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今度は外で訓練すると言い出す

 自分自身や店の護衛や警備が必要になり、シンディにその組織を任せた。あまり組織的な仕事は適任だとは思わなかったが、護衛などは上に武力がないとあまりいうことを聞かないらしい。


すると彼女は旧知のアレックスを護衛に取り立てようとした。だが彼は未成年だ。危険な仕事は望ましくない。そういうと、今度は訓練だけでもさせろと言って来た。


仕事を任せておいてダメ出しばかりするのもどうかと思うが、いろいろまずいことをされると後々困る。俺だけが困るならまだいいが、多くの人を巻き込むとさらにまずい。



 訓練はダメだと言うと無給で訓練すると言ってきた。ブラックが大好きなサービス残業だ。うちはブラックはしないことになっている。ブラックをすると得だと思っている経営者がいる。


経営者は労働者や社会にツケを回して、社会全体では間違いなく損だ。だがそれだけでなく実は経営者にとっても必ずしも得ではないと思う。


目先だけは得だが中長期的には損だと思う。人は嫌気がさしてどんどん辞めていなくなる。だいたい能力のある者から辞めていく。さらにいまいる者の実力もつかない。


互いの不信感が増して、協力すれば有益な仕事をどんどん非協力になっていく。組織はどんどん腐っていく。



 それでシンディにそれもやめてくれというと、今度は業務以外の時間ですると言ってきた。

フェリス「いやちょっとそれもやめてほしい」

シンディ「わかったわ」


えらく素直だな。

フェリス「わかってくれてうれしいよ」

シンディ「フェリスはいつもいろいろ難しいこと考えているものね。ちゃんとした理由があるんでしょう」

フェリス「うん、こうして、こうだから、こういうことなんだ……(延々5分)」

シンディ「じゃあ道場でアレックスに警備の稽古をつけるわ」

ズコッ。数十年前の漫画のリアクションを取ってしまう。ぜんぜん伝わっていない。



 ただこっちは反論が難しい。商会の外でするとなると、こっちが口を出す話でもないのだ。もちろん何かおどしのような手を使ってさせるとなるとまずいがそうではない。


極端な話、趣味でやっていると言われたらそれまでなのだ。だから止めようにも止めにくい。


シンディには権限を与えているので、立場の下の人相手に商会の意図とは外れた形で何かを要求されるといろいろうまくない。


フェリス「あのさ、アレックスに強制したり、圧力かけたり、ましてそれが商会の意思だと言うのはなしだよ」

シンディ「え、いいと思っているからやらせるんで、悪くないじゃない。(彼の親の)カスパーからはよろしくって言われているんだし」


何かいろいろ面倒になってきた。


フェリス「とにかくアレックスにも商会とは関係ないと言うことはちゃんと伝えておいてね」

シンディ「わかったわ」


本当にわかっているのかと思う。あとでアレックスにも言っておこう。商会と関係ないし、シンディの言うこともこの件に関しては商会とは関係ないと伝えておいた方がよさそうだ。


ただその辺はシンディだけでなくて他も怪しいところはある。商会のためならと自己犠牲しそうなタイプは多い。


まあ役員でまして出資までしているなら、ある意味自分自身の商会で財産だから少しくらい無理してもいいが、それを従業員にまで求めても仕方ない。


前世の新興の企業で経営者が最近の若い従業員にはかつての創業の頃の熱い志がないなんて言うのがいるが、そりゃ自分の財産とある意味一体の創業連中と一緒にされても困る。



 ところでシンディが道場でする訓練というのもちょっと見ておいた方がいいような気がしてきた。今度道場に行く際にちょっと聞いてみよう。


ただ俺はいちおう道場に籍はあるが、ほとんど行っていない。どうも行かなくなると行きにくくなる。とは言え、重要なことだし仕事だからそのうち行くことにしよう。そのうちがいつかわからないけど。




 なんかいろいろ面倒になって家に帰ってクロと遊びたくなった。クロと遊びたいのはいつものなのだが。


最近少し暑くなってきたためかクロは北寄りの涼しいところで寝ていることが多い。それでもやはり暑さがうっとうしいのか、夕方頃にならないと起きてこない。


氷魔法使いを雇えば冷房のようなこともできるのだが、さすがにそれはそれで結構な経費が掛かってしまう。


それに氷魔法使いは冷蔵流通で人が増えたとはいえ、引っ張りだこでなかなか連れてくるのも面倒だ。



 そんなことを考えていると、手が空いていて氷魔法を使えそうなのがいることを思い出した。

フェリス「おい暇神ひまじん!」

神「なんじゃ、その暇神というのは」

フェリス「読んで字のごとく暇な神のことだ」

神「なんじゃ、ワシはクロ様の世話で忙しいんじゃ」

フェリス「わかった、わかった。そう言うのを世間じゃ暇っていうんだ。それはともかくだな。クロの世話をしているんだろ?」

神「クロ様じゃ、痛い目みたいのか?」

フェリス「うん、それで、そのクロ『様』が寝苦しそうにしているだろ。最近は少し暑い。だったら気温を下げてやれ」

神「うん? いま暑いのか?」

フェリス「暑いだろ。わからないのか? みんな暑いと言っているだろ」

神「神なんで暑さなんてわからんし、人の言うことなんか興味もない」

フェリス「まったく。あんたがどうかなんてどっちでもいいんだ。クロ『様』が暑いかどうかだ」

神「それはそうじゃな。じゃあ世界の気温を2~3度下げるか」

フェリス「アホ! クロ『様』の周りだけでいい」


神が何か唱えると周りの気温が下がり始める。するとクロが起き上がってきて、すりすりを始める。神を差し置いてだ。神はひどく面白くなさそうだ。その辺ざま見ろと思う。


神「まったく、もっとましな世話人に代えるか」

フェリス「この世界の人間でもクロが見えるようになるのか?」

神「クロ様じゃ。確かにそれをするのはちょっと面倒だな」

フェリス「じゃあもうしばらく俺がするしかないな」


お払い箱になっても困る。ただこの神を尊敬する気にもなれない。そんなしょうもない言い争いをよそに、クロは俺の太ももに首を立てかけて横になって寝てしまった。


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