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シンディの追尾を捕える

 シンディ一人での護衛がよくないと思い、人を増やすことにしてシンディが選んでエドアルトを入れた。ところが彼の護衛はやや不安なところがある。


剣術はいちおうそれなりにできるのだが、護衛としての注意力は不安だ。それについてはシンディも認識しているらしい。


この前、別の馬車が脱輪で立ち往生してこちらも渋滞に巻き込まれて人が群がったときに、ふと外を見るとシンディが変装してこちらをつけていた。


おそらく不安になって見守っていたのだろう。やれやれ。シンディにも自分の時間を取ってもらいたいのもあって人を入れたのにこれでは本末転倒だ。



 すぐに問い詰めようかと思ったが、言い逃れされるかもしれない。一回だけではたまたまそこにいたと言われればそれまでだ。もう少し様子を見てからにした方がよさそうだ。


次に馬車に乗ったときは注意して外を見ていたが、見当たらなかった。本当にいなかったのか、それともこちらが見えにくいところにいるのかはわからない。


シンディに別行動している間は何しているかと聞いてみるが、道場に行っているとか街で買い物しているとか適当なことを答える。


さすがに道場でこの時間にいましたかとは聞きにくいし、まして街では確かめようもない。しかも何か拘束の強い恋人みたいだ。それでもやはり怪しい。


こんなに悩んでいるのに護衛のエドアルトの方は鼻歌なんか歌っている。まったくお気楽なものだ。



 ある時にシンディに注意する。

フェリス「エドアルトのことだけど、ちょっと護衛としては注意力が足りないんじゃないか?」

シンディ「そう? ちょっと注意しておくわ。だけど長い目で見てほしいの」


それは別にすぐに首を斬るつもりはない。ただいつまでもあの調子では困る。


後で周りに聞くと、シンディは実際に注意しているらしい。だがそれでも特にエドアルトの態度が改まってはいない。




 シンディのしっぽをつかんでやろうと、一度ふと思いついて馭者に命じて馬車を狭い道に入っていかせることにした。


フェリス「悪いんだけど、道を変えて次のところで曲がってくれない?」

馭者「シンディ様から道は指示されていますが」


フェリス「そうなんだけど、いつも同じルートだと飽きるからね。それにこっちの方が近道でしょ」

馭者「わかりました」



 いま通勤での行き帰りのルートはシンディがあらかじめ馭者に指示している。


少し遠回りだが広くて人通りの多い通りばかり通るルートだ。もちろん何か事件が起これば誰かの目につくし、すぐに自警団や騎士団などが来るような場所だ。


そういうあらかじめトラブルを最小限にしようとするのはシンディの卓越した能力だと思う。それに比べるとエドアルトは何かあれば対処しますよなどと言っていて2流だ。


はじめから何も起こさない方がよほど上だ。とは言えエドアルトは俺たちより年上だがしょせんはまだ見習いに毛が生えた程度の年齢だ。これから能力を身に着ければいい。


できればシンディの有能さを文書化したりシステムに組み込んで誰でもできるようにするといい。



 それはともかく狭い道に入ったためにやはりシンディが現れた。隠れるようなところがなかったのだろう。しっかりこちらから確認できる。


やはり付け回していたようだ。おそらく護衛のためだろうが、まったく困ったものだ。彼女がいなくても回るようにしたいのに、まったくそうなっていない。



 俺が帰宅して、またしばらくしてシンディも帰宅して、彼女から話しかけてきた。

シンディ「きょうはどこか寄り道したの?」

フェリス「え、なんで? どこも行ってないけど」


シンディ「なにかいつもと違う道で帰ったらしいから」

フェリス「よく知ってるなあ。いやちょっと思いついてね。ところで何で知っているの?」

シンディ「あ、帰りに馭者に会ってね。別の道を通ったって聞いたの」


馭者の帰り道とシンディの帰り道は交差しない。だいたい俺は毎日馭者と話すのだから、嘘は一発でバレる。案の定、翌日聞いてみるとシンディに会ってなどいないと言っていた。


それだけでもアウトだが、もう一回、やはりいつもと違う道に行ってみることにした。するとやはりシンディは後を追いかけてきている。


そこでエドアルトを連れて馬車の外に出る。シンディの方は混乱している。どうやら俺に見つかるとまずいが、俺を放置して危険にさらすわけにはいかないからだろう。


そう言うわけで、何もなしの鬼ごっこだったら俺は全く敵わないが、今回ばかりは簡単に捕まえることができた。


フェリス「やあ、シンディ。こんなところで何しているの?」

シンディ「あ、フェリス。いや、たまたま通りかかってね」


たまたまのはずがない。5日前に見て、おととい見て、そして今日だ。付け回しているに決まっている。


フェリス「うん、そのことについては後でゆっくり話そう」

これだけ面倒なことになっているのに、当のエドアルトはまったく何も気づいていない。まったく困ったものだ。



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