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15. アレックスと道場に行く

 アレックスがブラック親方のところで働いていたのでやめさせることになった。遅刻で罰金とか未成年に危険なことをさせるとかブラック要素てんこ盛りだ。


ただアレックスは保護者であるクルーズンの道場主に黙って働いていたので、その点だけはちょっと面倒だ。


面倒と言っても俺が悪いわけでもないし、ブラック親方が何か有利になるわけでもない。ただアレックスが道場主から叱責されるだけだ。紹介した先輩も同じだろう。


アレックス「親方なんて言ってくるかな」

フェリス「どうせ手出しなんかできないから」

アレックスは親方を恐れているようだ。とは言え官憲に通報すれば、何ができるわけでもない。


アレックス「いやあれは恐ろしいんだ。逆らった先輩は殴られたり蹴られたりしているし。フェリスなんかじゃ相手にならないよ」


体罰はこの社会では広範囲に行われているし、あまりにひどいものでなければ許容されている。とはいえ効果は怪しいし、逆に弊害の方が大きいのでいいとは思わない。


だがその親方はおそらくそれ以外の違法があるだろうから、そちらをつつけば官憲がどうにでもしてくれる。俺がわざわざ相手するまでもない。


伯爵の威光をちらつかせるのは好まないが、官憲は俺に好意的に動いてくれると思う。それを法を破ってまで使おうとは思わないけれど。


権威をちらつかせて法を曲げるようなことをしているとクラープ町にいた子爵ゲルハーの取り巻き商人たちのように商売が下手になってますますそれに頼るようになる。前世の日本でも似たようなのはいたけれど。



 ともかくアレックスは商会に押しとどめ、手紙を書いて使者を官憲のところによこす。商務部長の部下から必要な部署に連絡してもらう。


ただ親方の方は先輩を責めるか、道場に押しかけてくるかしてくるだろう。アレックスの無断バイトが道場主にばれるそうだが、それも仕方ない。


フェリス「それでな、アレックス。今回のこと、道場主にはきちんと報告しような」

アレックス「え? なんでそんなこと」

フェリス「親方が先輩を責めたり、道場に押しかけてくるかもしれないだろ」

アレックス「あー、そうかあ。何てことしてくれたんだ。いまからでも親方のところに行かなきゃ」


そっちかい? と思う。もう今から行っても1時間超の遅刻だ。こちらはいかせるつもりもないし、どうしようもないだろう。


フェリス「もう官憲に通報したんだ。戻る手はないよ」

アレックス「どうしたらいいんだよ!」


フェリス「一緒に謝りに行ってやるから」

別にそんなことまでしなくていもいいのだが、クラープ町でカスパーからよろしくと頼まれたので、付き合いで行ってやることにする。俺もシンディに連れられて一応は道場には行っている。幽霊弟子だけれども。



 シンディと嫌がるアレックスと一緒に道場に向かい道場主に話をする

フェリス「こんにちは、ちょっとお話があります」

道場主「君は、えっと……」

フェリス「フェリス・シルヴェスタです」

道場主「ああ、フェリス君だったね」

やはり幽霊弟子だからか、記憶にないのだろう。


フェリス「それでこちらのアレックスですが、隠れてバイトをしていました。ただ勤め先があまりにもひどいところだったので強制的に引き留めました。

道場の方に迫ってくるかもしれません」

アレックス「本当にすいませんっ」

激しい勢いで謝っている。


道場主「アレックス、後でちょっと話をする。私はこちらのフェリス君と話してから行くから、道場で覚悟して待っておけ」

かなりの勢いで叱りつけるような言い回しだ。アレックスの方はうなだれて道場の方に向かう。


フェリス「それでアレックスの職場は未成年に危険なことをさせ、体罰もひどく、罰金を取るなど違法の疑いがあります。官憲には通報しました。それから彼は先輩に紹介されたようです」

道場主「まったく内輪の恥をさらして申し訳ありません」

ちょっといつもの弟子向けの態度とは違う。官憲に通報したのがきいているのか。


フェリス「親方が道場に迫ってくるかもしれません」

道場主「ええ、そんな者は追い返してやりますよ」

そう言ってもらえると頼もしい。


フェリス「それでアレックスですが、何とか寛大な処分を」

道場主「ああは言いましたがね、内弟子が隠れてバイトするなんて当たり前ですよ。だけど締めるところは締めないといけない」

フェリス「どうするんですか」

道場主「しばらくは外出禁止ですな。しっかりしごいてやりますよ」

フェリス「いろいろお手数かけます」

道場主「いやカスパーから彼を預かっているのは私だ。私が気にかけなくてはならなかったんだ。ご協力感謝します。しかし……」


道場主が何かいいかける。

フェリス「しかし……、何ですか?」

道場主「いや人は見かけによらない。稽古では線が細いのに、こういう場面になると堂々としている」

そりゃ、まああなたより中身は年上だからそうだろう。修羅場もずいぶんくぐってきた。別にくぐりたいわけでもないが。


ともかく道場の方は何とかなったようだ。

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