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クルーズン市で仕入れ(上)

 行商に持っていくアクセサリを仕入れにクルーズンに行くことになった。さらにセレル村でのブドウを売りに行くのも同時に行うことにする。


フェリスの行商は順調で、それがないと生活に困る人も少なくないくらいだ。明らかに世の中の役には立っている。


そうは言ってもいま一つ退屈な店であることは否めない。荷車に詰める程度であるし、生活に必要な食品ばかりだ。


そこでアランのアイディアでアクセサリなどちょっと変わっていて欲しくなりそうなものを行商に持っていくことにした。





 もちろん変わったものだらけになって日用品が手に入れにくくなったら本末転倒なので、ごく限られたスペースだけ使うことにする。


アランは本人が思っている本業の歌の方は集客できないが、商売の方は客を集めるのがうまいようなのでアクセサリとあわせてますます繁盛しそうだ。


すでに稼ぎから言ったらもう商売の方が本業だろうが、ボーナスが出ればますますそうなる。




 クルーズンまで行くとなると馬車でも丸2日はかかる。ギフトのホールを使うにしても一度は馬車で行かなくてはならない。


ギフトはフェリスがクロのいるところにどこからでも戻れるホールを作り、逆にクロのいるところから元いたところに1日以内なら戻れる能力だ。


フェリスが移動するときに連れていきたい人や持っていきたいものも一緒に動かすことができる。


ギフトなしなら往復で4日と仕入れで1日で5日もかかってしまう。その間行商を休むわけにはいかない。フェリスが仕入れに行くことになり、行商はアランとシンディで行くことにした。




 アランにはしばらくギフトのことは知らせないが、シンディとマルコはホールを使ってクルーズンに連れていきたい。


そうすると日曜日しかない。フェリスの商売は週休2日でその日は店も出さないからシフトなどややこしいことはないし、マルコは日曜のみの週休1日だけだ。


アクセサリの商人は休日も開けているだろうし、もしそうでなかったとしてもフェリスだけなら平日にまた行くこともできる。逆算すると金曜日の朝に町を出ればいい。




 問題はブドウ売りとの関係で、日曜の朝に集めないといけない。ついでに午前はブドウを売って、午後はアクセサリの取引となると、他のことができそうにない。


マルコは休暇がとりにくく日曜しか休めない。まったく休みが少ないと面倒だ。




 シンディとマルコとともに計画を立てる。


「まず俺が金曜日に馬車でクルーズンに向かうよな。いつものように泊りはなしでホールでこの家に戻る」

「そうだね。それで土曜はまた出先戻ってさらに馬車でクルーズンに向かい、その日の夕方か夜につく。そしてまた家に戻る」

「セレル村にブドウを取りに行くのはどうする?」

「各集落には少し余計に払って親父の店に持ってきてもらい、親父に頼んでこの家まで持ってきてもらおう」

「マルクさんに悪いね」

「まあそれは商人だから代金払えばしてくれるよ。こっちに来れば仕入れだってできるし」

「そういうことなら」

「でもそうするとクルーズンにブドウを持っていけるのは午後になりそうね」

「そうだね。新鮮な方がいいからやっぱり前日ではなく朝摘みの方がいいからね」

「じゃあ午前中はホールでクルーズンに行って、先にアクセサリ探しをしようか」

「それなら青果商のブリュールさんには午後にブドウが届くと言っておけばいいね」

「ブリュールさんの店の手代さんか丁稚の人に聞いてアクセサリ屋に連れて行ってもらうんだったよな」

「そのとき突然頼むと向こうも戸惑うだろうから、あらかじめ手紙で知らせておいた方がいいだろうね。ブドウを売りに行く旨も含めて」

「それがいいか。じゃあ事前に必要な準備はセレル村の各集落へのブドウ集めの依頼とマルクさんへの依頼とブリュール氏への手紙だな」

「楽しみね」




 1か月くらい先の行く日程を決め、各方面に連絡する。


事前にセレル村にも行き、ロレンス・レナルド・マルクはもちろん、各集落の長にも挨拶をしておいた。



 ブリュール氏への手紙もしたためる。

日曜の朝にクルーズンにつくこと。

誰かアクセサリに詳しい人を紹介してほしいこと。

ブドウは午後に届くこと。

この辺りを事前に伝えておく。なお郵便は結構高く、数千ハルクもかかってしまう。


フェリスがクルーズンに向かう金曜日にはシンディとアランで行商に行くようにも打ち合わせておいた。



 クラープからクルーズンまでは20里ほどである。なお1里は5キロメートルぐらいのようなので100キロほどとなる。


そこで旅となると徒歩では1日6里ほど、馬車ならその倍の12里ほど進むことができる。だからクラープからクルーズンは馬車で2日弱である。


クルーズンに行くのは楽しみではあるが憂鬱でもある。馬車の旅はつらい。いちおうクッションは持っていくが、座席が堅いのだ。


あれに1日、と言っても実際は6時間くらいだが、それでもつらい。だいたい日本の電車だってせいぜい数十分しか乗らない在来線のシートと数時間乗る特急のシートは別なのだ。その在来線のシートよりもっと座りにくいのが馬車の座席である。


1日乗るととにかく疲れる。しかもよく転生物で言われる通りサスペンションがないようだ。そのうちにそれの「発明」もしようかと思う。


おおよそ2里ごとに1つの宿場があり、そのうちのいくつかが町になっている。乗合馬車は町と町の間をつないでいる。


クルーズンまでは途中で乗り継ぎが必要だが、この街道はそれなりに行き来があるらしく、1日に複数便の馬車があるため、あまり待たなくてよい。


ひなびた街道だと1日1便だったり、貨客混載だったりするようだ。




 1日目は途中の町まで行く。クルーズンに行く人はふつうはその町に宿をとる。馬車の駅には、といっても待合室付きのバス停のようなものだが、宿の広告などが貼られている。


だがフェリスはホールで帰るので宿は必要ない。少しは町を見た方がいいような気もするが、疲れたのでさっさと横になりたい。


人目につかないところに移動する。そういう場所を探すのが得意になってきた。あたりを見回してからホールで帰る。


「クロ。疲れたよー」

ベッドにダイブしてもふもふする。あとは数時間イチャイチャとダラダラして、2人の帰りを待って食事にした。


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