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シンディはどうしても店番を道場に連れて行きたい

 シンディの部門で店の護衛の研修をすることになった。初めにシンディが店番たちを道場に毎日来るように言い渡すが、それはダメだとこちらは言う。


どうにも費用対効果が見えにくい。確かに剣術が上達すれば少しは護衛に役に立つかもしれないが、何百時間も努力してごくわずかだと思う。


それでもシンディはしたがるし、店番の方も自分は負けたのだから言うことを聞くなどとブラックなことを言っている。


フェリス「とにかく道場に行く時間で店番をタダ働きさせるのはダメ」

シンディ「あたしは部門の長なのに研修内容も決められないの?」


フェリス「あのさ、もちろん研修内容は君が決めることだよ。その研修やって役に立つかどうか俺が言うのは本来筋違いだと思う。

ただこれだけは言わないといけないのは、タダ働きはダメだってことと、それからペイしないとダメ。道場に行かせて本当に護衛に役に立つの? ごくわずかとかでなくかけた費用に見える形で。

もちろん結果的に商会のためにならなくてもなる可能性がある程度見込めるならしてもいいけど、ほとんど見込めないのに趣味で押し通すのは横領だよ」


シンディ「横領って、すごいきついこと言うのね」


フェリス「だけどシンディは部門の長だからね。あんまりかってに商会の金を使うと部下が見習いだすよ」

シンディ「そうねえ。そう言うこともあるかもしれないわね」


シンディ「あ、思いついたんだけど」

なんかまたろくなことじゃない気がする。

フェリス「何?」


シンディ「あのさ、護衛部門のみんなで趣味で道場に行くのは止めないわよね」

何としても道場に行きたいらしい。前世で就職した会社は部活なんてなかったが、そういうものがある会社もあった。ただなあ、いかにも同調圧力で道場に行かせようとしている気がする。


フェリス「道場に行かないと職場にいづらくなるとか、昇進や昇給が遅くなるとかそう言うことがなければ止めることはできないよ」

シンディ「何か奥歯にものがはさまったような言い方するのね」


フェリス「うーん、なんて言うのかな。あの手この手でどうしても道場を押し通したいというのが組織に合わなくて」

シンディ「フェリスは組織の論理を優先するのね」


それはそうだ。管理者なんだからそうしないといけない。


フェリス「俺はもちろん、君も管理者なんだよ。ごくわずかな仲間内でやってた時はなあなあでいいけど、知らない人と一緒に働くときはルールに基づいて動かないと困るよ」

シンディ「そうね。でもやっぱり剣術は捨てられないの」


フェリス「あのさ、なんかもう少し落としどころを考えられない? 剣術でも護衛に役に立つ剣術をするとかさ。それにやっぱり毎日はよくないよ」

シンディ「護衛に役発つ剣術なんてあるのかしら?」


フェリス「それはシンディが開発するしかないんじゃないかな?」

シンディ「えーっ? あたしが開発するの?」


フェリス「あのさ、マリークさんの研修だって彼が独自に工夫したものじゃない?」

シンディ「それはそうね」


フェリス「それだったらもちろん店番を商会の金で道場に行かせたっていいし、それどころかそのプログラムの開発中は君が商会の金で道場に行ったっていいよ」

シンディ「あら、それいいわね」


フェリス「もちろん仕事だよ。成果出さないでずっと道場に入り浸りはなしだよ」

シンディ「そりゃそうか。第一、フェリスの護衛もあるしね」


なんかちょっとまずい方向に向いてきているような気がしてきた。そうすると案の定あれが来る。


シンディ「そういえば最近フェリスは道場に来ていないわね」


フェリス「俺だっていろいろ仕事はあるからな」

シンディ「フェリスが仕事ねえ。何かあったかしら?」


かなりの時間一緒にいるので、彼女は俺が仕事していない時間が多いことを知っている。とは言え、俺はちゃんと仕事をしていないときでも仕事のことは考えているのだ。それに猫のクロを世話することはこの世界で一番重要な任務だ。


フェリス「ちゃんとふだんから商会のこと考えているから。それはともかく護衛向きの剣術のことをよく考えてよ。店の護衛で帯剣というのもあまりうまくないし、それなしにしてみるとか」

シンディ「棒術もあるから、それをしてみるのもいいかもね。じゃあさっそく道場に行きたいわ」


フェリス「じゃあ俺は家に戻るから、シンディはそのまま行くといい」

シンディ「フェリスは行かないの?」


きたきた。


フェリス「俺は考え事があるから」

シンディ「いや、フェリスにも来てもらった方がいいわ。し・ご・と、だから」


なんかわざわざそこを強調している。仕事だって言えば通ると思っているのだろう。ただ今回は断りにくい。行くしかないのか。


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