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軽食についての話し合い(上)

 軽食の作り方についてはレオーニ氏に全部教えてしまった。だいたい秘密の手順があるわけでもなく、シェフなら出来上がりを見れば、少しは苦労するかもしれないが再現できるだろう。


本当に真新しいところはその形なのだ。これにはレオーニ氏も目をむいていたと思う。だがそれは別に俺が考えたものではなく、元の世界から持ち込んだものだ。




 それからビジネスについて話し合う。実は初めから話すべきだったのだが、レオーニ氏がはじめは子どもの面倒を見てやるつもりだったので、そういう話にならなかったのだ。


こちらからはレオーニ氏の名前を使いたいこと、レオーニ氏のレストランでも出してもらいたいこと、監修料とブランドの使用料を払う準備があることなどを申し出る。


「それで、商売について話し合いたいのですが、よろしいですか?」

「おや、ちょっと雰囲気が変わったね」


「はい、それでまず我々としては、監修をいただくのはもちろん、売り出すときに先生の監修であることを宣伝に使いたいと思います。

また先生のレストランでも出してもらえると幸いです。もちろん監修料は金額にもよりますが、お支払いします」


「先生というのはやめてくれ。ガラじゃない。もちろん監修はするし、宣伝に使うのもいい」


「あまり簡単に考えないでください。例えば商品が売れたらうち以外がレオーニさんの名前を勝手に使うかもしれません。その時には差し止めてもらわないといけません。

それどころかもしうちがレオーニさん満足のいく品質で出していなかったら差し止めてご自分の名誉を守った方がいい」


「一気にシビアな話になったね。こちらも心してかからないと」


そうそう、中身は生きた年数だけすれば50男だからね。シンディたち相手には子ども丸出しだけど、それは実は50男でも実はけっこう子どもだからだろう。


けっして俺だけ子どもというわけではないはずだ。だいたい神なんか何億年生きているか知らないが、まるで幼児だぞ……。何か言い訳がましくなってきた。


「名前の使用については独占させてもらうことを条件に使用料をお支払いします」


こちらの社会ではいくらか評判の店や工房などはあるけれど、ブランドの考え方はまだほとんどないから、かなり違和感がありそうだ。


「独占しようというのはどういうこと?」

「これらの商品に他の商人が使いたいと言っても使わせないということです。

もちろんこれらの商品以外については構いませんし、ここクルーズン市でレオーニさんご本人が使うのは構いません」

「なかなかややこしい条件だね」


「後からマネだけしてこちらの創意を横取りする商人を防ぐためのものです。レオーニさんの仕事を制限するつもりはありません。

あとで契約書を作って、レオーニさんの信頼できる人と一緒に十分に検討してもらってからサインしてもらえば結構です」


おれは話した内容をメモ書きしておく。とはいえ、すぐにサインを迫るつもりはない。


きちんとした契約は持ち帰って、人にも相談して十分に検討してから結ぶべきものだ。急かせて都合のいい条件を飲ませるのは適切ではない。


「いい加減に作った粗悪品で名前を使われたらレオーニさんの評判も下がってしまいますから、それはきちんとしておいてください」


実際に他で名前を使われてはうちとしても困るのだ。




「それから監修料ですが、1つ10万ハルクで4つで40万ハルクでいかがでしょうか? 名前の使用料は別にお支払いします」

「え? そんなこと全然考えていなかったんだけど」

「いえ、ぜひお受け取りください。こちらとしてもすぐにはまねのできない、しかも際立った特徴のある商品にしたいと思っています」


監修料は断られかけたが、どうしても支払うことにした。仕事のついでレベルではなく本業の仕事として取り組ませるためだ。


むしろこの金額は安いと思っている。ただそれはこちらの出したアイディア料と相殺分もあるからだ。




 作り方についてはお互いに秘密を守る必要があることついて話し合う。


「作り方は秘密にして人には話さないでください。そうでないとすぐにコピー商品が作られてしまいます」

「そうだな。お互いに秘密は守ろう」


ここで相手も秘密を守る発想になるのは、シェフはそれぞれ秘密の手順を持つことに慣れているからだろう。


「商売を広げるとなると全部自分で作るわけではないので、完全に我々だけで作業することはできず、誰か人に仕事を頼むことになります」


俺は調理ばかりするわけにいかないし、レオーニさんだって本業を放り出して軽食ばかり作るわけにもいかないだろう。


「少人数だけできる秘密の手順を作って、それはごく限られた人にだけ教えることにした方が管理しやすくなります。そういう手順があるとありがたいです」


やや面倒な注文をする。


「成果ですが共同開発ということで、クルーズン市ではレオーニさんが、クラープ町では我々が独占的に使うことにしたいと思います。

他の商人に秘密を知らせるときは事前にこちらにもお知らせいただき、改めて契約を結んで使用料を申し受けることでどうでしょう」


「何か型にはめられるように次々決まるな」

「先ほども申しましたが、契約書を作って事前に送りますので、信頼できる人と私のいないところで十分に相談してからサインしてください」


「これがね、40や50の人に言われるならわかるのだけれど、君はかわいい子供だからね。当惑しているんだ。いや君の言うことはもっともだと思うし、話も進めるつもりだよ」


そりゃ中身は50近いですから。



「その上で他人に秘密の作業をさせるときは、秘密保持魔法も使って、さらに待遇もよくして他に行きたがらないようにしてください」


全部自分で作るならいいが、人に任せるとなると、その人が引き抜かれたり独立したりするとまずい。似た料理が作られるのは仕方ないが、やはりうちで作るものが一番であってほしいと思う。


「小さいのにしっかりしているなあ」


だからこちらは50年近く生きていますよ。しかも悪い奴にもさんざん嫌な目にあわされましたよ。


だいたいブラック企業で取引先もろくでもないのがわんさといたのだ。

安い仕事ばかり請け負っていたから安い客しかいなかったんだよな。


誰かが言っていたな、バイトするなら生活に余裕がある人が使う店にしろと。いい客が多くて理不尽なことを言われないからって。


また何かブラックの思い出で脱線してしまった。


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