばっちりが怖くて花坊達の方に逃げたんだと思うが…。


「…凄いな貴方は…。しかしな俺達は報酬を受け取る資格は無いが、貴方は報酬を受け取る義務があると思うぞ?」


「…その紳士的な振る舞い。私達も見習わないといけませんね」


「…本当に、今時めずらしい人なのです」


「はんっ!ただいい子ぶってるだけだし!」


 俺の言葉を聞いてカイト達が各々の意見を述べる。


 …狐女は完璧にさっきのやり取りで俺を敵視しているようだ。別にどう思われても俺は気にせんがな。さて、では俺の提案を町長にでも話すか…。


「町長さん俺からの提案なんですが200万の代わりにある事を町長さんに頼みたいのですが…」


 俺のその言葉を聞いて、町長の表情は少し柔らかくなった。やはり彼の立場上、何かしらの礼を俺にしないと、風評的によくないのであろう。


「了解しましたぞ。私で出来る事ならなんでも言って下され」


「今はまだ本決まりでは無いのでその事については話せませんが…。後、あの冒険士チームの彼等にはやはり100万を渡して下さいませんか?」

 

「「「「!」」」」


 俺の提案に若者冒険士達が驚き各々が二種類の反応を見せた。


 カイトとアクリアは驚き複雑な表情を浮かべている。逆にリナと狐女は、報酬を貰える事に期待して目を輝かせていた。


「それは勿論構いませんぞ。私も冒険士の皆様には最初から100万円は払うつもりでおりましたので」


「ありがとうございます町長さん…」


「お、おい天!さっきも言ったが何もしていない俺達はそのお金を受け取る訳には…」


 カイトが慌てて俺と町長の会話に入って来た。


「落ち着けカイト。俺の話しはまだ終わってない。100万を貰う代わりにあんた達にはこれから仕事をして貰う」


「し、仕事って…。事件は貴方が終息させたんだろ?」


 そのカイトの言葉に俺はニヤリと笑ってそこにいた冒険士全員にある事を聞いた。


「この中に回復の魔技が得意な者はいないか?」


 冒険士全員は俺の言葉にキョトンとした後、少し間を置いてその中の一人が名乗りでる。


「私は回復の魔技が得意な方と言えると思います。生命魔技のレベルは4まで上がっているので」


 アクリアがそう俺に伝える。


「!」


 …Bランクの冒険士が二人もいるからレベル3までの回復魔技なら誰かしら使えると思ったがレベル4とは嬉しい誤算だ…。


 この世界には各属性でレベル1〜レベル5までの魔技が存在する。


 レベル1、2は大概の者が習得出来るが、レベル3となるとかなりの熟練と才能、ドバイザーの機能が関わってくる。


 ましてやレベル4はそれだけでその道の達人の領域で、レベル5に至っては神から力を授かった英雄も含めて扱える者は世界に各属性につき数名しかいないと言われている。


 …だから前にジュリもファミレスで自分のドバイザーを見て火属性の魔技のレベルが3になっただけで発狂する程、喜んだんだが…。


 それを考えるとアクリアの若さで属性レベル4の魔技を扱えるというのは驚異的な事である。


 …流石はあの若さでBランクと言った所か…。


「では、アクリアさんに頼みたいことがある。今回の事件の元凶になったモンスターから部下を守る為に囮になって重症を負わされた現場監督の治療をして貰いたい。幸い命には別状はないが早く治療しないと回復後に何らかの後遺症が残ってしまうかもしれん」


「「「「「!」」」」」


 俺のその提案を聞き町長を含むそこにいた全員の顔付きが変わった。


 …まだ麓の町からここまで病院の迎えが来るまで時間がかかるからな?命に別状がないからと言っても骨折などの怪我だ。軽く見てはいけない…。


「……承りました。その方はどこにいらっしゃいますか?」


「私が案内しますぞ」


 アクリアはすぐに俺の申し出を承諾し、町長に案内されて親父さんの所に向かった。


 …よし、親父さんは彼女(アクリア)に任せて問題ないだろう。では他の連中には…。


「あんたらは俺と一緒に今回の元凶になったモンスターの死骸を運ぶのを手伝ってくれ。俺は訳あってドバイザーを持ってないから色々とそういう時に面倒なんだ」


 この俺の提案に他の冒険士達は。


「それぐらいならお安い御用さ。すぐに現場に案内してくれ」


「なのです、なのです!今回の報酬がそんな事で貰えるならいくらでも協力するのです!」


「ま、まあ報酬の分ぐらいは働いてやるし。それにしても自分のドバイザーを持ってないとか、やっぱりあんたFランクだし」


 …もう何とでもほざけ狐女。俺は痛くも痒くもない…。


 そして俺は白大蛇が出た1番の坑道にやって来た。


「ここだ…」


「「「…ゴク」」」


 カイト達が息を飲む。


「確認したいんだが天…そのモンスターはもう貴方が…」


「ああ、倒したと思うぞ?頭を破壊したからな」


「ふ、ふん!どうせFランクのあんたなんかにやられるモンスターなんて、リザードマンとかオーク辺りに決まってるし!」


「で、でもシロナ…。この場所、かなり大型の獣の臭いがするのです。それに殺気の残り香も…」


 …やはり獣型の亜人の女性だけあって流石にわかるか?しかもリナさんは犬だからな?まあ狐女も大体はこの中のモンスターの脅威に気づいてはいるが俺がそのモンスターを討伐したから認めたくないと言った所か…。


「う、うるさいし!ほらFランク!さっさとそいつの所に連れてくし!」


「…はいはい」


 俺は狐女の事を軽く流して冒険士達を首無しの白大蛇の所まで連れて行った。


「「「………………」」」」


 全員、目の前にいる余りにも巨大なモンスターの死骸に声が出ない様だ。


「……こ、こんなサイズのモンスター…ドラゴン以外で今まで見た事がないぞ…」


「あ、あたし達こんなのと戦おうとしてたのですか?む、無理なのです…」


 カイトはかろうじて冷静さを保っているが、リナはモンスターの正体を目の辺りにして恐怖で萎縮してしまっている。


 …Bランク冒険士がいるチームならこれぐらいのモンスター、あんまり珍しくないんじゃないか?…。


「……嘘だし…」


 狐女がなんとか声を絞り出し、呻くように現実逃避をする。


「嘘だし!嘘だし!嘘だし!!」


「いや、本当だ狐女」


「絶対にありえないし!!こんなモンスターをFランク一人で倒せる訳ないし!!」


 …残念ながら事実だ(きつね)…。


「た、確かに実物を間近で見る限り、シロナではないが…とても貴方(てん)一人で討伐したとは信じられないな…」


「コクコクコク」


 カイトも信じられない様子でまじまじとモンスターの亡骸を見ている。そしてすぐ側にいるリナも、カイトの言葉を肯定する様に何度も首を縦に振っていた。


 そんなカイト達三人に、俺が駄目押しの一言を言い放つ。


「わりと余裕だったぞ」


「絶対に嘘だしーーーー!!!」


 狐女(シロナ)の叫び声が、1番採掘作業場に木霊した。


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