ブドウ作りとブドウ売り(上)
(少し時間が戻ります)
8月になり、またブドウの季節がやってきた。おととしも去年も大都市にブドウを売ってかなりの稼ぎになり、もちろんセレル村の人々も期待している。
村に帰っていないわけでもないし、ロレンスも含めて村の人が町に来た時に会うこともあるのだが、集落の方にはずっと行っていない。少し時間をとって村に向かうことにした。
去年までと同様にクルーズン市にブドウを売りに行く。ただ今年からはクラープ町が拠点のところが違う。
またギフトのホールを使えばよいわけだが、いろいろ制限がある。戻れるのはクロのところだけだ。そして1日以内なら逆にたどることもできる。
当日のブドウの輸送計画を考える。去年まではクロのいる拠点がセレル村だったので話は単純だった。だが今年はクラープ町の家にいる。
クロをセレル村の教会に連れて行ってしまえば去年と同じである。ただそうすると誰かが町と村の間を往復しないといけない。
しかもクロを檻に閉じ込めて持っていかないといけない。これはかわいそうだ。それが一番決定的で、けっきょく町を拠点にする。ブドウを町まで輸送すればいいだけの話だ。
「クロちゃんの福祉が最優先だものねー」
最近登場の少ない神がまたしょうもないことを言っている。登場しないだけで、いつも入りびたりである。
ただ世界さえ作ってしまえば、後はほったらかしという神も存在としてはありのような気はする。
もっともこの神は人に関してはほったらかしでも猫に関しては干渉しまくりの気もする。
もう一つ重大な理由がある。今後は村のブドウ生産も増えるだろう。このときにフェリス1人に輸送や売買がゆだねられているのもよくない。
業務は属人的でなくしたほうがいい。フェリスはいずれもっと大きな都市に移るつもりだ。その時にいきなり輸送体制を作るのはつらいだろう。
今のうちからしておいた方がいい。さらに他の村でもブドウが取れるだろうから、その輸送もしたい。
村に帰ったら、村人にもっとぶどうを栽培するよう依頼するつもりだ。そこで村に戻る日に合わせて、各集落に長かブドウ摘みの中心になっている人に集まってもらう。
そのためにあらかじめ手紙を書くことにした。手紙はマルクにまとめて渡し、そこから村にいたころに作った手紙の配達ルートで送る。
当日は呼びつけるだけではさすがに申し訳ないし、だいいち来てくれそうにないので、こちらもちで食事会つきだ。
それには10万くらいかかるが、ブドウを売ればシーズンで100万以上の儲けが出る。まだまだ売れそうで、ブドウの量が倍になれば200万だから増やしてもらうに限る。
これだけ儲かるのは俺のホールがあるからで、他の人がしてもさんざん働いて20万くらいにしかならない。
皆の分の食事として仔鹿亭には1人3000ハルクくらいで20人分の料理を頼む。集落から10人とフェリスたち3人とその親と村の関係者だ。
それ以外にまたクルーズンで買ったワインを持っていく。今回は村でワインづくりを頼んでおいたアンナの仕込んだ試作の若いワインもある。
当日となった。フェリスは朝からセレル村に向かう。クロはお留守番だ。村の教会からクラープ町の家にホールで戻り2人を連れていく。これで2人分の馬車代が浮いた。
ブドウ関係者との会合は昼過ぎだ。ただ時間通りに集まるようなことはない。仔鹿亭のクロードらと先に打ち合わせをする。エミリーも元気なようでにこやかに近況などを話す。
客が三々五々とやってくる。とりあえず駆け付け1杯となる。酒を飲んでから話し合いというのもひどい話だが、村ではそんなものだ。
ただそれ以上はさすがに出さない。飲みたそうにしているのもいるが、周りが止めている。
村長が一言挨拶する。それから俺が話し始める。
「今年も皆さんにはブドウの収穫ありがとうございます。クルーズンで大人気です。収穫期になりましたらまた連絡しますので村の中心に送ってください」
「おー」「やんややんや」「よしよし」
何かよくわからない歓声が上がる。
「そう言うことですので、またブドウを増やしてもらえると助かります」
「そんなに売れるのかい?」
「クルーズンの人口はこの村の100倍ですし、今後はワインの製造も考えています。とりあえずあって困るものではありません」
「そうじゃな、さっそくそのワインをじゃな」「それはまだ早い」
また飲んべえが割り込み、周りが止める。
「ブドウを増やすにあたってですね、村で一番おいしいブドウを増やしてもらえるとありがたいです」
野生種なので結構ばらばらのようなのでそのように頼む。
「みんな好き好きがあるからどれが一番とは言えないが、うまいブドウを増やしているぞ」
それはとっくにやっているらしい。
「それはありがとうございます。次にですね、かけ合わせを誰か試してみませんか?」
「その、かけ合わせというのはなんだ?」
「例えばですね、おいしいけれど実が少ないブドウの木と、あまりおいしくないけれど実が多いブドウの木があったとします。その2つの子どもを作れば、いいとこ取りでおいしくて実の多いブドウの木ができるかもしれません」
「悪いとこ取りで、まずくて実の少ないブドウができるかもしれんな」
「はい、それは運です」
実際にたくさん試さないといけないのだ。ブドウについて他の村でも生産を活発にしたら、価格競争に巻き込まれてしまうかもしれない。
ホールの優位はあっても卸売値が安くなってしまえば儲けは少なくなってしまう。いまのうちに勝てる商品を作って、ブランド化までしておきたい。
それぞれの長が周りに声をかけてくれるという。一応これで、ブドウを増やすこととかけ合わせをすることを頼み、今日の本題は片付いた。




