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第99話 新ステータス

 ーーーー『ドバイザー』。

 かの魔導器が世の中に普及したのは、今から二十五年以上も昔のこと。

 稀代の天才発明家と謳われたとあるエルフの姉妹と、数人からなる各国の技術者達を集めた開発チームの手により世に生み出されたーー今世紀最大の文明の利器。

 それまで人類(ヒトガタ)はレベルワンの“魔技”ひとつ生成するにも専用の儀式や詠唱を必要とした。

 だがこの『ドバイザー』の登場により。

 それらの大幅な短縮化と、自己による魔力領域の完全制御に成功する。これにより、人型の魔法戦術は劇的な進化を遂げた。

 以来、人類と魔物の立場は逆転した。

 これまで一般人ではまったく歯が立たなかったEランクのモンスターも、大人が三、四人もいれば対処できるようになった。

 たとえ英雄種(エンシェント)、ないしはその血を引かぬ平民出身の武芸者でもーーC、Bランクといった魔物の上位個体をねじ伏せ、更には“災害級(ディザスター)”と呼ばれるAクラスの魔物にも届きうる実力者が、極少数ではあるが現れた。

 正に人類史上における新時代の夜明け。

 もはや『ドバイザー』は、この世界の人型にとってなくてはならない万能ツール。必需アイテムとなった。



「……では、やはり天君もそう思うかね?」


「ああ。お互いの状況を鑑みるに、どうやら間違いなさそうだ」


 天とシストは神妙な声で言葉を交わす。

 二人は会長室のソファーに向かい合わせで座りながら、間に置かれたテーブルの中央に目を向けた。


「あと俺の方で掴んでいる事は、この“黒の魔導器”には、無線機のような機能も搭載されていた」


「そのようなものまで……」


 テーブルの上には、手のひらサイズの黒い端末が、不気味な光沢を放ちながら無造作に置かれている。


「実際、無線機の方は、ヤツの部下から一度だけ通信が入っただけだが。まぁ裏付けとしてはそれで十分だろう」


「……」


 どうして天がそんなことまで把握しているのかーーとシストの顔には書いてあったが。下手な追及(コメント)は控えたのだろう。冒険士の長はひとつ咳払いをして。


「何はともあれ、見た目も含め聞けば聞くほど似ておるな」


「はい。まさに『ドバイザー』そのものといった感じですわね」


 とは、シストの背後に控えていたマリー。


「ある(スジ)の情報によれば、奴等は以前からソレの開発を進めていたようです」


 天は短く頷き、


「三柱神の加護の外にいる者でも扱える、邪教徒専用の『ドバイザー』を。ーーそして、それが遂に完成してしまった」


 淡々と、深刻な事態を二人に突きつけた。


「……なんということだ」


「まさに悪夢ですわ……」


 シストとマリーは露骨に顔を強張らせる。

 こういう時、シャロンヌがいれば気の利いたフォローもしてくれるのだろうが。生憎と彼女は今この場には居ない。眠りの呪術から目覚めたアリスの具合を()に、カイトたちのもとへ行ってしまったからだ。


