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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

血塗れの家族

作者: キタロー

※この物語はフィクションです。登場する人物、団体は実物とは一切関係ありません。

※この物語は残酷な表現が含まれています。






家の中に充満するくさい臭い。原因は酒だ。

父さんが家にいるときはいつも臭くなる。毎晩酒を浴びるように呑むからだ。

そのあとは決まって暴れだす。いわゆる“家庭内暴力”ってやつ。

今日は父さんがテーブルを殴って穴を開けた。母さんにも殴った。僕は泣きながら見ていた。何もできない自分の無力さを呪った。



暴れ終えた父さんは、大きないびきをかきながら居間で大の字で寝ている。

深夜の悪夢が去って、取り残された僕と母さんは、寝ている父さんが起きないように静かに居間をあとにする。

母さんは僕に「ごめんな……ごめんな、涼」と泣いて謝る。

こんな男と結婚して、僕を産んで不幸にしている。そういう意味だと理解した。



夜が明けた。母さんは静かに横になってたが一睡もしていないだろう。

顔面に痛々しいアザができても仕事に行く。転んでしまったとか、辛くて苦しい言い訳をするんだろう……。僕を養うために。

僕も2時間しか寝ていない。このまま全てを投げ出したくなるが、学校へ行く支度を済ませ機械的に通う。






学校…。勉強をする場所。

だとしたら何故僕は上履きを履いただけで怪我をするんだろう?

ああ、またあいつらか…。こんなくだらない事をするのは。

教室に入ると何人かのクラスメイトが僕を見て笑う。

さっき靴に仕込まれた画鋲を踏みつけてしまったから、歩くのがぎこちない。

「ハハハハ!あいつ歩き方きめぇ!画鋲でも踏んだのかよ!」

朝から盛大に手を叩き、僕を嘲笑うこいつの名は渡辺弘晃。

窓際の後ろの席でいつも固まっているあいつらが犯人。

リーダー格の渡辺弘晃。一人の時はおとなしい佐々木翔。デブの高橋誠也。

三人が僕を指差して笑う。大きな声で、バカ面で嘲笑う。



授業中に僕の周囲がクスクスと小さく笑う。

僕は後ろの席の高橋から消しゴムのカスを投げられている。画鋲より全然痛くないのに痛い。

「こらそこ!遊んでるんじゃないだろうな?」

数学の教師がそう言うと、みんな黒板をノートに写して勉強しているとアピールする。

さっきのように大きな声で笑えば良いのに。と、僕は思った。



僕は小学校時代から元々友達が少なかった。中学に入ってからは、同級生の渡辺、佐々木、高橋にイジメられるようになり、それまで仲良くしていた数少ない友達は僕から離れていった。

