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20. 町内会長と親方のおかえり

 知人で年下のアレックスが未成年なのに危険な工事現場にいたのでやめさせた。すると現場の親方が工事が滞ったから賠償しろと乗り込んできた。


もう役所も介入しているため追い返したが、親方は近くの町内会長を連れてまた乗り込んできた。この町内会長がまたブラック搾取の仲間のような人間だった。


フェリス「どうも現場は危険で働いている徒弟にケガが結構あるようですが」

町内会長「そりゃ工事だからケガはあるに決まっているよ。痛い思いをしながら学んでいくべきなんだ」


そろそろ危ないことを言いだした。ちょっと記録を取ってもらうように秘書と話す。相手に黙って取るとあとで非難されかねないので一応断る。


フェリス「いろいろと後で言った言わないになると困るので、記録を取ってもよいでしょうか?」

会長「ああ、構わないよ」


断られるかと思ったが、案外素直に受け入れた。そこで秘書に記録を取ってもらう。


フェリス「先ほどの話ですがケガをしかねないような仕事はやはり成人だけでするべきでしょう」

会長「若いモンには苦労させた方がいい」


そりゃ後につながるまともな苦労ならしてもいいが、怪我して搾取されてなどしない方がいいに決まっている。


フェリス「苦労と言っても子どもに危険なことはさせてはならないでしょう」

なんか何度も同じことを言っている。つまり相手がどうしても譲れないところなんだろう。


会長「君もわからない人間だね。実践するから人は伸びるんだ」


やたらと実践を好む者はいるが実践だけしていればより技量が上がるようになるわけでもない。


それしか方法がないなら仕方ないが、大半のまともな業者はそんなことはせず、しているのはいかがわしい業者だけだ。


フェリス「お宅のやり方が正しいか正しくないかすでに役所が介入しているのですから、今回はその判断を仰げばいいことでしょう」

なんでこんな人間を相手にしているのかわからなくなってくる。


さっきから親方の方は親方の陰でろくに発言していない。あまり弁が立ちそうでない。


町内会長の方も内容はまるで間違いだらけで意味のない言葉だが、口だけはもっともらしく滑らかに回る。


会長「君ねえ、親方のところの組は大人気で次から次に注文が来るんだよ。正しいに決まっているだろう。今なら君の賠償も私の顔で安く収めてあげようというんだ」


そりゃ安けりゃ飛びつくのはいるだろう。それが正しいとは限らない。賠償を安く収めるなど、まるでヤクザの口利きのような言い方だ。実はこいつの手数料まで入っているのだろう。


フェリス「ですから何度も言いますが、役所の判断を待ってください」

会長「あのね、みんなが支持しているんだ。君の一存でみなが困っているんだ」


別に違法やあまりの不道徳だったら多くが支持していようが潰したってかまわない。


だいたいそのみんなの支持というのも怪しい。どうせ一部の周りの迷惑を考えずに我意を押し通して平気な吹き溜まりみたいな連中だけだろう。


おかしなことに自分の周り2~3人が自分の意見に同意すると、みんながそう考えていると思い込む人は少なくない。


実際のところは、ケガをした従業員も支持しないだろうし、まじめに建築をしてそのためにそれなりにコストがかかって料金が高く注文を受けられない組もちっとも支持していないだろう。


フェリス「何度でも言いますが、もう役所の判断を待ってください」

会長「わたしは市会の代議員の先生を知っているからね」


会長が自信満々に言う。なるほど、さっき記録を採ることに同意したのはそういう裏があるのか。


言っていることはかなりいかがわしいが押し通せると思っているのだろう。そうやって無理を通して相手をへこませるのが楽しそうな嫌な笑みをたたえている。


役所の介入もそれで差し止めにできて、今回損した分は俺からふんだくろうと思っているのか。


こいつはつぶしてやるが、その議員も巻き込んだ方がいいのかどうか考える。ただ考えてもあまり先が見えない。


とは言え、どう転んでもなるようになるだろうし、こちらが悪いことにはなりそうにない。


フェリス「はあ、それではそちらの議員の方にご相談ください」

会長「君、いいのかね。せっかく丸く収めてやろうと言っているのに」


フェリス「ええ、どうぞそうなさってください」

会長「後でほえづらかくなよ。まったく最近の若いもんは」


もともと口ぶりは下品だったが、さらに下品になる。ともかく、後のための仕込みをしておく。


フェリス「それでは本日の相談内容についてこちらとなりますが、サインをいただいてもよろしいでしょうか」


そういって記録の紙を差し出すと、こちらを言い負かせなかったのが面白くないのか、「フン」と言って一瞥した後に、会長はサインをした。


そして親方と一緒にすごすごと帰って行った。


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