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道場主による後始末

 アレックスが内弟子として入っている道場の道場主に黙ってバイトをしていて、そのバイト先がブラックだった。


アレックスの具合がよくなさそうだったうえに聞いてみるとひどい扱いだったので、無理やり止めさせた。


バイト先は官憲に告発し、そのままだとバイト先の親方が道場に捕まえに来るかもしれないので、道場主にも経緯を話した。


道場主はアレックスにお仕置きをするつもりらしいが、ただ内弟子がバイトをするのは当たり前らしくさほど重くないようだ。




 後日談を聞くと、やはりブラックの親方は道場にやってきたらしい。ところが受け答えした弟子が道場主に取り次ぎ追い出したとのことだった。


親方もアレックスやその先輩には大きな顔をして威張り腐っていたようだが、道場主相手だとやはり相手にならなかったらしい。


剣術の実力だけならアレックスでも親方より上だろうが、その辺はいろいろと人間関係にもまれている方が有利なのだろう。親方の方はほうほうの体で逃げて行ったようだ。



 親方は先輩の方も責め立てようとしたらしいのだが、先輩ももうとっくに道場主にばれている。


もちろん親方は先輩にも会うことができず、そのまま手出しはできなくなったようだ。



 アレックスに対する処罰は1か月間外出禁止となった。その間は道場の雑用を徹底的にやらされる。先輩の方は3か月だ。先輩の方が長いのも仕方ないだろう。


悪事を働くより、人に悪事をさせる方がもっと悪い。人は弱いものだから多少悪いことはしてしまうのは仕方ないが、それを人に勧めるのはいけない。


だが何か有能ぶりたいとかよくわからない承認欲求などで怪しいことを人に勧めたがる人は多い。ただアレックスと先輩との関係がちょっと不安だ。その辺道場主に聞いてみた。


フェリス「アレックスと先輩との関係は大丈夫なんですか?」

道場主「ああ、あっちの方にはきつく言っておいた。意趣返ししたら次はないと」


フェリス「それはまあ、教唆の方がもちろん責任は重いわけですからね」

道場主「まったく、しかしどうして弟子たちはああやって見習わなくてもいい先輩を見習って、もっと見習ってほしいような先輩は見習わないんだろう」


それはわかるような気もする。立派な先輩は何か近づきがたい。それに先生が言うような原則に近いようなことを言う。結局それが統計的には一番いい道だからだろう。ただそれはやはりつらいこともある。


どこかいかがわしい先輩の方がなんとなく親しみやすいし、気持ちもわかってくれるように思うのだろう。


フェリス「先輩の方は上前をはねていたりはしなかったんですか?」

道場主「ああ、それはないようだ。あれも親方から人を連れてこいと脅されていたようだ。もし上前でもはねていたら破門していたところだ」


道場主はアレックスと先輩のバイトについて見落としはあったが、考え方はわりとしっかりしているようで、とりあえず大丈夫だろう。


世の中には年少者など預けてはならない指導者がいくらでもいる。そうだったら引き離すなり、クラープ町のアレックスの親に伝えるなりしないといけない。


フェリス「そうですか。それでいま言うのもなんですが、謹慎があけたらうちでアレックスを雇ってもいいでしょうか?」

道場主「うん? 何をさせるんだ? 護衛はまだダメだぞ」


フェリス「ええ、それはわかっています。うちの基準でも未成年は不可です。まあこちらは仕事はいくらでもあるんで」

道場主「まあその時はそれもいいだろう。バイトしたきゃ言ってくれればいいんだけどな。認めていないわけではないのだから」

それはそうなのだろうが、道場主は重厚感もあるし、アレックスは少し気後れしていたのかもしれない。


フェリス「ではお願いします」

そういうと道場主がちょっと怪訝な様子を見せる。しばらくして口を開く。


道場主「しかし何だな。君と話していると、なんだか年上と話しているようだな」

紅顔の美少年をつかまえてなんてことを言うのかと思う。もうその表現自体がおっさんだけど。




 道場主と話してちょっと疲れたので家に戻る。だがクロと遊ぶにはちょっと早いのだ。


クロと遊ぶ時間だが、昼の1時ころ行ってもまだ寝ている。こちらが触れば起きてくるし、相手もしてくれる。だが気持ちよく寝ているところ無理に起こしたくもない。


少し寝ぼけているときに「クロ」と呼んでみると、反応はするのだがやっぱり寝ていたいようで、すぐに顔を腕にうずめて寝てしまう。


そういう時は少し触るくらいはするが、できるだけそのままにしてやる。だがジャリの神の方は平気で触っている。


フェリス「ほらクロが寝たそうにしているからやめろ」

神「クロ様を触りたいんだ」


フェリス「待てないのか。だいたいお前は一日中暇だろ」

神「一日何度か触らないと意欲がわかん」


別にこの神に意欲がわいたところで世の中がよくなるわけでもない。3時ころになるとクロも目が覚めて遊びたがるので、それまで待てばいいだけだ。


フェリス「いいかこの時間はそっとだ。3時になったら触っていいから。猫のおもちゃでも作ってろ」

まるでおやつを我慢できないこどものようだ。


クロの方は1時に起こされても、そんなものかとばかりに神に付き合っている。気まぐれで引っ掻いたりもするが、受け入れないといけないものは受け入れるのかもしれない。


ただ何となくだが、その後からはさらに起こされにくいところに寝るようになる気がする。やっぱり猫様の気に入るようにふるまうのがいいのだろう。











誤字報告ありがとうございます。

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