イジメの内容は陰口から言葉の暴力、そして肉体への暴力に変わっていった。

時には肉体的な苦痛よりも精神的な苦痛のほうが耐え難い。

酷いものでは弁当にゴミや虫を入れられたりもした。






昼食の時間。僕はいつもトイレの個室で弁当を食べる。

哀しくはない。ここは僕が独りになれる場所だから。

この学校生活で唯一、気を抜くことができる貴重な時間と空間。

僕はほっとする。今日は弁当にゴミも虫も入っていない。

今日は酷く疲れてる。午後の授業は体育だ。僕は仮眠をとることにした。



体育の授業。もう慣れた事だけど、ここでも嫌な事はある。

組体操の時は好きな者同士、二人一組でするのだが、男は奇数の人数だから僕は避けられ、必然的に孤立してしまう。

そんな余り者の僕には先生が組んでくれる。でもこの時ばかりは、クラス全員が僕を仲間外れにしているような気になってしまう。

周囲からはまたクスクスと笑い声が聴こえた。



体育の授業はサッカーだ。

朝に画鋲を踏んだ足がまだ痛む。端っこの方で参加してるふりをすればいいだろう。

どうせ積極的に攻撃参加したところで僕にはパスが来ないだろう…。



チーム割が終わった。僕は佐々木と高橋がいるチームになった。

佐々木と高橋が僕に詰め寄ってきた。

高橋「お前、本気で走れよ!」

佐々木「負けたらお前のせいだから罰ゲームね」

僕の足の事を覚えてて本気で走れか。いつもテストで悪い点数をとるクセに他人の事は覚えている。

それだけ僕をイジメるのに必死ってことか。

高橋「おい!聞いてんのかこのクソ野郎!」

口と足が同時に、それはどちらも僕に向かってきた。

「うっ!痛っ……」

弁慶の泣き所を蹴られた。僕は脛を押さえてうずくまる。痛い…。

高橋「おいコラ!返事はどうした?」

僕の後頭部に重い何かが置かれた感触。高橋の足だ。

次第に高橋は僕の後頭部を踏みつける足に体重を乗せてきた。

高橋の重い足に僕の首は力負けして、土下座のような格好になってしまった。

佐々木「あっははははは!!超ダセェ~」

「今はその辺にしとけ。見つかったらめんどくせぇ」

渡辺の声がした。

高橋は舌打ちとともに一旦踏みつけてから足を退かした。



ホイッスルが鳴り響いて試合が始まった。

僕はサッカーは得意ではない。なのに僕のポジションはフォワードだ。

佐々木が決定したこと。反論はできなかった…。



僕の当初の予想はハズレた。予想とは真逆に、パスが多く来るからだ。

フォワードだからボールは自然に集まるけれど、逆におかしい。

何故なら僕はいつも仲間外れにされるからだ。

特に佐々木と高橋からのパスはスルーパスばかりだ。

そうか、わざと長いパスを出して僕を走らせてるんだ。

そういえばさっき高橋が本気で走れと言っていたな。

そういうことか……。



足の裏が痛い。真っ白の靴下は血で染まってるだろう。

佐々木「ほーら、お前は点取り屋なんだから走れってんだ!!」

佐々木からのロングボール。僕の頭上を越えてボールは転がっていく。

ボールを追いかけ僕も走る。足が痛むけど、ここでボールを追わなかったら後でもっと痛い目に遭う。

(よし、追い付いた!)

