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護衛の一斉指導

 うちの護衛について充実させようとシンディをトップにして動いている。道場で訓練をしようとしたが、師範代のする訓練は的外れだった。


そこで冒険者ギルドのマリーク氏に習い、師範代との試合に勝った。師範も認めて、マリーク氏が道場でも教えることになった。



 これはけっこうよかった。もちろん剣術道場なのだから、護衛の訓練ばかりしても困る。だが剣術を習った後に現実的に護衛の仕事が多いなら、そう言う訓練があってもいい。


マリーク氏の訓練を受ける者も10人以上いてなかなか盛況だった。こういうのは始めたときに誰も来ないことが心配になったりする。だが実際は思った以上だった。


師範たちが考えているより、そう言う訓練を受けたいと思っていた者は多かったのかもしれない。あるいはそう言う意識も持たないが、なんとなく惹かれたのかもしれない。アンケートを取っても出てこない隠れたニーズだ。


マリーク氏と話す。

フェリス「けっこうな人数が来ていますね」

マリーク「ええ、ありがたいことです。ただ……」

フェリス「ただ……何ですか?」

マリーク「ええ、これだけの人数相手に教えたことがないのでけっこう戸惑っています」



 後で聞いてみると、教えることは今までも何度もあったが、数人相手ばかりだったと言う。俺たちも3人で教わった。後輩や弟子がついたり、人に頼まれたりして教えることばかりだったそうだ。


確かに一斉指導したことがないとすると戸惑うかもしれない。前世だと一クラス30人40人で体育の授業があったりしたが、こちらではそういうものはないからだ。


と言ったって、道場の指導はやはり一斉指導で、マリーク氏だってかつては道場に行っていたはずだ。だから全くわからないと言うこともないとは思う。


実際に戸惑ったり、少し手持無沙汰の生徒がいるながらも、何とか対応している。手持無沙汰の生徒だってマリーク氏が他の生徒を指導している様子を見ている。



 シンディから話しかけられる。

シンディ「なんかマリークさん、やりにくそうね」

フェリス「そうだけど、ただこれだと、もしかするとなんかあるぞ」

シンディ「なにかって何?」

フェリス「シンディから見てマリークさんの指導内容ってどう?」

シンディ「すごいよかったわ。ほんとに護衛をするときには役に立った」

フェリス「シンディから見てもそう思う? 師範代と比べるとどう?」

シンディ「う、うーん、まあ師範代はちょっとまずかったわね」


いちおう気を使っているらしい。ちょっとではなくてだいぶまずいと言うか、まるでダメだったと思うけど。


フェリス「それでさ、マリークさんの方はあまり多くの人に教えたことがないと言っている。と言うことは、マリークさんの教えを受けた者が多数出てくる」

シンディ「そうなるとどうなるの?」


フェリス「3回だけ講習受けてもいろいろ学ぶことがあっただろ。1年間とか受けたらかなりの使い手になるぞ」

シンディ「それはすごいわね」


フェリス「ふつうは長い年月経験しないと護衛の技量は上がらないけど、これなら1年とか3年とかでかなりになる」

シンディ「そんなにうまくいくのかな?」


その疑問はもっともだ。学校に行ったからといって仕事の技量が上がるとは限らない。やはり実際の状況に立ち向かわないと培われないものはある。


ただそう言う現場ではいつも良い指導者がいるとは限らない。というよりはたいていまずい指導者しかいない。そして体系的に技量を上げることはできない。


前世で職業学校があり、その卒業生が採用されるのはやはり意義があるからなのだ。


フェリス「確かにうまくいかないところはあるよ。現場で経験しないと。ただそれでも後から実際の現場に行ったときにかなりの違いになると思うよ」

シンディ「そうなると、クルーズンには力量のある護衛が増えるわね」


実は前世でもとっくに体系的に教えるべき状況になっているものを長く徒弟制のような偶然に任せていたケースは多い。


考えるのが面倒ということもあるのだろう。それを正当化するOJTという言葉もあった。別になんでも体系化して一斉指導するのがいいわけではないが、何でもOJTというのが間違いということだ。


だからこちらで護衛の職業学校が、この大都市でないのも十分考えられることだ。他の都市や国ならあるかもしれないけれど。


フェリス「うん、だけどそれ以外にも考えていることがある」

シンディ「どんなこと?」


フェリス「例えば護衛専門の道場か学校を作る」

シンディ「護衛専門なの?」


フェリス「うん、初めはふつうに剣術や格闘術を学ぶけれど、それでもはじめから護衛を目指した内容にする」

シンディ「でもそんな学校に人来るのかな?」


確かに剣術の用に何かよい幻想のある道場なら人は来るかもしれないが、護衛のように目的特化しているとそれほど魅力がないかもしれない。


ただ職業学校はやはり就職が容易になるとかより高い報酬をもらえるようになるとか利点が伴わないとうまくない。


フェリス「そこを出ていれば護衛として雇われやすくなるとかより高給で雇ってもらえるなら来ると思う」

シンディ「なるほどね」


フェリス「それ以外にも護衛ばかり集めた商会なんて言うのも考えている」



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