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第109話 争いの神

《人型版・戦命力序列上位者》


 第1位 エイン

 第2位 レオスナガル

 第3位 シスト

 第4位 ルキナ

 第5位 ヘルロト

 第6位 シャロンヌ

 第7位 ミルサ

 同率7位 グレンデ

 第9位 ラナディース

 第10位 メザリー

 :

 :

 :

 第99位 リナ

 :

 第110位 アクリア

 :

 :

 第191位 カイト

 :

 :

 :

 :

 :

 :

 同率50008位 マリー


 〜***〜


「これが今現在の人型(ヒトガタ)上位10名と、ここにいる皆さんの『戦命力』序列順位です」


「よいよい、こりゃまた随分変わっちまったじゃねいかい」


「はい。これも(ひとえ)に、天殿の卓越した指導の賜物ですね」


「ンー、ンンーー!」


「かー、下界(した)の時間じゃあれからまだ一週間も経ってねえってのに。まったく大したもんだぜい」


「ええ。有言実行とはまさにこのことです」


「ンーンー、ンーー‼︎」




「よし。みんな順調に強くなっているようだな」


「シャーーッ! 何気に『トップ100』に食い込んでやがるの!」


「おいおい、確かに強くなったとは言ったが、あんな順位で満足してもらっちゃ困るぞ? こんなのはあくまで通過点の一つに過ぎん」


「分かっているのです! あたし、これからもっともっと強くなってみせるの! だから、これからもご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします、教官‼︎」




「『110位』ですか……まだまだ精進が足りませんね」


「それを言ったら俺の方こそまだまだだよ。ギリギリ『100位台』には入れたけど……」


「え? ちょっと待ちなさい、あなた達。あの順位って、全冒険士じゃなくて『全人型の中で』ってことよね? だったら十分凄いじゃないの! 私なんて五万位よ、五万位‼︎ 一人だけ場違い感が半端じゃないわっ!」


「いいえ。仮にも天様のパーティーの一員として、この程度で満足するわけにはまいりません」


「俺も兄さんの相棒として、零支部の支部長として、もっと頑張らないといけないな……」


「え、なに? 二人とも、いつの間にそんな志が高すぎるキャラになっちゃったのよ⁉︎」




「がっはっはっは! 志を高く待つ、大いに結構なことではないかね。がははははは!」


「フフフ、確かに。『向上心』は自らを成長させる上で、最も重要なファクターの一つと言えるでしょう」


「どれ、ここはひとつ儂も今後の抱負として、エイン殿とレオスを抜いて王座獲得を目指すとしようか」


「その意気込みに水を差すようで大変申し訳ないのですが、あの女を地に引きずり降ろすのはこの私です」



 ◇



「天殿に紹介したい者たちがおります」


 花村天と彼の『パーティー登録』メンバーが神域に来てから、およそ八時間ほど経った頃だろうか。


「唯今この場に呼び出しますので、どうかお目通り願えますでしょうか」


 突然、特別講師として教壇に立っていた知識の女神ミヨが、そんな事を言い出した。


「よい……。本気(マジ)で『あの二人』を天どんに会わせる気かい?」


「もちろんです」


 明らかに気乗りしないといった様子のマトと、涼しげな顔で微笑むばかりのミヨ。その二神のやり取りを見るに。どうやらはそれは、あらかじめ今回の予定(スケジュール)として組み込まれていた行事のようだ。


「ンンーー! ンンーーッ‼︎」


 ちなみに、生命の女神フィナはいまだ金色(こんじき)の樽から首だけ出してンーンーもがいている。例によって完全スルー状態のまま二時間が経過した。


 まあそんなことはさておき。


「それはこの度の“英雄がえり”の特典か何かですか?」


 天のこの質問に対して、


「あー、そういうんじゃねいな」


「ええ。違いますね」


 やはり二神は、仏頂面とニコニコ顔で答えた。


 天は腑に落ちないものを感じたが、同時に断る理由も見つからなかった。


 ……それにしても『お目通り』か、俺は単なる“人間”に過ぎないんだがな……


 内心で苦笑しつつ、天は教壇の脇から仲間たちの方を見やる。


「みんな。そんな訳で、しばらく授業は中断だ」


 天がそう告げると、皆も苦笑いを浮かべて無言で頷いた。まあ、天と他の者達とでは苦笑の意味合いが大分異なるのだが。


「それではよろしくお願いします、ミヨ様」


 そう言って、天は壇上の二神に恭しく一礼する。いくら相手が自分を持ち上げているからといって、横柄な態度をとっていい事にはならない。その辺りの分別は天もわきまえていた。


「承知しました」


 ミヨは満足気に天へ微笑みを返すと、教壇の中央に向けて手をかざし、光り輝く魔方陣を二つ、壇上に展開させた。


「おいでなさい、黒光(コクヒ)青月(セイゲツ)


