第5話 ようこそ!ベルトへ!
とりあえず危機は去った
トウマを称えたナツメは、倒れている少女に近づき様子をうかがった
見た感じ怪我などはなく、気絶しているだけのようだ
「おい、大丈夫か?しっかりしろ!」
ナツメは少女に声をかけた
少女は軽く声を漏らすと、閉じていた目をそっと開けた
「ん...あれ?私...」
まだ意識がハッキリしていないようだが、しばらくするとハッとした顔になり、勢いよく身体を起こした
そして慌てて辺りを見渡した
ゴブリンの死体を見つけてギョっとしていたが、緊張していた表情に安堵が見えた
「こんなところで何があったんだ?」
ナツメは少女に質問した
「この村に薬草を取りにきていたんです。そしたらゴブリンに見つかって、急いで逃げて茂みに隠れようとしたら躓いてしまって...」
「なるほど、その拍子に頭でも打って気絶したんかな?どこか痛むか?」
「いえ、どこにも痛みはありません!ありがとうございます!」
少女は立ち上がり、ナツメとトウマにお礼を告げた
ブロンドの長い髪がお辞儀に合わせてふわりとなびいた
年はトウマと同じくらいだろうか?トウマは初めての異世界の同世代の異性を見て、少し緊張しているようだ
「てことは、近くに町か村があるのか?」
「はい!といっても少し離れますが、もしよかったらお礼もしたいので寄っていってはいただけませんか?」
少女の申し出に、ナツメは少し考えた
「んー、たしかにそろそろ日が暮れる頃だし、宿屋も探さないとだったからちょうどいいかな?トウマ、もそれでいいか?」
「うん、大丈夫だよ」
ナツメの提案を、トウマは快諾した
「ありがとうございます!えっと、トウマさん?ですね?よろしくお願いします♪」
少女はさりげなく会話を聞いていたようで、トウマの名前を早速読んでいた
不意打ちに名前を呼ばれたトウマは、緊張と焦りで上手く返事を返せなかった
「なにやってんだか...(笑)おっと、俺はナツメだ。君の名は?」
「私はエアリスと申します♪よろしくお願いしますナツメさん♪」
エアリスは笑顔で名前をつげた
エアリスの案内により、無事に街にたどり着いた
「ようこそ!ベルトの街へ♪」
エアリスはまたも無邪気に笑顔でそう言った
彼女の笑顔を見るたびに、トウマはずっとドキドキしていたのはここだけの秘密だ
「案内ありがとうな!じゃうちらは宿屋を探しn...」
「ちょっと!ナツメさん!まずお礼させてください!どうぞわが家へ!」
「えええ!?そんなんいいって!礼を言われるほどのことじゃないし!」
「いえいえ!ちゃんとお礼しなければ!ささ、どうぞこちらへ!!」
やや強引にエアリスはそういうと、トウマの腕をギュっと抱きしめた
そしてグイグイ歩みを進めた
トウマは女の子に抱き着かれた経験なぞ微塵もなかった
そして腕に当たる感触のせいで、軽くパニックを起こしているようだ
引っ張られるまま無抵抗に連れていかれた
「あいつ混乱してやがる(笑)状態異常無効スキル持ってんじゃねーのかよ(笑)」
ナツメはニヤニヤ笑いながら、しょうがないなという顔で後をついていった
「ここが我が家です!どうぞ中へ!」
ベルトの街並みはシュガルディンと似ている
建物の作りも同じ感じで、どの家も2階建てが多い
エアリスの家も例に漏れずそんな感じである。
「「おじゃましまーす」」
ナツメとトウマは、息の合った挨拶をしつつエアリスのお宅にお邪魔した
ドアを開けると、リビングがあった
その奥にキッチンなどがあるようだ。1階部分はその程度で、どうやら部屋は2階にあるようだ
「エアリス?帰ってきたの?」
階段から声が聞こえ、トントン...と誰かが下りてくる足音が聞こえた
「お姉ちゃん!ただいま!」
「おかえりって、お客さん連れ!?ちょっと!先に言ってよ!こんな格好j...ゲホッゴホッ!!」
「ああ!無理しないで!」
急な来客にビックリしたのか、エアリスの姉らしき女性は激しくせき込んだ
「いきなり来てすまんな」
「すみません、お邪魔してます」
織原親子はおどろかせてしまった事を詫びた
姉の席が落ち着いたところを見計らって、エアリスが口を開いた
「実はね、西の森に薬草を取りにいって、そこでゴブリンに遭遇しちゃって...その時にこちらの
二人に助けてもらったの」
「え!?大丈夫だったの!?」
「うん、怪我とかはないよ!」
「ならよかった...」
エアリスの無事を安堵し、そしてナツメとトウマの方に視線を移した
「危ないところをありがとう。私はランカ。エアリスの姉だよ。冒険者をやってるんだけど、今はちょっと休業中」
「なに、お礼を言われるほどでもないさ。俺はナツメだ。そんでこっちは...」
「トウマです。はじめまして」
ランカは二人にそう名乗った
エアリスと同じく、ブロンドのストレートヘアーだが、ランカはショートカットだ
そして現代風に例えると、エアリスはゆるふわカワイイ系なのに対し、ランカはキレイめかっこいい系と言ったところか
冒険者でもあるせいか、サバサバした印象も見受けられた
エアリスに席に案内され、二人は椅子に腰かけた
反対側にランカも座った
「今お茶を入れますね♪」
エアリスはそう告げるとキッチンの方に向かった
「昔両親が魔物にやられちゃってさ、今二人で暮らしててさ。アタシが療養中だから、今はエアリスに頼りきりなんだよ」
ランカは少し笑いながらそう言った
笑ってはいるが、その眼の光は少し暗くなっているようだった
「なるほどなあ...二人だけだと色々大変なんだなあ...」
ナツメは無難な相槌を打った
初対面のため、どう返せばよいのか分からないというのもあったが、それより気になる事があったため、返事も少し上の空になっていた
ナツメの視線は、ランカの首元を見ていた
トウマはその視線に気付き、同じくランカの首元を見た
「(あれ?なんだろ?何かの跡?)」
ランカの首元には、何かに噛まれたような跡があった
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