 ーーただ、別段彼自身もそういったケアが不得手というわけではなかった。


 天はほんの少しだけ態度を砕けたものにして、言った。


「ただまぁ、まだそれほどの数は作られていないようだがな」


「というと?」


「既にカイトから報告は受けてると思うが。今回の王女(アリス)誘拐の首謀者の一人と思われる敵方の幹部と、俺は現場でやり合った」


「うむ。確かにその事なら聞き及んでおる」


 難しい顔のままシストが頷く。


「で。ソイツは今や俺のドバイザーの魔石ボックスに保管されてるわけだが」


 さらりと天がそんな事を口走ると。

 シストは軽く目を見開き、マリーに至ってはすんでのところで声を上げそうになったーーが、天は気にする様子もなく。


「ソイツーー『バンザム』とかいう、等級が“準一等星”の狒々じじいなんだがーー」


 言いながら天はテーブルの上に置かれたソレを手に取り、シストに差し出して見せる。


「結論から言うと、バンザムはこの装備(アイテム)を持っていなかった」


「! そうか!」


 天が何を言いたいのか分かったのだろう。シストの声に熱がこもる。


「つまり、現段階ではまだ奴等もごく限られた者しか、この“アバド”なる魔道具を持つことを許されてはおらんと」


「あくまで推測にすぎないがな」


 シストの熱にあてられたのか、天が口元をわずかに緩める。


「いずれにしろ、相手側が厄介な代物を手に入れちまったのは確かだ」


 だがそれも一瞬のこと。


「引き続き俺達の方でも調べてみるが、こっちもこっちでやる事は山積みだ」


「ふう……『タルティカ』の件といい、全くもって頭の痛い話だが、立場上動かんわけにもいかんか」


「当然ですわ」


 天が肩をすくめ、シストが態とらしくため息をつき、マリーが毅然とした態度でそれらを締めくくった。


「ーーーそれはそうと」


 シリアスな話がひと段落した直後。

 シストが好奇心に富んだ目を天に向ける。


「天君。ズバリ訊くが、先ほど君が言っておった『ある筋』とは……具体的にはどこの(だれ)のことをさしておるのかね?」


「ちょ、シスト会長っ」


 と、建前上シストを諌める姿勢を見せつつ。マリー自身もそれについては気になっていた。そして天の性格上、訊けばある程度のことまでなら教えてくれるであろうことも、マリーは分かっていた。


