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第95話 二人の黒い従者①

「オッケー。大体わかったよ」


 (せん)は全身を脱力させ、真紅の布が敷かれた無駄に馬鹿でかいテーブルに頬杖をついた。


「要するにキミの話をまとめるとーー白闇(ビャクヤ)ってヤツの居場所は知ってるけど『特別な場所』だから僕に教えても意味がない。ついでにここで待ってても白闇は多分現れない。というわけで、奴さん目当てでノコノコこんなホラーハウスまでやってきた僕は完全な無駄足をくらったーーてな感じ?」


「仰る通りです」


 返ってきた声は、相変わらず事務的なものだった。

 黒い礼服の女ーー通称『2番』は、戦の言葉を肯定し、そしてまたすぐに黙する。

 周りにいた彼女の同僚たちは、あまりにストレートな物言いにややたじろいだような気配を見せていたが。

 戦としては、回りくどいおべっかを使われるよりも彼女の無駄を省いた断定的な受け答えは好感が持てた。


「ちぇ」


 蝙蝠マントの少年が、残念そうに口を尖らせる。


「戦のその“魔術を無効にする”っていう耐性さえなければ、ボクがあの暴君(ビャクヤ)のところまで速攻で送り届けてあげるのにさ〜」


「ふむ。あわよくば戦殿に白闇様を()してもらえれば、といったところですか」


「『4番』。君は本当にあの方が嫌いなのだな」


 と、ローブの男と鎧の男が、少年の見え見えの思惑(したごころ)を指摘する。


「アイツのことが好きな奴とかいるの?」


 彼ーー『4番』の少年がけろりと訊き返した。


「いないな」「いませんね」


 口を揃えて。ローブの男と鎧の男は、迷わず即答する。それは見事なまでに歯に衣着せぬ物言いだった。

 どうやら、白闇とかいう争いの神の片腕は相当な嫌われ者らしい。


「キャハハハ! キミらって何気に正直者なんだね」


 戦はケラケラと笑いながら、


「その白闇ってヤツ、キミらよりずっと強いんでしょ? 大丈夫なの、そんなことハッキリ言っちゃって?」


「聞かれたら確実に殺されるだろうが、だからといってどうという事もない」


 とは鎧の男。


「要は本人の耳に入らなければいいんですよ。まぁ、仮にこの場の誰かが当人へ密告したとしても、その時はその時ですがね」


 続いてローブの男も。


「どっちにしたって、アイツはちょっとでも気に食わないことがあると誰彼構わず当たり散らすんだ。なら、変に気を使ったって意味ないじゃん」


 そして、最後に『4番』の少年がそう締め括る。


 三魔人は何事もないようにさらりと言い切る。

 仕切り役の『2番』の女も、とりわけ三人の言動を諌める様子は無い。


「キャハハ♪ シナットの部下にも、キミらみたいな面白いのがちゃんといたんだね」


 身の程知らずの馬鹿は嫌いだが、身の程を知り尚もふてぶてしい態度をとる馬鹿は、戦は嫌いじゃなかった。


 ちなみにだが、戦はもう自分の特異体質について、彼等にあらまし話してある。


『それでは、戦殿は魔力を無力化する体質をお持ちということなのでしょうか?』


『そ♪』


『うわぁ、反則じゃん、それ」


『一概にそうとも限りませんよ。確かに、魔術系統に対する防御は完璧かもしれませんがね』


『そうだな。自分自身も魔力領域に干渉できなくなるとなれば、攻撃手段に大幅な制限がかかる。それを考えれば五分五分か……いや、魔力による回復も防壁も肉体強化もできないのだから、総合的に見ればマイナスかもしれないな』


 皆驚いたものの、戦の言葉に疑問を挟む余地はない、と判断した様子であった。もっと言えば、初対面であるはずの(にんげん)の言葉を、魔物(モンスター)を統括する魔人達はすんなり受け入れたのだ。

