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75. 店番たちに訓練と説明する

 シンディの護衛部門の仕事先を探して、うちの高給装飾店に目を付けた。シンディが視察に行くとそれほど護衛は整っていないという。


そして2人もいれば強盗が可能らしい。そこで訓練としてシンディとエドアルトが実際に襲撃することになった。


騎士団や自警団にはあらかじめ伝えるが、店の方には知らせていない。責任者のマルコには知らせてあるけれども。


いちおうケガはしない・させないようにとくぎを刺してあるが、稽古程度のケガは認めろという。そして実際に襲撃に行き、どうやら2人で制圧したようだ。



 俺とアレックスは店の近くに馬車を止めて2人で待っていた。シンディたちが店に入ってしばらくすると、2人で出てきた。


2人だけで出てきたということはたぶん成功したのだろう。失敗したら捕らえられているはずだ。

シンディがこちらに合図したので、アレックスと一緒に店に近寄る。



 店の中に入ると、店員と店番2人が手足を縛り上げられ、さらに目隠しもされている。そこで彼らの目隠しを取る。ちょっと怖いので手足は縛ったままにして彼らに話しかけられる。


フェリス「大変に申し訳ありません。店主のシルヴェスタでございます」

店番B「何だと!」

元から中にいたごつい方の店番が問い返す。もう1人の外向きの店番は黙っているし、店員の方はおびえて切っている。


フェリス「ええ、大変に申し訳ないことですが、私はこの店の店主のフェリス・シルヴェスタでございます」

店番B「ど、どういうことだ!」

怒るような戸惑うような声で、それはまあもっともなのだが、問い返される。


フェリス「エーッとですね。実はこのたびのこれは、その……、何というか、訓練でございまして」

店番B「何だと!」


苦虫を潰したような顔をしている。実はこっちもいたたまれないのだ。仕方のないこととはいえ、彼らを縛り上げている。


なおシンディとエドアルトの方は人に任せて椅子にふんぞり返っている。よそ行きの服は脱いで、その辺に散らかしたままだ。


フェリス「つまりですね、私はこの店のオーナーですし、皆様に害意もなければ盗むつもりもございません。いまから皆さんを解放したいと思います」


それからシンディとエドアルトに指示する。

フェリス「あのさ、解いてあげて。それから服もちゃんと着て」

別に裸になっているわけではないが、せっかくのよそ行きなので着させる。


縛りをほどかれた3人はやや呆然としている。

店番B「つまりどういうことなのか?」

フェリス「先ほども申しましたように、これは訓練です。うちの店の護衛を見直している際に、襲われそうな店はどこかと検討して、こちらが危険だと判断したわけです」


店番B「他の店でもやっているのか?」

フェリス「店についてはここが初めてですが、私の護衛についてはすでに一度訓練済みです」


店番B「なるほど、わかった。しかしちょっとやり方がひどいのではないか?」

少し落ち着いてきたが、もう1人の店番と店員はあまり事態に対応できていないようだ。まあさっきまで殺されかねないと心配していただろうから、それも仕方ない。


フェリス「はい。それはそう思います。ただ……、実際に白昼堂々とたったの2人に制圧されてしまったわけでして。実は私の方も、その時は護衛がいませんでしたが、ちょっと前に拉致されてしまったことがありまして、護衛について見なおしているところです」


店番B「それでこの訓練になったと。だが、大騒ぎになるかもしれなかったが」

フェリス「ええ、実はこの訓練は騎士団や自警団にはすでに通知済みです。こちらが騎士団からの返答の手紙です」


そう言って騎士団からの手紙を見せる。もちろん同意している旨だ。


フェリス「ただ認識していただきたいのは、これが実際の強盗だったらあなた方は大けがをしていたし、場合によっては殺されていたかもしれません。もちろん我々管理側の責任は重いのですが、高額の金品を扱っているにもかかわらずこのように店を続けていたらいずれ危ないことにもなりかねないわけです」


実際に窃盗や強盗は起きていないわけではないのだ。それは前世より武器も出回っているし、ある程度武力がモノを言う世の中だ。俺たちが行商をしていたときだって恐喝はあった。


その辺で実際にシンディにどうしたかを聞く。


フェリス「えーっと、シンディ、どんなふうに制圧したんだい?」

シンディ「ええ、まずは中の店番をこの棒で不意打ちして、痛がっている間に2人で縛り上げて、それから店員は簡単に縛れたので、あとは外の店番を呼び入れて同じようにしたわ」


なにか朝飯前でやったような言いぶりだ。


フェリス「それで間違いないですか?」

3人に聞くと、うなだれつつも首肯する。


フェリス「詳しいことはまたシンディから話がありますが、まず明らかに良くないのは警笛がないことです。何かトラブルが起こればすぐに店番か店員かどちらからが警笛を鳴らすべきでした。大きな音が出て外から自警団や騎士団が来るかもしれないとなれば、賊は逃げ出します」


そんな話から始まった。



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