フローチャートをもとにハイマーと実践練習
シンディが始めた防犯護衛事業が当たり、まったく関係ない業者が護衛として独立するためのコンサル事業を始めた。
ところがこれが詐欺まがいで、しかも自警団の中にその詐欺が蔓延してしまったのだ。
言っていることは完全に詐欺なのだが、巧妙に契約書が作られていてそれだけでは詐欺に当たらない。
そこでおとり捜査を仕掛けることになった。その際に自警団の紹介で詐欺師のハイマーに協力を仰ぐことになる。
ハイマーは詐欺のシナリオを作ったところでうまく使えないと言っていた。だが俺には考えがある。
シナリオは紙10数枚の小冊子でもちろんそのままでは使えない。そこで俺は前世の記憶でフローチャート(流れ図)を作ってみたのだ。
まずは勧誘初期の想定問題集をフローチャートにしてみるとシンディは感動していた。
シンディ「これって他の場面もできるの?」
フェリス「そりゃもちろんだよ」
シンディ「なんかこれすごくない?」
フェリス「そうかな?」
シンディ「これって他の仕事とかのときも使えるじゃない?」
まあそれはその通りだ。ただこちらの社会はゆっくり仕事に慣れればいい雰囲気があるからそこまで徹底的にわかりやすいマニュアルで即戦力にしなくてもいい雰囲気はある。
フェリス「まあそうかもね」
シンディの方は目を輝かせている。シンディの思い付きや行き当たりばったりにもよさはある。あまり効率ばっかり考える経営者になって欲しいとも思わないのだけれど。
フェリス「じゃあ、他の場面も作ろうか」
そういって他の場面も2人で協力しながら作っていった。けっきょく5つくらいの場面が出来上がる。
シンディ「これよさそうね」
フェリス「うん、けっこう上出来だと思う」
シンディ「これで完璧かしら?」
フェリス「まあハイマーにも見てもらって実践練習するのがいいと思うよ」
もしかしたら抜けがあるかもしれない。そう言うつもりで次にハイマーに会うときを待った。
そしてハイマーとの面会日がやってくる。
フェリス「今日はよろしくお願いします」
ハイマー「例のシナリオを使って練習するとのことだったな。まあどんなものか」
ハイマーはシナリオには否定的だ。とにかく始める。内容はこんな感じだ。だまされた自警団員が金に困って紹介料欲しさにコンサルに新規客を紹介するために近づく。そこでやり取りをする。
それからこちらで用意した新規客をコンサルに面会させる。そこもやり取りがある。その2つで詐欺まがいのことを言うだろうからそれを全部記録するのだ。
実際に俺がだまされた自警団員役としてハイマーとやり取りすると、フローチャートに従って滑らかに答えが出てくる。少し返答に困る質問も入るが、さほど困難なく返す。
フェリス「どうです?」
ハイマー「まあやり取りは悪くはないな」
フェリス「そうでしょう?」
ハイマー「けっこう面倒な質問も入れたが、どうやったんだ?」
フェリス「こちらのフローチャートを使いまして」
そういってハイマーに見せると目を丸くして凝視していた。
ハイマー「なるほどな。ずいぶんと手の込んだ物を作ったな。ただそれでもまずいところはある」
フェリス「なにがまずいんです?」
ハイマー「その紙ばかり見ていただろう? そんなことをしたら何を見ているのかと疑われるぞ」
なるほど。そこを指摘してきたか。だがそれについては想定済みだった。
フェリス「その点は考えてありまして」
そういって紙の束を見せる。一枚は想定問答集のフローチャートだが、その他の紙は紹介する人間のプロフィールや希望などが書かれている。
フェリス「こんな感じでこの話に関連する独立希望者の情報が書かれた紙を混ぜ込んでおきます」
ハイマー「うーん、なるほど。これなら見せても大丈夫ということか」
フェリス「ええ、初めにこれを見せてから話を始めてもよさそうです」
ハイマー「うーむ、かなりよさそうだが……」
よさそうだが、というが何か問題でもあるのだろうか。それとも負け惜しみの類だろうか。
フェリス「『よさそうだが』何か問題でもありますか?」
ハイマー「おおよそはいいのだが……」
何かそう言われるときになる。
フェリス「問題があったら何でも言ってください。ここで潰しておいた方がいいので」
ハイマー「まあ俺くらい慣れた人間だったらいいんだが、もし不用意な人間がこの想定問答集の図の方を見せてしまったらと思ってな」
なるほど、それはあり得ないことではない。基本的にはノートにして傾けて相手には見せない状態にすることになっている。
ただ万が一フローチャートが目に入ると追及されかねない。そうしたらこのおとり捜査はおじゃんだ。考え直さないといけない。
フェリス「なるほど、そこは詰めが甘かったです」
ハイマー「まあ、それも何とかならないことはない」
そういってハイマーは不敵な笑みを浮かべた。