 とかく彼等は熟知しているのだろう。己自身も強者がゆえに。圧倒的に自分達よりも格上である戦が、わざわざそんな嘘を格下相手につく必要はない、ということを。


「ーーでも不思議だよね」


 頬杖をついたまま、戦はぼんやり虚空を見つめる。


「なんで『シナット』には、僕のこの体質が効かなかったんだろ?」


「簡単な話です」


 とはローブの男。


「おそらくシナット様は、魔力ではなく『神力』を使って、あなたをこの地まで運んだのでしょう」


 またもや(ふち)なし眼鏡をクイッと持ち上げ、彼は解説を始めた。

 存外、邪神の眷属達はお喋りが嫌いではないらしい(一部の例外もいるが)。


「我々は、シナット様から譲り受けた『力』を魔力を用いて行使しますが、シナット様ご自身はこの限りではありませんからね」


「そっか、やっぱ神様は違うってことだね。ーーところで眼鏡ローブ君」


 自分から振った話をあっさりと切り上げ、戦は次の話題に入ろうとする。

 ローブの男はどこか不本意そうに眉を顰めた。


「……一応お訊ねしますが、その『眼鏡ローブ』というのは私のことですか?」


「キミ以外に、眼鏡かけた奴もローブ着た奴もここに居ないでしょ」


 間髪入れずに戦がそう返すと、


「ププ。それ言えてる」


 マントの少年はニヤニヤしながら口に手を当てる。その幼さを残した顔には、「他人の不幸は蜜の味」というコメントが貼り付いていた。

 それを見て、ローブの男はさらに眉間にしわを寄せた。隣では鎧の男がやれやれと首を振っている。


 一つため息をついて、ローブの男は静かに戦を見据えた。


「戦殿。私は『シザーフェン』と申します。できればそちらで呼んではいただけませんか?」


「「!」」「……」


 ローブの男ーーシザーフェンが己の名を名乗った途端、『4番』の少年と鎧の男が、ギョッとした気配を匂わせた。『2番』の女も、相も変わらず静観している風を装ってはいたが、一瞬だけ彼女が僅かに唇を開いたのを戦は見逃さなかった。


「オーケー♪ 微妙に長いから『シザー』って呼ばせてもらうね」


「どうぞ、お好きに」


 だが、戦も、そしてシザーフェンも……それらの反応を気にも留めず、何事もないように会話を継続する。


「ちょっとちょっと!」


 たまらずといった様子で声を上げたのは、『4番』の少年。


「なに自分から名乗っちゃってるわけ⁉︎ 血迷っちゃったの、お前っ⁉︎」


「気は確かか?」


 鎧の男も、『4番』の少年の意見を支持するようにシザーフェンを糾弾する。

 血相を変えて横槍を入れてきた二人に、戦はちょっとした非難の目を向ける。


無粋(ぶすい)だな〜、キミらは」


「ええ。まったくですね」


 戦に同じく、シザーフェンは少々不快そうに眼鏡に手を当てる。


必要(ひつよう)だと思ったので自ら名を告げたーーただそれだけのことですよ」


「キャハハハ♪ そりゃあ、あんな変なアダ名が出回りそうになったら本名も名乗りたくなるよね」


 と言いつつ、戦は察していた。シザーフェンを除く他三名の反応を見て。今行われた『名乗り』は、決して軽いものではないことを……


「シザー」


 一変(いっぺん)して。

 戦は頬杖を解き、姿勢を整え、彼に(こた)える。


「花村戦の名に()けて、キミが僕を害さない限り、僕はキミに危害を加えない」


 突然、だがそれが当然のように、戦は凛とした声で宣言した。

 シザーフェンは裏表のない微笑をもらす。


「しかと心に(きざ)ませていただきます、戦様(せんさま)


 契約を正しく理解し、受け取った、新たなる“主人”にーーシザーフェンは丁寧に会釈をする。


「そういえば、先ほど何か私に()こうとしていたようでしたが」


「あぁ! そうそう、それなんだけど!」


 また一変して。

 戦は興奮しながら、子供のように目を輝かせて、言う。


「シザーたちってさ、やっぱものすごい魔物の軍隊(ぐんたい)とか持ってたりするの?」


 それはある意味、頭に超がつく戦争愛好者である戦にとって、極めて(もっと)もな質問(こうきしん)であった。





「ん〜〜、それだと軍隊っていうよりも、イイとこ部隊って感じかなぁ」


()えてどちらかと問われれば、そうなりますかね」


 シザーフェンは苦笑まじりに相槌を打つ。その視線の先には、彼の新しい主人(じょうし)こと花村戦の姿があった。

 戦はだらんとテーブルに突っ伏し、つまらない、という心情を五体で表現する。


「そりゃあ、無駄に多けりゃいいってもんでもないんだけどねぇ」


 シザーフェンの話では、彼ら『統括管理者』たちは確かに各々が自分と相性の良い系統の魔物(モンスター)を使役し、自らの配下として使っているーーが、その数はお世辞にも多いとは言えなかった……