「別に話すのは構わないが、その(あと)責任(せきにん)()てんぞ?」


 だからシストも安易にそこへ踏み込んでしまったのだろう……


「こいつは言ってみれば、マジもんのトップシークレットだ」


「ん?」


「え?」


 ーーーが、彼が自分たちに気を遣って()えて明確な表現を避けたことを、二人は気づけなかったようだ。


「厳密に言うと、俺は“彼女(かのじょ)”から例の情報を提供してもらった訳じゃない。()()したんだ」


 何やら雲行きが怪しくなってきたが。


「彼女は文字通り、この世界のことなら『何でも知っている』が。こと奴等に関する情報だけは、俺に教えられないと言った」


 もはや後の祭りであった。


「彼女の立場を考えればそれも当然と言えるだろう。第一、そんな事をすれば、アチラもこちらの情報をリークし放題になる」


 既にブラックボックスは開かれてしまったのだから。


「つまり平たく言えば、俺は彼女とただの世間話をしただけで。その会話の内容の中にーー」


『そういうことか……奴等の真の目的は、おそらく自分たちでも扱える邪教徒専用のドバイザーの開発』


『まったく、あのような昔話ひとつで、どうしてお主はそんなところまで辿り着くんじゃよ』


「ーーというやり取りが、偶然(たまたま)含まれていたに過ぎない。以上だ」


 長い話が終わる頃には。

 シストは顔の筋肉をこれでもかと引きつらせ、マリーなど過呼吸一歩手前のところまで追い込まれていた。


 まあ早い話、世の中には知らない方が幸せな事もあるということだ。


「それで、彼女がどこの誰なのかという話なんだが……」


「すまない天君。儂が悪かったのだよ」


 天の言葉を遮り、ゴツゴツした大きな手のひらを弱々しく彼の前に出して。シストはストップの構えをとる。


「お互い今の話は忘れよう。儂は君に何も訊かなかった。そして儂は君から何も聞いていない。……マリーもそれでいいね?」


「しょ、しょ、承知いたしました!」


「賢明な判断だな」


 この話はここで終了し、二度と蒸し返されることはなかった。



 ……ちなみに天が敵幹部(ディゼラ)から押収した『魔争機アバド』は。


「また何時(いつ)アッチから()かってくるかも分からんから」


 と。

 引き続き天が預かることに決定した。

 その際、シストとマリーは一切余計な詮索はしなかったという。






「ーーああ、そうだ」


 ふと思い出したように、天はある物をジーンズの右ポケットから取り出す。


「忘れないうちに済ませておくか」


 そう言って天は手に持つそれを起動させた。スカイブルーのドバイザーだ。言わずもがな、彼専用のドバイザーである。


 ……アレが、天さんが女神様から授かったっていう……


 天が何を始めたのかはさておき。

 普通(ふうつ)にドバイザーを(あつか)えている彼の姿は、マリーには感慨深いものがあった。

 多種多様な機能を備えた端末型万能魔導器ーードバイザーは、契約の儀式さえ行えば“誰でも使える”お手軽な装備品としても広く知られる。

 だが……


 彼ーー花村天の場合は、事情が少し異なるのだ。


 彼は魔力が無い。彼は魔力を無効化してしまう。従って、当然契約の儀式も行えない。


 天が一般人と同じように『ドバイザー』を扱えるようになる方法。

 それは。

 難易度最上級の条件ーー『神様に認められる』をクリアするしかなかった。

 そして、


「おっさん。いきなりであれなんだが、俺と『パーティー登録』しないか?」


 それは言わば、彼が勝ち取った権利の一つであった。


「……天君。一つ(たず)ねたいのだが……」


 セット完了とばかりに天が自身のドバイザーをシストに差し出すと。

 世界に冠たる存在である大国の英雄王は、一瞬目を丸くし、プルプルと身を震わせながら……


「天君の言う『パーティー登録』とは……あの『パーティー登録』のことかね?」


「? 他にどの『パーティー登録』があるのかは分からないが、俺が言ったのはドバイザー同士でするやつだぞ」


「〜〜!」


 シストは無言のまま。さらに全身をビクン、ビクンと振動させる。


「か、会長」


 シストの背後に控えていたマリーは、思わず息を呑んだ。彼女には、今のシストの心境が手に取るように分かった。

 何故なら……


 ーー(うらや)ましい!


 自分自身も喉から手が出るほど、その権利が欲しいかったからである。


「試しにカイト達とやってみたら普通に登録できてな。枠はまだまだ余ってるから、良かったらおっさんともしておきたいと思ったんだ」


「そ、それは何よりだね。うむ。無論構わんよ。今用意しよう」


 同じ天ファンとして、シストが抑えきれない歓喜の中にいるのは容易に理解できた。


 ……羨ましすぎるわ、このオヤジ……‼︎


 声を殺して背中で笑っている上司を、マリーは射殺さんばかりに睨みつける

 女の嫉妬とはいつの時代も怖いものだ。

 マリーが、今度シストに出すコーヒーの中に砂糖の代わりに塩でも入れてやろうか、などと腹の底に黒い感情を生成し始めた矢先。


「よ……よろしければマリーさんも俺と『パーティー登録』しませんか?」


「……………………へ?」


 その刹那、ややぎこちなく紡がれた天の言葉が、マリーの脳内で繰り返し何度も何度も再生された。


「その、俺と『パーティー登録』をすると、三柱様から色々と便宜を図ってもらえるので」


「……」


「ぇえっと、他にも若干(じゃっかん)ステータスに補正が付いたり、俺が獲得した経験値も割り振られるから。この先マリーさんの身の安全にも繋がるかなと……」


「…………」


「も、もちろん、無理にとは言いまーー」


「喜んで‼︎‼︎」


「ーーせん、ので……え?」


是非(ぜひ)っ! 天さんと『パーティー登録』させていただきますわっっ‼︎‼︎」


 あまりにも嬉しすぎて、マリーは明らかにおかしなテンションで絶頂の限界を突破した。


「今すぐっ! (ただ)ちにっ! すぐさま準備いたしますわ‼︎」


 いまだかつてないほど指を高速で動かし、マリーはこれまで培ってきた事務スキルを総動員させ。ドバイザーを操る。


 ……あぁ、今日はなんて日なの……!


 天にそういう下心がないーーマリーとしては寧ろあってほしいのだがーーことは分かっていた。彼の言葉に嘘がないことも、自分の身を本気で案じてくれていることも。マリーは理解していた。

