いつまでもあなたと
『……ちゃん……シオンちゃん……』
リーシャ……。
そうだ、さっきまで私…魔法で目を…。
なんだか頭がふわふわする…。
なんだろ…この感じ…。
--シオン。
声……誰かが私を……。
--幸せになれよ。
あなたは……。
瞼の裏がチカチカする…。
暗かった私の世界は…こんなに明るかったっけ…。
いや……違う。
私の世界は……いつも輝いていて…暖かくて……。
それは……どんな時も…私の傍に……。
「……あれ……わたし…」
「シオンちゃんっ!!」
「リーシャ…」
「うん…うん…そうよ。私よ…リーシャよ」
「リーシャ…泣いてる、の…大丈、夫…?」
椅子から立ち上がろうとした時、ふらつく私をリーシャは抱きしめた。
泣いてるリーシャはとても嬉しそうで、私もつられて涙が溢れた。
「シオンよ」
「リズ、様……ありがとうございます。私、目が…見えるように…なりました…。だけど、目を開けてると…慣れていないせいか…少し酔っちゃったかも…です」
リズ様は私の傍に来ると、私のことを優しく見つめていた。
「おめでとうシオン。そしてようこそ、美しく彩り輝く世界へ」
窓から陽の光が差し込み、私たちを包み込んだ。
---15年後
「母さんただいま!見てみて!さっきお外でお花見つけたの!」
「マリーおかえりなさい、あら、綺麗なシオンの花ね。そっか、もうそんな季節なのね」
「私この(シオン)花の香り大好き!」
「ふふっ、母さんも大好きよ」
目が見えるようになり15年の月日が経った。
私は7年前に結婚し、子供も生まれ、大変なことも沢山あるけれど、充実した日々を過ごしていた。
年に何度かリズ様とお会いすることもあったが、ここしばらくは会ってはいない。
弟子ができたとかで色々とお忙しいらしい。
--2ヶ月後
私は夜、家族が眠りに着くと家を出てと或る花畑へと向かっていた。
20分程歩き花畑へ着くと、ローブを羽織った男性がいるのがわかり、私は声を掛けた。
「こんばんは。あなたもこの花を見に来られたのですか?」
「…………」
男性は黙って顔を横に振る。
少し離れていて顔はよく見えなかったが、男性は少し驚いた様子だった。
「ここ、素敵な場所ですよね。私、この花を見ると何故か凄く落ち着くんです」
「…………」
夜風が吹き月明かりが私たちを照らす。
すると男性の顔がはっきりと見えた。
男性はとても優しそうな目で私を見ていた。
初対面のはずなのに、私はどこか懐かしさを感じた。
「あ、ごめんなさい私ったら…。私の名前はシオンと申します。あなたのお名前をお聞きしてもよろしいですか」
「俺の名前は……アグレ…」
「アグレさん……とっても素敵なお名前ですね。アグレさん、知っていますか?この花の名前は『アングレカム』といって--」
アングレカム。
花言葉は--『いつまでもあなたと一緒』。