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シンディとの護衛事業の話

 シンディと護衛をどうするか話し合っていた。前にギルドで紹介されたマリーク氏の訓練がよかったので、道場で教えてもらうことにした。


道場の弟子たちにも好評で、今後は優秀な護衛が多数出てきそうな期待が持てた。そこで話し合ったのが、護衛の学校を作ることと護衛の商会を作ることだった。


それをシンディに任せたいと言うと、彼女は戸惑っていた。


シンディ「で、それ誰がやるの?」

フェリス「そりゃシンディだよ」

シンディ「えっ?」


シンディ「ちょっと、まって。そんなややこしいことできるわけないでしょ」


 うん、確かにややこしい。前世には学校も警備会社もあってそれを見てきた。学校の方は生徒としてだが中でずいぶん体験もした。


教員が言うには生徒と教員では見ているものが違うと言うが、ただそう言うものがあるということはよく知っている。


こちらの社会にも学校はあるが、ずっと規模は小さい。そう言えば前世でも1960年代70年代の塾は学校の先生が退職して個人的に開いたりして小規模だったらしい。


21世紀以降はあまりに変な情報戦みたいになって、30半ばの俺にはついていけない世界だった。シンディにとっては護衛の専門学校などもっと当惑しそうだ。



 ただ一方でシンディは何かややこしそうなことでもとりあえずやってしまうところもあったはずだ。

俺の方がいろいろ悩んで躊躇するところでも簡単に手を出してしまったりする。それが今回は彼女の方が躊躇している。


フェリス「まあ、とりあえずやってみればいいんじゃない?」

シンディ「でも……」

フェリス「なんか問題ある?」

シンディ「誰もやったことないし」


誰もやったことがないことは誰かがしないと世の中は変わらない。しかもたいていの場合は自然も社会も新しいことをしないと今まで通りの生活はできない状況に追い込んでくる。


もちろんそれが人を不幸にするとか、あまりにも重大な結果を招きかねないなら、しない方がいいが今はそうでもない。


そんな風に正論を言っても、通じそうにないことはわかっている。それにちょっと言っていることの規模が大きいのも問題だと思う。


フェリス「とりあえずさ、身近なところでしてくれればいいから」

シンディ「身近ってどんなこと?」


フェリス「マリークさんとは懇意にしておいてさ、もっと高度なことも教えてもらうようにして。それから道場で護衛によさそうな弟子がいたらスカウトしてうちで何人か雇ってよ」

シンディ「まあそれくらいなら何とかなりそうだけど。それでどうするの?」


フェリス「マリークさんの教えることを書き留めておいてそのうちテキストにしよう。それから雇った護衛は初めはうちの店の護衛にして、ついでに他にも回すようにすればいい」

シンディ「何かすごくややこしそうね」


フェリス「そうなんだけど、だいたい人が面倒に思うことをするから儲かるわけで」

シンディ「儲けなきゃいけないの?」


そうきたか。そう言えば儲けなきゃいけないと思うのは、俺が資本主義社会の洗礼を受けているからかもしれない。こちらの社会はまだそういう段階に至っていない。


ただ金があった方が有利なのは事実だ。別に人を出し抜いたり不幸にしたりしてまで金を稼ぐこともないが、みすみす稼げる金を稼がない手もないと思う。


金があればやりたいこともできるし、逆にやりたくないことをしなくて済むことが多い。


フェリス「まああって損はないと思うよ。他人を不幸にしてまで分捕るのはよくないけど、世の中に悪くないことをして稼ぐなら悪くはない」

シンディ「そりゃそうね。ところで本当に儲かるのかしら?」


フェリス「うーん。それは失敗するかもしれない」

シンディ「失敗したら困るじゃない?」


案外保守的なことに驚いた。もしかするといままで彼女が冒険的だったが、それは失敗しても傷つくのは体一つで財産ではなかったからかもしれない。


フェリス「そうなんだけど、何か新しいことをしようと思ったら失敗する可能性はあるわけで、それを恐れていたら何もできないよ」

シンディ「それはそうね」


お金の件に関しては商会から出すつもりだ。もし彼女自身だとしても彼女にもそれなりに役員報酬は払っているし、うちの株も持っていて資産はそれなりにあるはずだ。


ただ彼女はそれを把握していない可能性も少なくないと思う。わりと高価な武具は欲しがるが、無茶なものは買ってなさそうだし、贅沢にも興味はなさそうだ。


ただいちおう意識はさせておいた方がいいとは思う。


フェリス「あのさ、この費用は商会から出すよ。それからシンディ自身が出資したいならそのための資産はたぶんあるはずだよ」

シンディ「商会で出すならますます失敗しづらいし、あたしに資産なんかないわよ」


何か話がかみ合っていない。ちょっと別の意味で危ないような気がしてきた。



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