 だが彼女にとって。正直どうでも良かった。そんな事は。


 ……天さんに認めてもらえた! 心を開いてもらえた……‼︎


 ただ声をかけてくれただけで。親しみを込めて接してもらえただけで。

 それこそマリーは天にも昇る気持ちだった。


「残り九・五秒で準備が完了いたしますので、もう少々お待ちください!」


「りょ、了解です」


「ーー最終パスロック解除完了。これよりカウントダウンに入りますわ。スリー……ツー……ワン!」


 ついでながら、マリーは天と初めて会った時にやらかしているので。

 天と自分の関係性ではまだ『パーティー登録』など当分無理だと思っていたので。

 余計に嬉しいのである。


「待つのだよ、マリー!」


 かぶっていた猫を脱ぎ捨て。

 シストが慌ててスーツの内ポケットから金色(ゴールド)のドバイザーを取り出す。


「天君に先に声をかけられたのは儂の方なのだよ! よって、天君と『パーティー登録』をする優先順位は儂の方が上ということになる!」


「会長はレディーファーストという言葉を知らないんですか⁉︎ そんなことだから、新人の受付嬢の子が会長よりもあんな軟派男の言う事を優先しちゃうんですよっ」


「ぐぬっ」


「とにかく、私の方はもう準備が整いました。会長がもたもたしている間に終わらせちゃいました。残念でしたね? 私は一足先に天さんと『パーティー登録』を済ませてしまうので、会長はそこで指をくわえて眺めててください」


「……ときどき思うのだがね。君、儂のこと冒険士協会の会長とも『ソシスト』の大統領とも思ってないときがないかね?」


「それとこれとは話が別ですわ」


「……」


 一緒だと思うが、と天がぬるくなったコーヒーをすすりつつ、そんな結論に至ったかどうかは定かではない。



 その後。


 無事(?)に『パーティー登録』を終えた三人はーー仲直りの印として、天とシスト、天とマリーだけではなく、シストとマリーの『パーティー登録』もまとめて行いーー天の提案により、各自それぞれのステータスを確認した……


 Lv67

 名前 シスト

 称号 知識神の真理英雄

 種族 真理英雄種(エンシェント)

 職業 王・Sランク冒険士

 最大HP 3150

 最大MP 7800

 力 208

 魔力 90

 耐久 570

 俊敏 179

 知能 124


 特性・力アップ(効果中) 全属性耐性アップ(効果中)

 (ゴッド)スキル・知識の目



 Lv34

 名前 マリー

 職業 秘書・Bランク冒険士

 最大HP 390

 最大MP 735

 力 63

 魔力 74

 耐久 207

 俊敏 67

 知能 119


 特性・魔攻アップ(効果小)



 ◇



「…………会長。私の『耐久値』が、今まで見たこともない(あたい)になっているのですが」


「…………奇遇だねマリー。実は儂も、今まさに君とまったく同じことを考えておったところなのだよ」


「その様子だと、どうやら上手くいったみたいだな」


 ドバイザーに表示された自分のステータスに目を釘付けにしたまま、生まれたての子鹿のようにフルフル震えているシストとマリーはひとまず置いておいて。


 天は、スキル『生命の目』を発動させた。


「ーーうし。『4660』に『872』。二人とも順当に上がってるな」


「……天君」


 シストが狐につままれたような顔で呼びかけてきた。


「差し支えなければ教えてほしいのだが、これも君の(ちから)なのかね?」


「その問いに対する答えはイエスだが。別にこの能力については、それほど珍しいもんでもないはずだぞ?」


 そう言って天は苦笑する。


「ぶっちゃけコレについては、おっさんやマリーさんも普通に持ってる力だしな」


「私たちもですか⁉︎」


 驚きの叫び声と共に、マリーがようやくドバイザーから顔を上げる。

 同時に、シストがハッと何かに気づいたように天に目を向けた。


「もしや、これが君の“特性(とくせい)”なのかね?」


「ご名答」


 言って、天はドバイザーの画面を二人に見せるように前に出した。



 Lv37

 名前 花村 天

 称号 格闘王(バトルロード)

 種族 伝説超越種(レジェビエント)

 最大HP 17000

 体内LP 500万

 力 490

 耐久 1500

 俊敏 468

 知能 150


 特性・全体防御力アップ(効果特大)


 生命の目 環境順応 神知識共有 魔法無効体質 状態異常無効 練気法 体内力量段階操作法 力調整法 武闘Lv99


 備考

 三柱神地上代行者・ フィナの永遠の伴侶(ダーリン)♡・闘技創始者(中二(ちゅうに))



 言わずもがな、そこに映っていたものとは天の個人ステータス(第一段階)である。


 (なお)、このとき天はシストとマリーに『備考欄』が見えぬよう親指でさりげなく隠していたが。『パーティー登録』を済ませた時点で二人はいつでも天のステータスを閲覧可能な為、所詮無駄なあがきでしかなかった。


