ゆいこのトライアングルレッスンU2〜ひろしとたくみはドタバタ研修医〜
わたしは今、体調を崩して病院に来ている。
本当はすごく不安なはずなのに、でも、実はどこか心が踊っている……。
「ゆいこ、具合は大丈夫か?」
「ひろし! うわぁー、めっちゃ白衣似合ってるぅ!!」
「なんだよ、随分と元気じゃないか」
ひろしは、ホッとした表情を見せながら、わたしの額に自分の額をくっつけた。
「へっ……!?」
「よし、熱はそんなにないみたいだな」
もう、何よ!
こんなことされたら、余計に熱が上がるじゃない!
「はいはーい! ゆいこさん、点滴のお時間でーす!!」
白衣をなびかせ、ご機嫌なたくみが病室に入ってきた。
「ゆいこ! ピチピチの研修医の登場だぜ?」
「わーー! たくみの白衣姿もイイ!!」
「ったく、お前ら病室では静かにしろ」
ひろしが呆れている。
「ゆいこ、俺が点滴してやる!」
たくみはそういうと、針を構えた。
たくみの手が、わたしの腕に触れる。
たくみの体温を感じ、ドキドキする。
「痛っ!!」
「うわ、わりぃ。まだ絶賛練習中なもんで……」
「何やってんだ! ゆいこを傷つけてどうする! 俺がやる!」
ひろしは、たくみから取り上げると点滴の針をわたしに刺した。
「凄い! さっすが、ひろし!!」
「これくらい当たり前だ。ゆいこの健康を守るのが、俺の役目だからな」
ひろしはそう言うと、わたしの頭をポンポンした。
「ゆいこ、あまり無理はするなよ? 何かあった時は、いつでも、たくみじゃなくて俺を頼れ」
そう言うと、ひろしはカッコ良く病室を出て行った。
「くっそぉー! ひろしのヤツめー!!」
たくみがムスッとしている。
「やっぱり、二人がいる病院に来てよかった」
「ゆいこ! いいか、ひろしじゃなくて、俺にしとけよ? 俺は今に名医になるからな!」
「何それ」
わたしは笑った。
“クシュン”
「ゆいこ、おい大丈夫か? くしゃみなんかして、もっとあったかい格好しろよ?」
たくみはそう言い、着ていた白衣を脱ぐとわたしにかけ、後ろからそのままギュッと抱きしめた。
「な、何してんのよ……!!」
「こうしたら、あったかいだろ?」
そうかもだけど!!
一気に背中が熱くなるのが分かった。
「やっぱ、弱ってるゆいこは可愛いなぁ」
「もう! それどういう意味よぉ!」
「そういえば、世の中はバレンタインデーらしい」
「ごめんね、今年はチョコ作れなくて……。あとで、売店でチョコ買ってこようかな?」
「いや? 今、ゆいこからあまーいプレゼントもらったから頑張れる!」
「え!?」
「へへっ! 充電完了!」
そう言うと、たくみはいつもの笑顔に戻っていた。
二人はどんなお医者さんになるのだろう?
わたしは一体、本命チョコをどちらに渡すのだろう?
二人のことを考えると、心に針が刺さったみたいに、ちょっとチクリとする。
わたしはまだ、決めかねているようだ。
明日は『ホストたくみはいい波乗ってんね〜!』をお届けします!