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家探し(上)

 俺はシンディとマルコとともにクラープ町に移ることを決め、家を探すことになった。


「家を探すにしても、やみくもに探しても大変なだけだから、まずは条件を上げていこうよ」

マルコが口火を切る。


多くの探し方は知人に頼んで紹介されたところをそのまま借りるようなことが多いが、わりと人が動くようになりいろいろ選ぶことも多くなったようだ。


「俺は自分だけの部屋が欲しいな」

同じ部屋に人がいると休まる気がしない。


「僕も」

マルコはマルコでコレクションがあるので部屋は欲しいのだ。


「あたしはどちらでもいいけど……」

おいおい、シンディだけ女の子だろうと思うがその辺おおらかなのか。レナルドあたりから変なことを吹き込まれているのかもしれない。


ここははっきり部屋を分けておこう。そうすると3人で住むからには、3部屋は欲しい。これが条件だ。この年頃の子どもでは1人1部屋はぜいたくだが、その点は譲れない。


「やっぱり部屋は別々の方がいいな」

「3部屋は確定と」




「それから出入口が2つあった方がいいね」

マルコが妙なことを言う。


「え? それはなんで?」

聞き返すと


「だってギフトのホールを使うだろ。教会と違って借りる家は小さいからけっこう見えてしまう。出入口は人に見られているかもしれないだろ」

「あ、そうか」

ここで俺が気づく。


「え? なんでそれでまずいの?」

シンディはまだ気づかないようだ。


「ホールで出入りするときに、出入口が1つだと外から見て、出かけていたはずなのにそこを通らず家の中にいるとか、家にいたはずなのにそこを通らずなぜか家の中にいないなどということが起こるよ」

「それで出入り口が2つあれば、他の方から出入りしたと思ってくれる」

「あ、なるほどね」


もちろん誰かがフェリスたちを疑って人をつけて両方の出入口を監視したらバレることを防げないが、そういうことはめったにあるはずもない。


現実的な範囲だけで対策するのが合理的だ。これで条件は2つになった。




 ところでマルコもシンディもクロを町に連れていくことについてはそれで当然だと思っているらしい。


「ところでクロは連れていくことでいいの?」

「だって商売するつもりだろ」

「商売しなくてもフェリスはクロとべったりだものね」

「ロレンスさんはさみしくなるかもしれないな」


もうクロのことは織り込み済みらしい。そんなにクロとべったりしているところを見せたつもりはなかったのだけれど、ばれていたのか。


だけど一番べったりなのは俺でもロレンスでもなく神なのだが。




 なお賃貸物件でペットについての可否は問われない。日本のようになにがなんでもきれいな家でないと借り手がつかない状況ではないのだ。


よほどボロボロであれば借り手もつかないが、どの物件もほどほどのきれいさである。極端な猛獣では困るだろうが、それ以外になら問われることもない。


だからクロを連れていく分には全く問題がない。





 次に場所について相談する。まず町中からあまり離れていると困る。3人で地図を見ながら場所を考える。


「俺はここの魔法塾に週3回は行くから、そこからあまり離れると困る」

「あたしは道場に週3回は行く」

「僕は本店の方に毎日、それから商業学校にも週に3回行かないといけない」


俺は町中の魔法塾に通う予定である。それに商売もしないといけない。


シンディはかつてレナルドが師範代を務め、いまもときどき稽古をつけている町の道場に通う。


本当は毎日通いたいらしいが、仕事との両立でレナルドに脅されたようだ。


マルコはマルクの出身でいまはマルクのお兄さんが店主の本店で毎日修行、商業学校にも夕方から週に3回通う。


シンディもマルコもフェリスの商売を手伝うつもりである。


みんながそれなりに通いやすい範囲でないといけない。乗合馬車は町と町の間のもので、町中を走る路線はない。


だいたいこの国では日本の人よりはるかに長い距離を平気で歩いてしまう。そうはいっても毎日となればある程度近くないとつらくなる。




 学校や塾が多いのは町の北部でフェリスの魔法塾もマルコの商業学校も北部にある、それぞれ中心部から徒歩10分ほどと20分ほどだ。


マルクの店の本店があるのは中心部である。シンディの行く道場は南部で中心部からは徒歩20分ほどだ。


北部も南部も住宅街が広がっているが、中心部は住宅が少ないし家賃も高い。


北部の方が若干お屋敷街っぽいところもあるが、選ばなければ家賃はそれほどでもないし、南部はどこもあまり高くない。


東西についてもクルーズン市から続く街道があるためそれなりに町や店もあり、いちおう選択肢としてはあるが、それほど好条件でもなく今はあまり考えなくてもよい。


北部と南部と中心部で家がなければそちらも探すかもしれない。




「実際は家を見てみないとわからないけれど探すのは北部と南部が中心だろうな」

「北部に住んでも40分くらい歩けば道場には行けるからいいトレーニングになるわ」

「僕は中心部に毎日通うから、北でも南でもいいよ」

「あ、でもフェリスも道場には連れて行かないといけないわね」

「まあ機会を見ていくことにするよ」


もう連れていかれることは決まっているらしい。


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