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親たちの思惑(下)

 マルクも10歳が近いマルコの修行先を考えないといけない。クラープ町の本家はあまりよいと思っていない。


当主は自分の兄だが、商売人としては全くダメだ。あの家は義姉さんで持っていると思う。


クルーズン市くらいなら徒歩3日でそれほど遠くないので、徒弟に出すのも悪くないと思っている。あそこならときどき帰ることもできる。


これが商都や王都となると若い息子にはまだ早そうだ。いずれ成長すればそういうところに行くこともあるだろうし、実際にマルクだってそうしてきた。




 それよりフェリスについていかせれば何か面白いことになるかもしれないと思う。彼はなかなか面白いところがあるし、商才もありそうだ。


ブドウを売りに行った件やろくでもない老人たちから巻き上げた件やワインづくりなど商人として成功が見込めそうな気もする。


どうも聞いているとフェリスはクラープ町に出るらしい。マルコも一緒に行かせるとなると、本家に世話にならないといけないかもしれない。


それでもあれ(兄)はダメだが義姉さんならマルコを預けても悪いようにはしないかとも思う。




 妻のセリーヌとの話しあう。


「マルコももうすぐ10歳だがどうしたものか」

「本家の方はどうなの?」

「どうもなあ。あそこでまともに修行になるのかと」

「お義姉さんならそんなに悪いようにはしないんじゃない」


妻も兄はダメだと思っているらしい。


「本人は何か希望はあるのか?」

「聞いていないけど、あの子はこだわりはありそうでも、言われればそれに従いそうね」

「いつも一緒にいるフェリス君はどうするんだろうな」

「彼はなかなか面白いわね。子どもらしくないというのか。でも大人というよりはそれも飛び越えて老成しているような」

「行商とか料理とかブドウ売りとかいろいろしているみたいだな」

「彼と一緒に商売させてみるのはどう?」

「それはそれでよさそうだが、修行もさせないといけないからなあ」


本人たちの知らないところで、そんな相談がされていた。





 レナルドはシンディがフェリスにくっついてしまえばいいと思っている。シンディはすでに10歳の誕生日を迎えた。


この社会では女性でも主に家でだが経済活動を行っている。シンディも小さい子に稽古をつけたり、畑を耕したりしている。


男の子に比べると女の子は外に出さないケースも多く、シンディも10歳を超えて家にいる。


一般には家事手伝いという名目だが、シンディの場合は家事の方はさっぱりでむしろ家業の武術中心だ。



 外に出すにあたり、フェリスがどこか外へ行くならついて行かせてもいい。


シンディはフェリスを甘ちゃんなどと言っているが、ギフト抜きにしてもフェリスの方が見ていて安心できる。


なんというか考えが大人だというか、老成しているというか。おっさんが入っているというか年寄じみている気もする。


スローライフだとか不労所得だとかfireだとかよくわからないことを言っているらしい。


そういえばギルドに保険を提案したとかでスコットも舌を巻いていた。


とにかくシンディと仲もいいようだし、あのギフトは規格外だ。




 シンディ本人は騎士になりたいなどと言っているが、ほとんどの騎士団は女子禁制だ。それでなければ冒険者か。


危険だと思うが、どうせ言っても聞かないのだろう。


シンディの将来について妻のシルヴィアとの話し合う。


「シンディはこの後どうするか聞いているか?」

「さあどうするんでしょうね。うちの用は何もしてませんけど」

「道場では小さい子に稽古をつけているな。ただちょっとやりすぎるから見ていないと怖い」

「セリーヌさんは男の子なんかつまらないと言っていましたけど、女の子でもね、あの調子じゃ……」

「騎士団に入りたいとか冒険者になりたいなんて言っているな」

「女でも入れる騎士団なんかあるんですか?」

「まったくないわけではないが、まあ難しいな。そうすると冒険者か」

「危ないんでしょう。スコットさんだってそれでやめたはずですし」

「クラープ町の道場で徒弟にでも入ってくれるといいんだが」

「内弟子は家事もできないといけないでしょう」

「その辺は言い聞かせて」

「あの子が言うことなんか聞くもんですか」

「ううむ。フェリスについて行くかもしれないから、どうするか聞いてみるか」

「それがいいんじゃありませんか」


何か落ち着くところに落ち着かせるための確認のような問答である。本人たちの知らぬところでまたそんな相談がなっていた。





 フェリスは教会のホールでこの社会ではわりと高価で珍しい鏡で自分の姿を見る。ここに来た頃よりずいぶん成長したと思う。


亜麻色の髪とブルーの瞳をもち輝かしい未来が見えるようだ。


中身はともかくブラックで疲弊していたおっさんの面影はない。一方でクロは元のままだ。


「考えたらクロの姿は変えなかったんだな」

「クロ様はあのお姿で完璧なのじゃ」


猫としてはきれいとかかわいいより、どちらかと言うとぶさかわといった方がいい外見だが、完璧だと言われればそういう気もする。


この子を連れてどこまで行くのか、思いめぐらせていた。

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