『これは私個人の話になりますが。自分専用の小間使いの信徒やその部下等を除いた、単にモンスター限定となりますと、ざっと数えて二十体前後といったところでしょうか』


『え、それだけ?』


『はい。私は“バイパー種”が比較的に(ぎょ)(やす)いので、その系統で災害級(ディザスター)を四体、準災害級を六体ほど使役しています。残りは脅威ランクもまちまちで、そのままだと大した戦力にもなりませんがね。まあ、こちらで手を加えれば、それなりに有用な兵になる魔物たちです』


 とのことだ。


 ついでながら、争いの神の信徒達はみな例外なく、自分達のことを魔物(モンスター)ではなく魔族、魔人種(ディーモン)と認知し、これを疑っていない。自他共に認める争いの民一の知識人であるシザーフェンも、ご多分に漏れず同じ見解だ。

 ただそれは、誇りや(こだわ)りがある、といった気位の高さに起因するものではない。単純に彼等は知らないのだ、自分達が人種(ヒューマン)からモンスター化したーー通称“外魔(がいま)”という魔物であることを。



「なんだか思ってたのと違くて、ちょっとつまんない」


 今度はハッキリと言葉にして、戦はテーブルの上に(あご)を乗せ、口を尖らせる。


 少し控えめな姿勢で、シザーフェンは発言した。


「失礼ながら戦様ーー」


「分かってる。(かず)の暴力より、()の戦力ってことでしょ?」


 シザーフェンの口上を遮り、戦は続ける。


「まぁぶっちゃけ、(アリ)(ハエ)が何万匹いたって、一頭の(トラ)には敵わないからね」


「仰るとおりでございます」


 シザーフェンが満足そうに頷く。その見解で文句はない、という顔だ。


「災害級のモンスターは個々で大国の軍隊に匹敵する力を有しております。ですので、仮に私の使役する四体を同時に()(はな)った場合ーー」


「余裕で国を()とせるってわけね」


 言って戦は苦笑する。


「それどころか、いい感じに進めばそのまま世界も蹂躙できるかも。しかもそれが一個師団のみの戦力ってことになると、相手(ヒトガタ)にとっては悪夢みたいな戦況だね」


「左様でございます」


「「……」」


 楽しげに会話を続ける戦とシザーフェンとは対照的に、『4番』の少年と鎧の男は、憮然とした態度であからさまな不愉快オーラを垂れ流している。

 そして、『2番』の女は徹底して静観の姿勢を貫いていた。

 ただ、戦はこういった空気には()れているので気にも留めないが。


「オーケー。確かにそれだけの戦力があるんなら、ソレは立派な魔物の軍隊として成立してる」


「ご理解いただきありがとうございます、戦様」


「で・も・さーー」


 ゆっくりと身を起こし、椅子の背もたれに体を預け、天井を見上げながら、戦はその話の矛盾を指摘した。


「そんな圧倒的な戦力があるのに、なんでキミらはすぐ人類を叩かないわけ?」


 瞬間、部屋の空気の質が沈黙を予感させるものへと変わる。気まずいとも重苦しいともいうが。

 まあ、戦がそんな事を気にするわけもないが。


「別に人と人との戦争ってわけでもないんだからさ、毛ほども遠慮とかいらないんじゃないの?」


「それは、ですね……」


「「「……」」」


 シザーフェンは言葉を詰まらせる。

 他の三魔人も、無言のままではあるが、彼と似たように対応に困っている様子だ。

 明らかに「触れられたくないところを触れらた」という反応である。


「ふ〜ん。そういうことね」


 戦は含みのある視線をシザーフェンに向ける。


「人の方はともかく、ソレやっちゃうとキミらの方で色々と不都合が起こるんだね」


「……流石のご慧眼ですね」


 遠回しな肯定の言葉は、彼なりのせめてもの回答だったのだろう。

 戦は屈託のない笑みを浮かべた。


「ありがとう、シザー。キミの話はとっても面白かったよ。キャハハハハ♪」


「い、いえ」


 シザーフェンは動揺を隠すようにぎこちない仕草で眼鏡を持ち上げた。戦があっさり()()がったのに驚いたようだ。

 そんな新しくできた部下の反応を愉快気に眺めながら、戦が実に軽いノリで言葉を紡ぐ。


「そうだ。お返しに今度は、僕がキミたちの質問に答えてあげるよ」


「っ! よろしいのですか⁉︎」


 嬉々として、シザーフェンの声は興奮一色に変わった。その見た目からも想像できるように、おそらく彼は知識欲が非常に強いのだろう。


「うん。なんでも聞いて」


「〜〜‼︎」


 ならば、戦の申し出はこの上ないご褒美に違いない。


「ねぇ、戦。『キミたち』ってことはさ、ボクや『5番』や『2番』も参加していいんだよね?」


 久方ぶりに口を開き、ぬけぬけとそんなセリフを吐いたのはーー『4番』の少年。自分達は先ほどまで、ずっと黙秘を続けていたというのに。


「もちろん♪」


 だがしかし、戦はそれを全て許す心で。

 慈愛に満ちた目と、にこやかな微笑みを浮かべ……とても柔らかな物腰でシザーフェン以外の統括管理者達に告げた。


「僕は優しいから、キミらみたいな場の空気を(にご)すだけの(ぎゃく)空気清浄機にも等しく平等だよ。まったく僕に利益を提供できなかった、まるで役立たずなキミらだけど、気にせず厚かましく質問してね♪」


「…………」


 戦にウインクされた『4番』の少年は、これでもかと顔を引きつらせていた。

 ちなみにだが、この世界にも『空気清浄機』は存在した。だからという訳でもないだろうが、シザーフェンは肩を震わせながら口元を抑えてそっぽを向いている。このリアクションはガチで笑いを堪えているやつだ。


