プロローグというにはお粗末な始まり
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「どういうことですの!?お兄様!」
そこは南の土地に位置するマロンベール伯爵邸。
「どうって、言った通りだよソフィア」
書斎で大きな執務席に座って苦笑いを浮かべる現伯爵の青年と向かい合う令嬢は兄妹である。
「ホーマルハウト殿下の隣国への留学について行かなければならないんだよ」
「ですが、お兄様が爵位を継いでからまだ2年しか経っていないのですよ!?領民たちもやっと暮らしが安定してきたというこの大切な時期に領主が不在になるなんて…!」
「でも殿下の性格はお前も知っているだろ?」
ソフィアは笑顔で人をこき使うあの王太子を思い出して眉をひそめた。
マロンベール領の状況を知っていながらその領主を留学にお供として連れて行くなんてさすがの暴君である。そしていつものほほんとしている兄がつい言いなりになってしまうのはいつものことだ。
「どのくらいの日数なのですか?」
「早くて5年…」
「…お兄様のことですから、殿下の命に逆らえなかったのは分かりますわ。けれど領主不在の対応はどういたしますの?」
すると、なぜか兄がニコニコとしてソフィアを見た。
「このマロンベール家には優秀な人間がいるからね」
「ま、まさか…お兄様……!?」
「そのまさかだよ。頼むね、ソフィア」
一つ言っておこう。領主というのは一時的な代理を立てることができる。
いや、もう一つ言っておこう。領主の仕事なんてこの世で一番面倒くさいのである。
「僕の代わりに領主やっててもらえる?」
「ぜっっっっっったい嫌ですわ!!!!」