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2方向から襲ってみる

 護衛の訓練をしていて道場の師範代と試合することになった。師範代が対象を守り、俺たちがそれを奪う試合だ。


シンディが試合する前に練習した方がいいと言ったので、マリーク氏という護衛の専門家と試合をしている。


初日は相手に荷台の上に立たれてまったく敵わなかった。2日目はこちらも荷台を用意して同じ高さにしたら、少しは攻められたが、やはり対象の奪取はできなかった。その反省会をしている。


フェリス「今日も勝てなかったな。何がまずかったんだ」

アレックス「でも今日は昨日よりは少し押してた」

シンディ「そうね。昨日よりはずっとやりやすかったわ。やっぱり同じ高さの方がいいわね」


確かにそうだ。難しことを成し遂げるときは何か1つだけよいことをすればいいというものでもない。複数を組み合わせることが必要になることも多い。今回台車で同じ高さになったのはよかったのかもしれない。


フェリス「同じ高さからこちらは3人で攻めているのに何で向こうは対処できるんだろうな」

アレックス「フェリスがもう少し強ければなあ」

シンディ「いやフェリスがもう少し強くてもたぶんダメよ。よく考えてみなさい。こちらは一方向からしか攻めていないの」


フェリス「そう言えばそうだったかも」

アレックス「なんでなんだ?」

シンディ「そう仕向けられているのよ。こっちが用意した荷台の方向からしか攻められないの」


なるほどその通りだ。護衛対象の後ろには木の板で壁を作っている。荷台を並べているので、並べた方向からしか攻められない。


アレックス「なんかズルいな」

フェリス「いや、守る方からしたら万全を尽くすのは当たり前だよ」

シンディ「そうね。あたしたちだって本当に考えないといけないのは守る方よ」

アレックス「あ、そうだった」


フェリス「今回の話に戻そう。1方向からしか攻めないとするとちょっと攻略できないかな」

アレックス「いや何とかできるかもしれない」

シンディ「いえ、あっちはまだまだ余裕があったわ。いまのままだと無理ね」


フェリス「じゃあ2方向から攻めれば何とかなるかな」

アレックス「そうだな。それなら奪取できそうだ」

シンディ「それなら期待できるかもしれないけど、ちょっとギリギリかもしれない」


商売の方だと思い付きでイケイケどんどんのシンディが慎重だ。やはり剣術関係についてはいろいろ知識や感覚があるので、先の先まで見えるのだろう。


ともかく翌日はマリークが車の上で護衛対象を守り、こちらは2台の車で前と横から襲って奪取する想定で行うことにした。


フェリス「きょうは2台の車で襲うという想定でしたいと思います」

マリーク「わかりました。そうしましょう」


そういうわけで地上に降りて2方向から攻めることにした。ただ今回も2回試合を行ったが、どちらも護衛対象を奪取することはできなった。


マリーク氏は大きい盾を使い、上手く守る。だいたい2方向だとしても自由に動ける範囲が狭すぎるのだ。


フェリス「今回もダメかあ」

アレックス「どこがダメだったんだ?」

シンディは黙って考えている。


マリーク「いえ、今回はこちらも少し危ないところでした。もし横から目つぶしなど使われていたら負けていたかもしれません」


アレックス「そうか襲う場合は2台で襲えばいいわけか」

フェリス「それはそうなんだけど、ふだん2台の車が一緒に行動していたらやっぱり目立つよね。1回だけの襲撃ならともかく、何回もしていると絶対に官憲に目を付けられる」


シンディ「ちょっと待って。2台だけど、1台は道に止まっていて、襲撃対象が近づいてきたらそこで足止めして、離れていたもう1台が応援に来るならどう?」


マリーク「なかなかうまい手ですが、タイミングを合わせるのはけっこう難しいですね。よほど深い恨みがあるとか大金を持っているとかで狙わないとちょっとなさそうですね」

シンディ「そうかあ」


フェリス「今回2方向から来られると危ないと言う話でしたが、それでも護衛したいときはどうしますか?」


マリーク「今回は荷台でしたが、完全に覆われている車だとさらに襲撃はしにくくなります。賊の人数が多ければそれでも奪取されてしまいますが。あと10分で誰か来て通報されるというのは街中とか人が多く通る街道の昼間とかの話です。だから通報が期待できないような危険な場所には極力いかない方がいいですね。もしどうしても行かないといけないならさらに大人数で守るしかない。


アレックス「なるほど」

シンディ「襲う方をやってみると、護衛する方のこともいろいろ考えていいわね」

マリーク「ええ、護衛対象の方にはぜひやっていただきたいのですが、なかなかお忙しい方が多いので難しいですね」


それはそうだろう。壮年の男だったら金を出すからとにかく安全に守ってくれと言いそうだ。貴族や金持ちの子弟でもこんな訓練じみたことはあまりしそうにない。ある意味では俺が暇だったからこういうこともできた。


 3度にわたる訓練を終えて、あとは師範代との試合に向けて改めて3人で作戦を練り直すことになった。


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