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元団員の変化と難点

 シンディの始めた防犯護衛事業が街で話題となる。すると雨後のタケノコのように追随が出て来て、さらには護衛として独立するためのコンサルまでできた。


その中に詐欺まがいの業者があり、自警団員がそれに引っかかった。自警団の依頼でその業者を潰すことになった。


おとり捜査を仕掛けようとするが、だまされた元団員にあまりやる気がない。周りがいくら言っても、形ばかりの努力しかしない。


そこで俺が業界として不健全な詐欺師を排除する手伝いをしてくれないかと頼む。すると彼の雰囲気が少し変わった。



 その後はおとり捜査の練習にも割と積極的になったように思う。シナリオなどもかなり覚えてくることが多くなった。注意されても前より素直に聞く。


だいたい変な工夫をしたり自分を出そうとする者がいて、そう言う人は伸び悩むことが多い。


詐欺師の意見などは聞くべきでないが、明らかに一緒に良い方向を目指そうとしている人の言うことは聞くべきだ。



 彼が変わったのはたぶん彼のおかれている枠組みが変わったからだろう。それまではどうしようもない落ちこぼれだった。


独立しようとした時点でたぶんあまり自警団の中でもうまくいっていなかったように思う。それで周りを見返そうと独立を企て見事にだまされた。


さらには他の団員まで巻き込んで首にされる始末だった。借金もかさみ家族からも厄介者だった。だがいまは護衛業の新しい形態を始めた商人が業界を健全化するための先兵になっている。



 協力者である詐欺師のハイマーを交えた練習でもいぜんは早く終わらないかとそわそわしているのが目に見えていたが、いまはもっと続けてほしいと食い下がる始末だ。


さらに前は突拍子もないへんな意見、というより思い付きを口にしていたのだが、それはなくなった。

まったく何も言わなくなったわけではないが、回数は減ってもう少しまともな問題に沿った疑問などを出すようになった。これも彼が真剣に問題を考えているせいだと思う。



 元団員から詐欺コンサルの性格や言いぶりなどの情報もいろいろ提供される。それに沿ってシナリオの方の見直しも少しずつ積み重ねる。


そうしているうちにシナリオも元のものとはずいぶん違うものになっていった。



 練習においてもずいぶん慎重になった。以前は何の根拠もないからの自信に満ちていた。「そんなの大丈夫」が口癖で、どう大丈夫かと聞いても答えられない。


それはまずいのではないかと聞いても、やはり何の根拠もなく「いや大丈夫」、「俺はよくあいつを知っているから」などと怪しいことを言っていた。


いまはもう少し不安というよりも不確実性について実感や根拠をもとに話すことが多くなった。



 そうなるとそろそろ実戦に移してもいいかと思うようになる。その相談に行ったときに詐欺師のハイマーが待ったをかけた。


ハイマー「うーん、なんか違うんだよな」

フェリス「何が違うんですか?」


ハイマー「あの元団員だよ」

フェリス「何が問題なんです? 最近は熱心にやっていますよ」

シンディ「そうよ、ずいぶん真面目になったじゃない」


ハイマー「だからさ、うーん、なんて言うか、それがまずいんだよ」

フェリス「それがなんでまずいんです?」

シンディ「そうよ」


ハイマー「なんていうかさ、あまりに立派になり過ぎなんだよ。前のあいつは簡単に儲け話に乗るはっきり言って馬鹿だっただろ?」

フェリス「まあそうですね」

シンディ「確かにそうね」


ハイマー「世の中のことなんかろくに知らないのに知ったかぶりして虚勢はって付和雷同するようなやつだっただろ?」

フェリス「ええ、まあ……」

シンディ「そうね」


あまりにさんざんな言い方だが、事実だから仕方ない。


ハイマー「そう言うやつはだましやすいんだよ」

フェリス「なるほど、でもだましにくい相手でもだまそうとはしないのですか?」

シンディ「どうなの?」


ハイマー「そりゃ、控えるな」

フェリス「どうしてです?」


ハイマー「まず騙されないやつの相手は時間の無駄だということ。特定の人間をだますのが目的なんじゃなくてとにかく誰かをだまして金を儲けるのが目的だ。だったら騙しにくい人間は早々に蹴りをつけて他にあたった方がいい。それに騙されないやつだとしっぽをつかまれる可能性も高い」


なるほど。さすがに詐欺師の言うことは違う。彼の言う通りだと、詐欺コンサルは警戒して踏み込んでこない可能性が高い。ハイマーのことが大嫌いなシンディもこれには納得していた。


フェリス「じゃあ、今までの練習は無駄だったということですか?」

ハイマー「いや、そんなことはない。騙されないやつの方がいいことはいい。だけど、今度はだまされそうな馬鹿の振りをする練習もしないといけないな」


そう言う相談になり、そのことは元団員にも話す。彼の方も納得して新たにだまされそうな馬鹿の振りの練習も加わる。


そういうそぶりについてはハイマーはやはりよく知っていて、元団員がまともそうなことを言うたびにいちいちダメ出しをしていた。


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