ボールは目の前だ。あと少しでボールに触れる距離。

僕は歩幅を調整し、シュートのモーションを構える。

右足を振り抜こうとした瞬間だった。

僕は何故か勢いよくそのままグラウンドに倒れこんだ。

「へ、撃たせるわけねーだろ!おめぇには楽しい罰ゲームをやってもらうんだからな!」

渡辺だった。

すかさずホイッスルが鳴り、先生が駆け寄ってくる。

「大丈夫か小林!?うわ酷い擦り傷だな、保健室行ってこい」

見ると両膝の皮が擦り剥けていて、血と土で傷口は赤黒い。おまけに肘も擦り剥いていた。

「おい、保健委員は小林に付き添ってやれ」

「いえ、大丈夫です…。一人で行けますから…」

そう言って僕は立ち上がる。膝が熱くて痛い。

「そうか?無理するなよ。おい渡辺!後ろからのスライディングは危険だろ!」

渡辺「ごめんな小林!俺、お前止めるのに必死でさ、ついやっちまったんだ!ほんとゴメンな」

渡辺が両手を合わせて僕に頭を下げる。

そして顔を上げた渡辺は一瞬ニヤリと、僕に微笑んだ。



保健室で治療を終えてグラウンドに戻ったら試合は終わっていた。

6対2で渡辺のチームが勝った。

体育の授業が終え、教室に戻る僕の前にあの三人が立ちふさがった。

高橋「はい、約束通り罰ゲームな!放課後、校舎裏の倉庫に絶対来いよ」

約束なんてお前らが勝手に決めたことなのに、どうして僕だけがこんな目に……。

佐々木「あっ、バックレたら俺ら3人に5万円ね。つまり15万の罰金ヨロシク!」

渡辺「まっ、そういうことだよ小林クン!15万なんて大金持ってないだろ?だったらここは素直に校舎裏の倉庫に来た方が賢いよ?ハハハハ!!」

何かを企むように不敵に笑いながら渡辺はそう言い放った。






放課後……。

僕は今から理不尽な罰ゲームをやらされる。何をされるかわからない恐怖。

逃げたら罰金15万。そんな大金僕には払えない。

言いなりになるしかない。これがイジメられる者の末路だ。



校舎裏の倉庫に着いた。それぞれの運動部の大きな声がこだまする。

周囲には案の定、生徒も職員もいない。この学校の敷地内で一番人の出入りが少ないところ。

言い替えれば一番“イジメる場所にうってつけ”のところ。

不安と恐怖が僕を支配する。それでもこの扉を開けようとするのは強迫観念だろうか。

震える手でドアノブを捻る。扉は防火扉のように重く、力みながらゆっくり開けた。

およそ十畳程の倉庫内には運動会のような大きな行事に使われる道具などが仕舞ってあった。

そして、四人の人間がいた。

渡辺。佐々木。高橋。あと一人は女子生徒だった。

僕らと同じクラスの佐藤美貴。この三人とはよくつるんでいて、時折イジメに参加する。

渡辺「お、ちゃんと来た!感心感心♪」

美貴「ちょっと早く済ませなさいよ!ここ埃っぽいんだから」

佐々木「まあまあ落ち着けって。今から罰ゲームを発表するからさ」

高橋「そうそう!面白い罰ゲームを……なっ!」

高橋は扉の前に立つ僕の首根っこを掴んで突き飛ばし、立ち替わりに扉をとおせんぼする。僕は部屋の中央に雪崩れ込むように倒れた。

「ば、罰ゲームって…何をするのさ!?」

それにしても佐藤さんまで呼び出して一体これから僕に何をさせる気なのか…。

僕は渡辺の言葉に自分の耳を疑った。どうか僕の聞き間違いであって欲しいと願った。






渡辺「だから、お前にはこれから皆の前で公開オ○ニーをしてもらう。それが罰ゲームだ!」

笑う。佐々木や高橋はもちろん、佐藤さんまで笑ってる。

言葉の意味を理解し、みんな笑ってる。

高橋「終わるまで帰さねーから。それとも力ずくで逃げてみるか?ぜってー無理だけど!あはははは」

扉の前には高橋がいる。力ずくでって言ったって返り討ちにあうだけだ!もう逃げられない!

佐藤「ねぇ、さっさとしてくんない?つーかまぢキモいんだけど」

渡辺「そうだな。時間がもったいねーから俺らも手伝ってやるよ」

そう言うと渡辺と佐々木が僕の前に近寄ってきた。僕は怯んで腕で顔を覆った。

佐々木「そーらよ」

佐々木が馬乗りになって僕のベルトを外し、渡辺が力いっぱいズボンを引っ張りあげた。

「や、やめて…」

ずるりと勢いよくズボンを脱がせられ、下半身は薄い布切れ一枚になってしまった。

佐藤「あははは♪そのまま全部脱がせれば!?」

渡辺「そうだな。よし、そのまま押さえつけてろ」

佐々木「クソ、手を離せ!ぶん殴るぞ!」

直後、顔面に衝撃が走った。僕は本当に殴られた。

たまらず手で頬をおさえる。その刹那、下半身の薄い布を剥ぎ取られた。

高橋「わっははははは!おもしれーーっ!」

指差して笑う高橋が引き金となって、僕以外の人間が笑う。これ以上ないほど侮辱する。

渡辺「さぁ、罰ゲームのショーはこれからだ!」

佐々木「そうだ!早く見せてくれよ!お前のオ○ニーをよ!」

佐藤「アンタらマジで鬼畜ね!けど超笑える!」

(おかしいよ…)

渡辺「おい、さっきからみんな楽しみに待ってるんだけど。早くしてくれない?」

(狂ってる…)

高橋「中学生にもなってシコり方がわかんねぇわけじゃねーよな?」

(こいつらは狂っている!)

佐々木「なぁ、こいつまだ勃ってねーよ」

(人の姿をした悪魔だッ!!)

渡辺「はは。まぁ、無理もねーか。おい美貴、オカズを提供してやれよ」

(僕はもう我慢することないだろ?)

美貴「ハァ!?なんでアタシが!!」

僕は怒りが込み上げてきた。

渡辺「頼むよ、今度メシ奢るからさ!」

だいたい罰ゲームって何だよ!

美貴「まさかアンタら、この為にアタシを呼んだんじゃないでしょうね!?」

(×したい…)

佐々木「まぁ、それもあるけど、一緒におもしれーの見たいじゃん?」

(全員ぶっ×したい…)

高橋「そうそう!だからお願い!」

僕は震えている。

美貴「しょうがないわね…今回だけだからね。で、アタシは何すればいいワケ?」

震えるのは怖いからじゃない…。

渡辺「そうだな…。俺らが手足を押さえてるから、美貴はこいつのチ○コを刺激してやってくれ」

溜まっていた怒りが爆発する。

美貴「ハァ!?そんな汚いもの触るわけないでしょ!」

(全員ぶっ殺してやるッ!!)