「この『全体防御力アップ』が発動中は、パーティー登録メンバー全員の“耐久”や“魔防”といった防御項目がすべて三倍になる。それが俺の特性だ」


「「な、なんて出鱈目(でたらめ)な」」


「ステータス補正の“効果時間(エフェクトタイム)”は二十三時間ジャスト。一時間のインターバルをとれば再度発動可能になる」


「「エフェクトタイムが二十三時間っ‼︎⁉︎」」


「ちなみに、俺を中心に置いて半径五〇〇キロ圏内がこの特性の効果範囲だ」


「「…………」」


「ああそれと、これから毎日午後十一時から日付が変わる午前零時までの間は、少し警戒を強めてくれ。その時間帯を休憩時間(インターバル)に設定するつもりだから。くれぐれも忘れないようにしてくれよ、お二人さん?」


 天はニヒルな笑みを浮かべて、そう締めくくった。




 後日……



「ハハ。それは会長やマリーさんも、さぞ度肝を抜かれただろうね」


「最後の方は金魚みたいに口をパクパクさせてたな、二人とも」


「そりゃあね。俺達の常識で考えれば、アレは色々とあり得ないから」



 Lv41

 名前 カイト

 職業 Aランク冒険士

 最大HP 790

 最大MP 1480

 体内LP 1555

 力 117

 魔力 99

 耐久 336

 俊敏 93

 知能 108


 特性・全技射程アップ(効果小)

 神スキル・練気法 状態異常無効


 ☆戦命力・1452☆



「なあ、俺の特性って、コッチではそこまで常識外れなのか?」


「そう、でございますね。一般的には、エフェクトタイムは三十分前後、効果範囲は半径一キロほどもあれば高水準とされますので」


「ついでに言うと、特性を一回発動させたら、次使うまで最低でも半日以上はインターバルが必要なのです」


「兄さんの場合、そこらへんがまるっきり他と逆というか、流石は兄さんというか」


「恐れながら、マスターを我々の常識で推し量ること自体がナンセンスです。かのお力も、もはや特性ではなく加護(かご)と認識すべきかと」


「加護って……んな大袈裟な」


「いいえ!紛うことなき真実でございます!」


 Lv39

 名前 アクリア

 職業 Aランク冒険士

 最大HP 1070

 最大MP 1350

 体内LP 1205

 力 109

 魔力 125

 耐久 294

 俊敏 80

 知能 112


 特性・風属性攻撃力アップ(効果小) 水属性攻撃力アップ(効果小)

 神スキル・練気法 状態異常無効


 ☆戦命力・1627☆



(わたくし)は天様の加護を受け、更なる高みへと進むことが叶いました!」


「とりあえず落ち着くのです、アクさん。天兄が困ってるの」


「……それにしても、リナには一気に追い抜かれた気がするよ」


 Lv33

 名前 リナ

 職業 Bランク冒険士

 最大HP 1395

 最大MP 390

 体内LP 2200

 力 148

 魔力 22

 耐久 390

 俊敏 129

 知能 187


 特性・HPアップ(微小)

 神スキル・練気法 状態異常無効


 ☆戦命力・1669☆



「俺やアクリアも兄さんのおかげでかなりパワーアップしたけど。正直な話、リナの才能を目の当たりにして、軽く自信を失ったかな。アハハ」


「あたしはいつもそっち側だったのです。たまには譲ってもらわないとやってられないのです」


「そう、だったね……ごめん」


「ーーでも。コレって全部天兄から(もら)ったステータスだから……嬉しいは嬉しいけど、やっぱり手放しには喜べないの」


「殊勝な心掛けですね。その誇りを忘れぬ限り、あなたはこれから先も伸び続けるでしょう」


「の、伸びると言えば、おっさんの戦命力の上昇率はさすがに頭一つ抜けてたな。あの分だと、あと2、3レベルも上がれば『5000』の壁を超えるかもしれん」


「ふふふ、それは私も負けていられませんね」


 Lv56

 名前 シャロンヌ

 種族 英雄種(エンシェント)

 職業 Sランク冒険士

 最大HP 1280

 最大MP 16000

 体内LP 930

 力 115

 魔力 315

 耐久 423

 俊敏 135

 知能 120


 特性・魔力アップ(効果中) 物理耐性アップ(効果中)