 瞬間、教壇の中央に描かれた二つの魔方陣がより一層強い光を放った。

 目もくらむような凄まじい閃光が、一瞬で周囲の景色を飲み込む。


 ――ただ、この光の放出はそう長くは続かなかった。


 まばゆい光が消え去ったのち。


 魔方陣から姿を現したのは、フィナやミヨやマトと同様の神衣装――純白の絹のドレスのような服装――をした二人の男女。


「……」


「……」


 褐色肌のグラマラスな白髪美女と、色白で背の高い青髪の美男子。両方とも、見た目のみで言えば、年の頃は二十歳前後といったところか。


「…………」「…………」


 二人は何も言葉を発さず、ただ黙ってその場に佇んでいる。


 かの者らの外見は――人並み外れた美貌の持ち主という点を除けば――“人間種”の若者と大差ないものであった。

 だが。


 ――只者ではない。


 それが天の率直な感想であった。


 ……おそらくこの二人も神格かそれに近い存在だろう……


 天は一目見てそう判断した。

 それほどまでに、その者たちが放つ存在感は他の人型と比べて圧倒的なものと言わざるを得なかった。


「天殿に、私とマトの“筆頭眷族”をご紹介いたします」


「あ〜、そっちの目つきの悪い坊主がオイラんとこの筆頭眷族の青月(セイゲツ)。んで、こっちのむっつり顔の小娘がミヨんとこの筆頭眷族の黒光(コクヒ)だよい。まぁ、適当によろしく頼むぜい」


 意欲的なミヨとは対照的に、マトはとことんやる気なしといった感じで天に二人を紹介する。


 ……この神様がこんな無気力になるのは珍しいな……


 と密かに思いつつ。

 天はこの時点で、何故マトがこれほどまでに及び腰なのか、そのおおよその見当がついた。


「フン……」


「……チッ」


 主たちに呼び出され、紹介されているにも拘らず、黒光と青月の態度はすこぶる悪かった。とにかく酷かった。とくに青年(セイゲツ)の方など、そっぽを向いて舌打ちする始末であった。


 ……見るからに問題児って感じだな、ありゃ……


 壇上で凶器のようなプレッシャーを振りまくその者たちを、教壇脇から眺めながら、天は我知らず()みをこぼす。


 ――面白い。


 天はこの時、同時に()()()()()もなんとなく察したのであった。



 …………ただこの直後、事態は思わぬ展開を迎える。



「――なぁ、ミヨ様、マト様」


 最初にソレに気づいたのは天であった。


「その二人の()にも、俺に紹介したい(ヤツ)がいるんですか?」


 無表情な抑揚のない声でそう訊ねると。

 天はどういうわけか、急に明後日の方向を見上げた。


「……いえ。私たちが呼び出したのは、この者たちだけです」


「あぁ、()()()はオイラたちじゃねいぜい」


 答えながら、ミヨとマトも天に少し遅れるかたちで、天が見上げている虚空と同じ方向に顔を向ける。


 しかし神たちのその表情は、天とは違い明確な敵意を浮かべていた。


「「?」」


 壇上にいる青月と黒光を含めたその他の者たちは、そんな一人と二神の様子を、不可解な面持ち、あるいは不安そうに見つめる。


 ―――その答えは、図らずも皆がそちらに視線を向けた直後にやって()た。


 突如、空間が歪み。

 真っ白な超神界の空が大きく裂けた。


《ほう、人の身でありながら誰よりも先に(われ)の存在に気づくか》


 時空の亀裂の奥から聞こえてきたその声は、なんとも不気味で、鳥肌が立つような空恐ろしいさがあった。


「……みんな、下向いてろ。これから来るヤツは直視したらマズイかもしれん」


 天がそう告げた途端――


 カイト、アクリア、リナ、シャロンヌは一斉に顔を伏せる。

 それに倣うように、シストとマリーもすぐさま視線を下に逃がした。


 皆、本能的に悟ったのだ。天の言葉通り、あの声の主は、自分達には視界に入れることすら許されぬ存在であると。


「――よい、なんでテメェがここに来るんでい」


「この場にあなたを招待した覚えはないのですが?」


 冷めきった口調でマトとミヨが時空の割れ目に言葉を投げ入れた、次の瞬間。


「ぬしらに許しを得る必要がどこにあるのだ?」


 途方もない(あつ)が神域全土を覆い尽くした。


「我はただあの男の息子に逢いに来ただけにすぎぬ。これをとやかく言われる筋合いはない」


 漆黒の神衣と闇の波動を身にまとい。

 灰色の肌と灰色の髪を(あらわ)にして。

 かの存在は(つい)に降り立った。


「くっ」「ちぃ」


 その威圧感は、神の筆頭眷族たる黒光と青月に膝をつかせるほどのものであった――が。


「なるほど。アレがあいつの今の雇い主か」


 天は平然と立ったまま、その者をじっと見据える。


「フフフ。その気概、その強靭さ。あの男が口々に褒め称すのも頷ける」


 そしてその者もまた、天を見据えた。


「『あの男の息子』って言い回しが、どうにも引っかかるが」


 天は頭を掻きながら、当たり前のようにその者に話しかける。


「とりあえず『はじめまして』と言っておきますよ、争いの神様」


「“シナット”で構わぬ。おぬしの父、花村(せん)も我をそう呼ぶ」



 最高神格第四柱――


 争いの神シナット、ここに降臨。


 

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