渡辺「いや、そのまま靴で軽く踏んでやるだけでいい」

僕は握りこぶしを作って立ち上がった…。

美貴「キモ!そんなんで反応するんだ。やっぱ童貞キモ」

「うわぁあああああああああッッ!!!」

僕は渡辺を目掛けて走る。仕切っている渡辺さえやっつけることができたのなら、終わらせることができるかも知れない。

せめて学校生活だけは誰にも邪魔されずに生活したい。この理不尽で苦痛なイジメに終止符を打つ……。

僕は全ての力を込め、渡辺の顔面をめがけて殴った。



「ぐっ、…うぅ…」

僕は床に膝をついている。お腹が痛い。

勝てなかった…。僕の平穏な学生生活は叶わなかった…。

渡辺「ザコの分際で俺に勝てると思ったのか?」

カウンターだった。渡辺は僕のパンチが当たる時、寸のところでかわしてボディブローを放った。

佐々木「バカだなお前。ヒロは俺と誠也が二人でかかっても勝てやしないほど強ぇんだよ」

高橋「さっさと抜いてりゃあいいものを」

渡辺「あーあ。興が冷めてきた。あと30分以内に抜けなかったらボコるから」

冗談じゃない!こんな痛いのが何度も続くのか!?

佐々木「はい、じゃあスタート!今ちょうど5時30分ね」






僕は目をつむり、自分のソレを上下に反復運動させている。

何故目をつむるのか?恥ずかしさに耐えられないからだ。

皆の笑い声が聞こえる。携帯電話のシャッター音も聞こえる。動画も撮っているんだろう。それでも僕はオ○ニーをする。

この状況下ではやはり勃起しない。時間はあとどれくらい残っているだろう……。

渡辺「今何分だ?」

佐々木「45分」

高橋「ここまできたら殴るより射精まで見たいでしょ!」

渡辺「だな。美貴、さっき言った通りにしてくれ」

佐藤「仕方ないわねぇ…」

先っぽに少しひんやりした感触が当たった。佐藤さんの靴だ!

佐藤「ちょっと手退いて」

「え?」

佐藤「手退かせって言ってんの!」

僕は佐藤さんに言われるままにした。

そして、痛くない力加減で僕の性器をこねる。

他人に触れられるとこんなにも違うのか…、と思いながら僕は目を開け佐藤さんを見た。

仰向けになっている僕。片足を上げ僕を見下ろし、アレを足で触る佐藤さん。

覗くつもりはなかったが、佐藤さんの赤いパンツが見えた。

でも今はそれを利用しなければ僕の身が危ない。僕はバレないように視線を泳がせながら佐藤さんのパンツを視界に収めた。



ようやく僕のソレが反りたった。僕は強く握り、再び反復運動を開始する。

周囲の罵倒する声や笑い声は無視する。気が散ったらもう終わりだ。

僕は脳裏に焼き付けた佐藤さんの赤いパンツの中身を必死に想像した。

脳の信号が届き、衝動が込み上げてきた。

「はぁ…はぁ…くっ、うっ!、うっ!……はぁ…はぁ…はぁ」

果たした。白濁の液は勢いよく宙を飛んだ。

罰ゲームはこれで終わりだろうか?

罵倒する声すらも、もう僕に届かない。今は何もかもがどうでもいい。

天井一点だけを見つめ、しばし放心する。

我に返ったあと僕は独り泣いた。






放心状態からの帰宅途中、家に近付くにつれて、ある種の緊張と不安がよぎる。

あれから長い時間が経っているから父さんの酔いは醒めてるだろうか…。

それとも起きてからまた酒を煽っているのか…。

恐る恐るドアノブを握り玄関を開ける…。

鼻を突くあの嫌な臭い。玄関まで聴こえてくるやけに高いTVの音量。

一日中閉めきっていたなら臭いは残るはずだからまだ父さんの状態はわからない……。

僕は居間へと足を運ぶ。

そこかしこにビールの空き缶や一升瓶が転がっている。テレビの前の座布団の上に父さんはいた。

穴が開いたテーブルには酒が置いてある。

「おう…」

期待は裏切られ、絶望に変わった。

今、僕はどんな顔をしているだろう?

また今晩も暴れるのだろうか?

もう、考えるのも疲れた……。

「なんだテメェ、親にただいまも言えねえのか?」

僕を睨み付け怒鳴る。

また今晩も絶望を繰り返すのか…。もう僕には話す気力も残ってない。

「この野郎!殺すぞ!」

前蹴りが飛んできた。咄嗟にガードしたため急所は免れたが、そのまま壁に叩きつけられた。

酒に酔ってる分加減はできないらしい。

「テメェ、なんだその目は?こんのクソガキ!!」

僕は今どんな目をしてるのだろう?

頭に血が昇った父さんは台所から包丁を持ってきた。

「殺すぞ!!クソガキャ!!」

僕の胸ぐらを掴み、首に包丁を突き立てて脅す。

もういいよ…。殺してくれるならそれで終われる。僕はもう生きるのに疲れたんだ…。

「ちょっと何やってんのッ!?」

母さんが帰ってきた。

母さんが僕らの間に割って止めに入る。

「うるせゴラァッ!邪魔だ!!」



「あ……、うわぁあああああああ」

誰の声だろう?僕かも知れない。

だって、か、母さんが、赤く染まっていく……、刺されたから!!!

