詐欺コンサルはなかなか尻尾を出さない
シンディが始めた防犯護衛事業が流行ったのにかけつけて怪しい詐欺師が独立コンサルを始めた。こんなのは業界のためにならないので、おとり捜査を仕掛けている。
コンサルにだまされた元自警団員が接触し、あらたな客の候補を連れて行くというシナリオだ。いま2人で話している。元団員の方は王都に出るなどと言っている。
元団員「ある程度まとまった金ができたら、王都にも出てみようかって考えていまして」
詐欺師「そうだな。俺の方も王都で何か新しい商売でも始めるか」
何のことはない。こちらで行き詰ってきたから逃げるということだろう。別に犯罪をしたり不義理をしたりでなければそれだって全く構わない。だが詐欺まがいの行為がある以上、それは償ってからでないと困る。
元団員「こちらの取り分の方大丈夫ですか」
詐欺師「ああ、もちろんだ。契約したらちゃんとバックを渡すからな」
元団員は核心の話に入っていった。要するに詐欺師の犯罪の告白だ。シナリオを作ってすでに暗記するくらい練習させてある。
いちおう忘れたら見られるようにはなっているが、覚えずに見ながら読むとたどたどしくなる。よどみなく出るくらいまで練習しておいて、精神安定剤代わりにシナリオを持っておくくらいでちょうどいい。
元団員「少しばかりバックを増やしてもらえませんか?」
詐欺師「そうだなあ。もっと勧誘を増やせば考えてやるよ」
ありがちな話だ。これで元団員がこちら側でなければ勧誘にますます励むことになる。
だいたい成績に応じてだけ見返りが決まるというのは公平でよさそうに見えるが、それは他の要素を全く考えなくていい場合だ。
他にも評価はしにくいがしなくてはいけない仕事があるとか、今回のようにしてはいけないことがある場合に、押し進めるとろくなことにならない。
元団員「しかしまあ、この後来る連中もいったいどうなることやら。護衛になったからと言って厳しいのに」
詐欺師「それはまあ独立した商売人だから自己責任だな」
いちおうそれはそれで間違いはない。ただ勧誘のときに甘い言葉をささやいておいてひどいものだとは思う。
元団員「しかしまあ、ずいぶんな金取りますよね。原価なんかほとんどかかっていないのに」
詐欺師「それは独立にあたっての知識をを提供しているからな」
元団員「そんな知識の提供がありました?」
詐欺師「あろうがなかろうが、お前はそれで安心して独立できたわけで」
少しだけ踏み込んだかもしれない。ただ詐欺師の言うそれで安心して独立できたというのは正しい。誰か事情を知っている人の後押しが欲しいのだ。
ただそれなら金払って信頼できるかどうかわからない業者に頼む前に知り合いでもたどって実際に護衛をしている人間に聞き込みに行けばいいはずだ。
それを金で済まそうとするから痛い目を見る。金で何でも手に入るかと言えばもちろんそんなことはない。自分で手足を動かさないとどうしようもないものもある。
そうかといってそれをもって金など何も意味がないというのも極端だけれど。
元団員「300万取って、実際には100万もかかってませんよね」
詐欺師「原価はそうだが、これまで知識を蓄えるのに労力がかかっている。だからその分をもらうのは当然だ」
その理屈は間違いではない。熟練の職人があっという間に故障を直したときに、わずかな時間なのでわずかな支払いというわけにはいかない。
そこまで熟練したことに金を払わないといけないのだ。そうでないとヘボが時間をかけて同じ結果をもしかしたらもっと低い結果を出して高額な支払いと言うことになる。
ただ今回の場合は詐欺師に本当に知識があるのか怪しく、結果も出していないことが問題だ。
元団員「実際どれくらいが成功しているんです?」
詐欺師「そりゃ仕事請け負った人間はぜんぶ独立させているから10割だ」
元団員「いや独立した人間がどれくらい儲けているかってことです?」
詐欺師「さあ、どんなものなんだろうな。こちらは独立させるのが仕事だからな」
元団員は詐欺師になんとか失言させようとあの手この手を尽くすがなかなか向こうは乗ってこない。
ただいまの発言は、見込み客に言っているという「必ず成功します」とは矛盾する。
詐欺師の方もこれから見込み客を紹介する元団員を仲間だとみなして、もうすこしぶっちゃけた話をするものだと思っていた。
もしかしたら警戒しているのかもしれない。それは詐欺師特有の将来のものかもしれないし、あるいはこの元団員がかつて詐欺師にだまされてその結果食って掛かった過去に寄るのかもしれない。
何とか裁判で勝てるだけの失言が欲しいが、難しい気もする。
ただこの後に見込み客が来る。そちらの方には今まで通りなら刑事民事両面から追及できるような発言がなされる可能性が高い。元団員もそれに引っかかったからだ。
二人が話し、こちらが息を殺して隣室で待っているうちに、店に見込み客が現れた。




