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第7話 自分のステータス暴露

「……すみません大統領…もう一度、教えて貰えますか?」


 マリーはまだ信じられないようだ。


 …無理もない。まさか俺も自分がドラゴンの二段階上の脅威とは思いもしなかったぞ…。


「だから、S・Sだ!何回言わせるんだね、まったく…」


「す、すみません大統領…。 余りにも予想外だったもので…」


「まあ、無理もないがな…。 儂だって最初に天君を見た時は信じられんかったよ。マリーはまだ信じられんみたいだがな?」


 …確か最初に淳達に会った時に言われたな?モンスターでS、SSは伝説級だと…。


「当たり前ですよ!私だってAランクのモンスターですら一度しか出会った事がありませんし…」


 …だろうな。SSなんてそんな存在は普通ならまず出会えない筈だ。それを事もあろうにモンスターではない一人の人間がその脅威判定を叩き出したらそりゃ信じられんだろう…。


「儂ですら脅威判定Aだからな」


「自分の脅威判定が分かるのか?」


 …普通、自分の場合は脅威とカウントされないと思うが…。


正確(せいかく)に言えば自分の力量が分かると言うべきか? 相手だけ脅威が分かっても自分と比べられなければそれは完璧な危険察知とはいえんだろ?」


 …言う通りだな。例えば脅威判定Dと判定されても自分の力量が分からなければその敵は自分より強いのか弱いのか分からん。そもそも、その脅威判定の基準になる強さのレベルが分からなければ幾らSS〜Gのアルファベット別に表されても意味がない。仮にFと判定されても自分にとっては格上かもしれないからな…。


「便利な目ですね大統領…」


 マリーがシストの目に感心する。


「ん?おっさんはSランクの冒険士だろ?だったら脅威判定はSじゃないのか?」


「た、確かに大統領はSランク冒険士ですからそうなりますよね?」


 マリーも俺の意見に相槌を打つ。


「…これから言う事は冒険士の中でも儂と数名しかしらん。他言無用で頼むぞ…」


「そんな事、今更言われなくても分かっている。さっきも言った通りここで言われた事は誰にも言うつもりはない」


 …俺の人外(じんがい)な秘密も含まれてるしな…。


「天君は話しが早くて助かる」


「わ、私も誰にも言わないです!」


 …マリーさんの事、最初は仕事が出来るクールビューティーかと思ったが、やはりジュリの叔母だな。さっきからの話しの様子も何処となく似ている…。


「わかった…。実は冒険士のランクはな…大体だが、儂の見える脅威判定の一つ上なのだ」


「!!」


 …そう言う事か。つまりは脅威判定Aだと一つ上のSランク冒険士、脅威判定FだとEランク冒険士と言う訳か?勿論、脅威判定みたいな力量だけではなく仕事のこなし具合や一般的な冒険士としての貢献度もランクに関わると思うがな…


 更にマリーが驚く。


 …もう何を言われてもある程度は慣れようよマリーさん…。


「天君は本当に動じないな? 儂の秘密を次々と暴露しているのだぞ?」


「俺は豪胆(ごうたん)な方でね」


「がははは!!まったくだ! マリーなんぞ、さっきから驚きっぱなしだぞ」


「…俺もそう思う…」


「だ、大統領!天さんまで…」


 マリーは耳をしおらせて顔を真っ赤にしている。


 …意外に可愛い人だ…。


「話しを戻そう。つまり冒険士のランクはおっさんの脅威判定のワンランク上、AならS、BならAみたいな感じで分けられてるということか?勿論それだけで決まるとも思えないが」


「ああ、大体その通りだぞ。 冒険士としての世の中の知名度や貢献度も関係するのだが、それらが高い冒険士は自然と脅威判定も高くなるものだ。 だから脅威判定イコール、儂達の冒険士ランクと受けとっても何ら問題はないぞ?」


 …道理だな。冒険士としてランクが上がれば自然とその分だけ修羅場を潜る事になる。レベルや脅威判定の高さと冒険士ランクがほぼ変わらないのは必然だ…。


 しかしそんな話しの中、例外が存在する事をこの場にいた三人は気づいた。


「そうすると俺の場合は…」


「うむ…天君は力量だけなら冒険士ランクSSS(トリプルエス)ランクになるのだ…」


「………」


 …俺はFランクなんですが…。


 そしてマリーは必死で驚かない様にしているが口元がかなり引きつっている。


 …さっき言われた事を気にしてるよマリーさん!我慢しなくても普通に驚どろいて大丈夫だから!…。


「一応、聞きたいんだがそれはモンスターで言うとどれぐらいの強さなんだ?」


 …俺の強さはどの程度のモンスターに何処まで通用するか単純に知りたかった…。


「うむ、その事なんだがな……はっきり言って儂にも分からんのだよ。 なんせ儂も脅威判定はSまでしか見たことがなかったのだ。SSまで計れる事はミヨ様に聞いて知ってはいたが、まさか実際に見る事になるとは…」


 …モンスターでもいないとかさ…じゃあ人間のはずの俺はなんなの?やっぱり本当は人間じゃないの俺?