「か、母さんッ!?大丈夫か!?母さんッッ!!!」

「り…涼……、にげ……て……」

僕は倒れ込んだ母さんにすがり付き、叫んだ。

「うるせぇこの野郎!!めんどくせぇ、テメェら皆殺しだ!!」

右こぶしで殴られた。僕はまた吹っ飛ばされて尻餅をつく。

父さんは母さんの腹部にまだ刺さってある包丁を抜き、さらに振りかざした。一回、二回………。

「ヤッ、ヤメロォォォォォォッッ!!!」

僕は目の前に転がる大きな瓶を手に、思いっきり……思いっきり父さんの頭をめがけてカチ割った。

花火のように、瓶は光らない花を咲かせた。

父さんのこめかみは鮮血で真っ赤に染まってゆく。

「ご…こ、ごの…ヤロォ……」

僕は更なる武器を拾い上げ、また頭を割った。

周囲に落ちていた空き瓶は全て砕け散り、最後は己のこぶしを武器に殴る。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も殴りつける。

無我夢中だった。

目が見開いているとまだ立ち上がってきそうだった。だから目を潰した。

表情がよくわからないけど、父さんは絶命した。






部屋は静かだ。視界に入るのは赤しかない。

血に染まった僕の赤い両手。

血の海の中で動かなくなった赤い母さん。

顔面が破壊され顔の原型がない赤い父さん。



僕は動かなくなった赤い肉塊を見つめ立ち尽くしている。

「終わった…。もう、何もかも…」

眠いよ…疲れたよ…。

意識が途切れる前に、僕は眠れる場所を探した……。






三名の死体が発見されたのは事後から四日経った頃だった。


小林真理奈

凶器に使われた刃渡り二十センチの包丁で腹部を数ヶ所刺される。死因は出血多量および内臓損傷による外傷性ショック死。顔、身体に複数のアザがあり、日常的に暴力を受けていたと思われる。


小林武男

頭部の損傷が激しく、脳が露出した状態で発見される。死因は脳内出血、頭部から顔面におよぶ複数の骨折による出血多量および外傷性ショック死。遺体現場の周辺には割れた硝子片が無数にあり、瓶で殴打された思われる。

耳が裂け落ち、眼球も破裂した状態だった。


小林涼

遺体は最後に発見された。死因は自宅の物置にて首吊り自殺。両手のこぶしに複数の骨折があり、父親を殺害したあと自殺したと思われる。また膝に擦り傷、腹部、背中にアザがある等から、日常的に虐待を受けていた可能性があるとみて警察は捜査を続ける。



【 終 】






この度は最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

短編小説ではありますが、なんとか最後まで書き終えることができました!

実は僕、過去にも小説を書いていました笑

一作目は、主人公がとあるゲームソフトを買ってプレイするんですが、何らかの力で自分がゲーム世界に飛ばされて他プレイヤーと戦うバトルものでした。実際にある作品だとソードアートオンラインみたいな感じでしょうか?

でも当時の僕は気力が尽きてしまいボツに(苦笑)


二作目は恋愛もの!ストーリーは不幸な環境にいるヒロインを主人公が救うという内容です。これも次第に詰まってしまい気力が尽きました。今でも某サイトで眠っていると思います(苦笑)


そして拙いですが、三作目にして最後まで書けたのがこの

『血塗れの家族』です。

恐らく短編小説だから完走できました。いや絶対!

このストーリーは上の二つとは全然脚色が違うものです。でも僕はわりとこういう鬱や狂気などの要素が好きなので書きやすかったです笑

グロい表現は竜騎士さんから、鬱展開は浅井ラボさんを参考にしてます。

今はもう燃え尽きてるので暫くは書きませんが、また意欲が出たら書こうと思いますので、その時はまた是非よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄く読みやすくてよかったです! [気になる点] なんで罰ゲームがオナニーなんですか? [一言] すごくよかったです!
[良い点] 主人公の心情が、文章から伝わってくる。 力でねじ伏せられる弱者からみた世界。 [気になる点] 最後の総括が余計だったと感じます。 あれがなければ、純粋に世界の理不尽さをテーマにした話だと思…
[一言] 僕は、プライバシーを一切なくしてしまうべきだと思う。ザミャーチンというソ連の作家が、『われら』という小説のなかで、家がガラスで建てられ、思想統制が行われた世界を描いたが、民主制のもとで、それ…
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