「ーーあ、でも、質問は一人につき一つね? 僕、もう眠いからさ」


 あくまでもマイペースで、欠伸をしながらそう言う。


 かくして、花村戦への質問タイムが始まった。


「……最初は俺からか」


 鎧姿の男性ーー『5番』の男が、少々不機嫌そうなに腕を組む。

 ちなみに戦に質問をする順番は、『5番』の男、『4番』の少年、シザーフェン(本人の希望により)、そして最後は『2番』の女と決まった。


「では、単刀直入に聞こう」


 堂々とした風格を漂わせ、『5番』の男は言う。


「戦殿。貴殿は一体何者なのだ?」


異世界人(いせかいじん)。はい、次の人」


「お、おい!」


 思わずといった様子で、『5番』の男が椅子から立ち上がる。


「ろくな説明もせずに終わらせる気か⁉︎」


 戦のカミングアウトもさることながら、それ以上に、彼のあまりに完結的で矢継ぎ早な応答に物申したい模様だ。

 見ると、他の魔人たちも一様に唖然としている。

 だが。


「なに? キミの質問にはちゃんと答えたでしょ?」


 とだけ言って。戦はもう興味無しとばかりに鎧男(ごばん)に一瞥すらしなかった。


「いかにもそれっぽい質問だったけどさ、僕から言わせればその質問は赤点」


「あ、赤点?」


「そ」


 ただ虚空だけを見つめたまま、戦は言う。


回答者(こっち)が不特定多数の『答え』を用意できる問いとか、はっきり言って下の下」


「なにっ」


「だってそうでしょ? もし僕が『シナットに雇われた傭兵』って答えてたら、キミは『そんな事もう知ってるよ』ってなるよね?」


「むぅ……」


 戦の指摘に、『5番』の男は二の句を継げなくなる。


「言っとくけど、今の僕の回答(いせかいじん)はサービスなんだよ? 僕がその気なら、適当なこと言って幾らでもはぐらかす事ができたんだからさ」


「確かに」


 これはシザーフェン。

 彼の相槌から一拍置き、『5番』の男は若干なにか言いたそうな素振りを見せたものの、結局断念したのか、無言のまま着席した。


「あ、あのさ、戦」


 発言(しつもん)権が移った途端、『4番』の少年が見るからにウズウズした表情を戦に向ける。


「戦のいた世界ってさ、一体どんなとこなの?」


「……それがキミの『質問』でイイのかい?」


 戦は至極つまらなそうに訊き返す。今のやり取り聞いてなかったの? とでも言いたげに。

 正直、質問自体は悪くはない。だがその内容がお粗末。要は()(かた)の問題なのだ。

 最初の質問者である『5番』の男もそうだが、質問の内容が大味、つまり(ざつ)過ぎる。親しい者同士ならそれでもいいだろうが。生憎と戦と彼らは違う。前もってシザーフェンのように信頼に足る情報の提供、誠意を見せていれば話も変わるかもしれないが。結局、自分が保有する軍事力を素直に公表したのはシザーフェンのみ。

 となれば、戦が他三名の統括管理者たちに親切にしてやる筋合いはない。


 ましてや、戦はそういった事にこだわる(根に持つとも言うが)タイプの人間だ。