 神スキル・練気法 状態異常無効 土魔技Lv5


 ☆戦命力・3917☆



「ハハ、改めてこうして全員のステータスを見てみると、壮観だな」


「ええ。先の一件で、私は1レベル、カイトとアクリアは3レベル、そしてリナは6レベルほど、それぞれ能力値が上がったわけですからね。もっとも、だからといってこのステータスの伸びは異常とも思えますが……」


「おそらく皆、体内に“練気”を取り込んだおかげだろう」


「と申しますと?」


「御三方も言ってたが、練気は手軽に“(しゅ)”を進化させる手段らしいからな。多分『体内LP』の数値に応じて、人型としての才能や細胞レベルも同時に引き上げられたんだろ」


「なるほど」


「それは大いにあり得そうな話だね」


「うーん」


「どうかされましたか、リナさん?」


「えっと。ちょっとだけ気になったのです……どうして天兄やシャロ姉には『種族』の項目があるのに、同じ“エンシェント”のはずのアクさんのステータスにはソレが表示されてないのかなって」


「言われてみれば……」


「確かにそうだね……」


「あぁ、なんでも“古代種”はその性質上、存在自体が秘匿扱いらしい。簡単に“古代英雄種(エンシェント)”を量産できると思われたくない、とかなんとか俺の主様がぼやいてたな」


「納得しました。要するに政治的な意味合いでの種付けを防ぐためでございますね」


「たた、たね……っ⁉︎」


「まあ分かりやすいけど、その言い方はあまりにも身も蓋もないと思うの……」






 それはある神々の談話ーー



「おいおいおい。天どんのやつぁ、またえらい強くなっちまったじゃねいかい」


「はい。すでに規定の力量(レベル)制限内でも100Lvを超えてしまいましたね。本当に、あの方はどこまで強くなるのでしょうか」


「うむ! それでこそ儂のダーリンなのじゃ!」


 Lv185

 名前 花村 天

 称号 格闘王(バトルロード)

 種族 伝説超越種(レジェビエント)

 最大HP 100750

 体内LP 620万

 力 999

 耐久 2997

 俊敏 999

 知能 150


 ☆★戦命力・約370000★☆


 〜***〜


 備考

 三柱神地上代行者・ フィナの永遠の伴侶(ダーリン)♡・闘技創始者(中二)

 ※万が一敵として遭遇してしまった場合、自らの運命を諦めるのじゃ!



「……よい。オメェ、そろそろ天どんのステータス画面イジって遊ぶのやめたらどうだい? オメェがいつまでもそんな馬鹿してっと、オイラたちまで天どんに白い目で見られちまうんだよい」


「全く同感です」


「遊んでなぞおらんわ! ことダーリンに関しては、儂はいつでも真剣(マジ)じゃ‼︎」


「余計にタチが悪いやい!」


「ふぅ、天殿が不憫(ふびん)でなりません……立場上仕方がないとはいえ、このような阿保(アホ)な女神を主として崇めなければならないのですから」


「誰がアホな女神じゃコラァアアアアアアアッ‼︎」






 国家機密通信・ある王たちの通話記録



 トゥルルルルルル……トゥルルルルルル……


 ガチャ。


「もしも……」


『こらシスト坊っ、一体なにやらかしてんねん!』


「……いきなりおだやかではないな。というか、久しぶりに個人回線で掛けてきたと思ったら、一言目のセリフがそれかね?」


『そんなん今はどうでもええよ! それよりも、あのステータスなんなん⁉︎ 急に耐久だけめっちゃ上がってるやないのっ!」


「……色々と突っ込みたいところだが、一先ずこの通信を()ってもいいかね?」


『待ちいや! な、なぁシスト坊。一体どんな裏ワザ使ったん? こっそりお姉さんにだけ教えなさい」


「はぁ、そもそも何故こんなに早く自分の個人情報が流出しておるのか、儂の方が聞きたいくらいだ」


『はあ? そんなん、アテが毎朝パーティー登録を開いてシスト坊のステータスをチェックしてるからに決まっとるやん』


「………………すまんが、儂はこれから『タルティカ王国』の王と会談があるのだよ。そういわけで、この話はまたの機会に願おう」


『はあっ⁉︎ ちょ、待ちいやシスト坊! そうやって都合が悪くなるたんびに仕事を理由に断っとったら、友達関係ももうお終ーー』


 プツン。


 ツー……ツー……



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