「ちなみにその脅威判定Sを叩き出したのはどんな生き物なんだ?人型か?」


「私もそれは気になりますね…」


「余り思い出したくないが仕方ないな…。 勿論、モンスターだよ。儂が若かった頃の話しだ。儂等は神様に加護を貰った者同士で調子に乗っていてな?その時に奴と出会ったのだよ」


 …儂等というと、おっさんだけではなく複数か?察するにチームを組んでいた英雄グループか何かか?


「大きなイカの様な化け物だった…ドラゴンの10倍は大きかったな…」


「ド、ドラゴンの10倍!!」


 …あ、マリーさん我慢出来なかったみたいだ。それにしてもドラゴンの10倍というと150〜200メートル近いのか?


「それはどの辺りの大陸にいたんだ?」


「そいつを見つけたのは大陸じゃないのだよ。 新しい大陸を探そうと思って海に出てな?そこで奴と遭遇したのだ」


 …俺の世界の空想上のモンスターだと該当するのはクラーケン辺りだが、こっちだとわからんな。出来れば会ってみたい。


「それで、勝ったのか?」


「どうなんですか大統領!」


「……マリー、いつの間かキャラが変わっておるのだよ」


 …もうそこは触れないで行こうよ大統領(おっさん)…。


「まあいい。勝敗だが勝っても負けてもいないな?いや、あれは儂達の負けか。逃げたのだよ儂達は……奴の余りの存在感と威圧感に恐れをなしてな……」


 …なるほどな。おっさんが思い出したくない訳だ。そりゃ怖くなって逃げだした時の事なんて話したくはないだろう。だが…


「とても冒険士トップの言う事とは思えんな。逃げたら負け?それは違うだろ。俺達のような人種は死んだら負けだ」


「……ふむ。確かに君の言うとおりかもしれんな天君。いや…儂は何処かで君にそう言って貰いたかったのかもしれんのだよ」


「私には言って欲しくなかったのですか?」


「…マリーにはそんな気の利いたセリフは期待できんからな?」


 …あ、おっさんが反撃した…。


「二人ともその辺にして、今度は俺の話しを聞いて欲しい」


「「………」」


 …とりあえず二人とも俺の話しに興味がそれたな…。


「…えっと、紙とペンを貸して貰えないか?」


「只今、用意します」


 そう言って、マリーは机の上にあった紙と万年筆を俺に手渡してくれた。


「ありがとうございます」


「いえ、好きな様にお使い下さい」


「なんでマリーには敬語なのだ?」


「最初に敬語で話さなくてもいいと言ったのは、あんたの方だろ?」


「私も大統領はそうおっしゃっていたと記憶しています」


「……マリーは一体、儂と天君のどちらの味方なのだ」


「天さんです」


 …言い切っちゃったよこの秘書さん…。


「…とりあえず今から俺のステータスを紙に書くから二人にはそれを見て欲しい」


「「っ!」」


 俺のステータスという言葉を聞いて二人は真剣な表情を浮かべた。


 …やはりそこは熟練の冒険士と言った所か?…。


 俺は受け取った万年筆で紙に自分のステータスを書き二人に見せた。


「これが俺のステータスだ」


 Lv 100

 名前 花村 天

 種族 人間?

 最大HP 30500

 力 777

 耐久 820

 俊敏 750

 知能 150


 特性 ・ 全体防御力アップ(効果大)


 魔法無効体質 状態異常無効 練気法 体内力量段階操作法 力調整法


「「なっ!!!」」


 やっぱり驚かれたか?だが基準が淳達しかわからんからな…熟練の冒険士とどれくらい違うのか興味がある。


 ちなみに備考は書かなかった……いや、普通に必要ないからね童帝(どうてい)とかの下りは…。


「だ、大統領!五桁(まんたんい)の数値とか存在するんですか?」


「それもそうなのだが、この『魔法無効体質』というのはもしや……」


「ああ、あんたの察するとおりだよ。 俺には魔技や魔素を具現化した攻撃が効かない。状態異常もないから結果的に言うと俺に効くのは物理攻撃だけになるな」


俺があっけらかんと説明すると、シストとマリーは驚愕の表情で俺の顔を凝視してきた。


「ついでに言えば、このステータスは恐らく3柱神様の誰かかそれに連なる存在が付けたと思うから間違いない」


 語尾に(笑)とか付けたり中二病とかいう単語を知っているのは間違いなく神だろうからな。


「……天さんには悪いですが、正直とても信じられません。今、貴方が言った事とこのステータスは…」


「ああ、俺もただの予想であって確証はないし、このステータスも本当にそうだという証拠は何も提示できない。従って、マリーさんが信じてくれないのも仕方ないし、俺もこの話を信じてもらえるとは、はなから思っちゃいない」