 ……少しは頭を(ヒネ)れって……


 と。

 戦が内心嘆息していると、『4番』の少年がビックリマークを頭から出し、ガバッと身を乗り出す。


「ええーーッ‼︎ それも質問に入っちゃうわけ⁉︎」


「「当然でしょ(う)」」


 まるで感情のこもってない声をハモらせたのは、戦とシザーフェン。その二人のツッコミは、「心から呆れた」と暗に示唆していた。


「ブー、じゃあもういいよ、そっちは」


 ふくれっ面でぶーたれながら、『4番』の少年は不機嫌そうに違う質問を考え始める。

 そしてーーー


「戦はあの暴君のことシナット様に聞いたって言ってたけど、じゃあさじゃあさ! アイツが急に表に出てきた理由も、シナット様から聞いてたりするわけ?」


 という『4番』の少年の問いかけに、


「はい、X(バツ)


 戦はすかさずダメ出しをする。


「はぁ〜⁉︎ バツってどういう意味だよ、それ!」


「まったく、あなたは本当にダメダメですね」


 戦に食ってかかる少年(よんばん)に、シザーフェンが(かい)を与えた。


「それだと、戦様からイエスかノーの回答しか得られませんよ」


「ピンポーン」


 だらけきった口調で、戦が言った。


「キミの今の質問の仕方じゃ、回答者である僕から理由を『聞いてる』か『聞いてない』かしか引き出せない。でもキミは理由そのものが知りたいんでしょ? だったら、ああいうワーディングじゃバツってこと。意味わかった?」


「ぐっ」


「でもまあ、特別に答えてあげるよ。多分それについてはシザーも聞きたいだろうし」


「ありがとうございます」


 シザーフェンは礼の言葉と共に頷く。その通りのようだ。


「まず、聞いてるかどうかの答えはイエス」


 不要な前置きは挟まず、戦はすぐさま本題に入った。

 絶対的な静寂が部屋を支配する。

 戦の声音は異様な迫力を帯びていた。


「でね、その理由(わけ)についてだけどーー」


 魔人たちが固唾を呑んで見守る中。

 静かに、それでいてどこか嬉しげに……戦はこう告げた。


「もう一人いるんだよ、シナットや他の神さまたちがこっちの世界に招いた、僕と同郷の異世界人がね」


「「‼︎」」


 場の空気が色めき立つ。


「ここまで言えば、キミたちでも分かるよね?」


 その言葉通り、四魔人は瞬時に悟ったのだろうーー戦が伝えたその異世界人こそが、シナットが白闇を地上に解き放った、事情(じじょう)そのものなのだと。


 そして三人目の質問者ーーシザーフェンが、重々しく口を開いた。


「戦様……よろしければその異世界人について、詳しくお聞かせ願いたいのですが」


「いいよ♪」


 よくぞ聞いてくれたとばかりに生き生きと顔を輝かせ、戦は大きく頷いた。


「彼の名前は花村天(はなむらてん)。僕の最愛の息子(むすこ)だよ♪」


 得意気に胸を張り。さも魔人達に自慢するように。


 戦はかの者の名を口にした。


 

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