「……では何故、天君は儂とマリーに自分のステータスを紙に書いてみせてくれたのかね?」


 シストはいつの間にかさっきまでとは打って変わり、一国の王の顔をして真剣に俺へ質問して来た。


「決まっている、あんたがほとんど誰にも言った事のない自分の能力を昨日会ったばかりの俺に話したんだ。なら俺もその誠意に応えなくてはいけないと思った……ただそれだけのことだ」


 俺も真剣にその問に答えた。


「…くくくく……がはははははは!」


 俺のその答えを聞いて、シストは嬉しそうに大笑いをする。


「はははは〜……天君、君は(おとこ)だな」


「そうでもないさ」


 …そう、俺は(おとこ)などではない。さっきも世話になった淳達を結果的には裏切ったからな…。


「くくく…。マリー!天君は嘘は言っとらんよ。 そもそも天君は儂等をここで騙すメリットが何も無いからな、嘘をつくぐらいなら話さなければいいだけだ」


 …確かにな、おっさんが俺の脅威はSSと言ってるのに俺がステータスについて嘘をついても何のメリットもない…。


「確かにあんたの言う通りだよ」


 …おっさんの言う通り仮に嘘を付くぐらいなら黙秘をすればいいだけの事…。


 シストは自分より脅威判定が上の人物が自分に対して嘘を付く必要性がこの場面では極めて低いことを長年の人生観から熟知していた。


 …こういう駆け引きはお手の物だろう。やはり国のトップだけの事はある…。


「天君、逆に尋ねたいのだが、さっき儂が天君の脅威判定を見る事が出来ると言ってすぐに信じてくれたのは何故かね?」


 シストが俺に疑問を投げかけて来た。


「先程から話をしていて、君は相当に用心深いのが分かったからな?マリーはともかくとして、君がすぐに儂の言葉を信じた事が今考えると不思議なのだよ」


「言われてみれば…」


 マリーもシストの意見に同意する。


 …大統領の言葉を信じないとか、一体、俺はこの二人にどういう風に見られてるんだよ?確かに当たってはいるがな。俺が用心深いのは…。


「それはある言葉をあんたが言ったからだよ」


 …俺はおっさんが自分の能力を説明した時に言ったその言葉から嘘をついていないという事を確信していた…。


「脅威判定が分かる能力があると言った時に、あんたはその能力を神様から貰ったと言ったよな?」


「うむ、確かにそう言ったぞ」


「だからだよ」


「「…?」」


 …おっさんもマリーさんもこれだけではまだ俺の考えが分からないようだな?だが俺にはこの一言でおっさんが嘘をついて無いのが分かったんだよ…。


「仮にもあんたは、神様から加護を受けて英雄になり寿命も貰った。 そのあんたが神様の名前を出して人を騙す訳が無いだろ?」


「「!!」」


 …二人とも納得したようだな…。


「それは下手をすれば神様を冒涜する行為だ。 それを寄りにも寄って英雄のおっさんがする訳が無い…違うか?」


「がははは!確かにミヨ様の名前を出して儂が人を騙す事などありえんな?君の言うとうりだ!君は本当に知恵が回るな!」


 …そのかわり悪知恵も回りますがね…。


「……天さんは凄いですね…」


 マリーは感心した顔で俺を見る。


「先程の失言を取り消します。 申し訳ありませんでした」


 そしてマリーは俺に頭を下げながら謝った。


「いや、気にしないで下さいマリーさん。 逆に簡単に昨日会ったばかりの俺の言う事をなんの確証も無しに信じる方が俺としてはどうかと思うぞ?貴方は何も間違っちゃいない」


「…天さん…」


 …いや、あの…なんで少し潤んだ目で俺を見てんの?俺はただ思った事を言っただけだからそんな感動しないでいいから…。


「がははは!儂は彼が嘘をついて無い事は初めから分かっていたぞ!」


 …あんたは国のトップなんだから少しは疑え…。


「何か確信があったのですか大統領?」


「いや?ただの勘だ!」


 …おい!…。


「……大統領に聞いた私が馬鹿でした…」


 …もう、今日の事でマリーさんはかなりおっさんの評価を下げてるな…。


「仕方がないではないかね。幾ら儂の目でも、天君が書いてくれたステータスの証明を完璧には出来ん。 なら冒険士としての勘に頼るしかないぞ?」


「た、確かにそうですが…」


 …言いたい事は分かるぞマリーさん。仮にも国のトップが勘で物事を判断するのはNGだよな?…。


 …だからと言って魔力の無い俺が今、ドバイザーでステータスを提示出来る訳でもないしな。まあ、その前にドバイザーすらもう持って無いしな…。


「何かいい方法がないものか…」


 …そうだ!…


 俺はシストとマリーにこの場である一つのスキルを証明する手段を思いつく。


 …あったぞ、一つだけ俺のステータスに載っていた項目を証明出来る手段が!…。


「おっさん、マリーさん、今いい事を思いついた」


「「?」」


 二人ともキョトンとしてる。


「マリーさん」


「は、はい!…なんでしょうか?」


「俺を魔技で攻撃してくれ」


 俺はマリーに今この場で自分(おれ)に対して魔技で攻撃して欲しいと提案した。

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