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10. シンディは書類づくりに悪戦苦闘

 子爵に襲われ護衛が必要となり、組織的に護衛してもらことになった。


ところがシンディにその仕事を任せたところ、いきなりうまくないことをし始めた。護衛としてはまだまだ未熟と思われる年下のアレックスを登用しようとしている。



 冒険者ギルドのスコットにシンディに諭してもらえないかと相談したところ、商会の中で解決した方がいいと言われる。


それでマルコと話してそちらから言ってもらうことにした。そんな話をしているうちにシンディからアレックスの採用について頼まれた。



シンディ「前に話した護衛の件だけど、アレックスを採ってもいい?」

フェリス「そのことなんだけど、経費が掛かるからちゃんと書類を作って会議を通さないとお金が出ないよ」

シンディ「面倒ね。前はすぐに出たじゃない」

フェリス「これだけ商会が大きくなっちゃうとね、そうしないと回らないよ」


 護衛についてだが、少なからぬ経費が掛かる。もちろん商会の金から支出する。


商売を始めたころは人も少なかったので、口頭で主人である俺に同意を取れば支出もできた。


だが人数も多くなってきて、いまはどのような経緯で経費が必要になるか書類を作る必要がある。


そうでないと処理しきれないし、後で何の理由で経費を支出したかわからなくなってしまうからだ。



 そういうわけでシンディは書類を作り始めるが、ぜんぜんかけそうな雰囲気がない。


会議で同様の書類はいくらでも出ているのだから、それを参考にすればいいのだが、そういうことは思い浮かばないらしい。


彼女も見ているはずなのだが、頭にはほとんど入っていなかったのかもしれない。それで悪戦苦闘している。


シンディ「なんでこんなめんどくさいもの書かないといけないの?」

フェリス「これがないと商会のことなんてわけがわからなくなっちゃうよ。毎週十数件はこれくらいの決裁が回ってくるんだよ。昔の何倍もある。口頭でどうにかはできないよ」


週に十数件というのは役員のレベルまでの決裁が必要な支出は限られているからだ。日常の支出や金額が小さいものについては手代や番頭レベルで決裁している。


そういうものはまとめて後で見直して、大きな問題がなければそのまま通される。


シンディ「そ、そうね」


 何とか納得してくれたようで、書類を作ろうとしているが、なんとなく内容が怪しい。


いずれは彼女の下にもそれをするための秘書のような役をつけるかもしれないが、そうだとしても彼女自身も仕事の内容を知っておくべきだと思う。



 シンディはマルコにも書類作成について聞いているようだ。たまたま彼らが話しているところに居合わせた。

シンディ「この書類はどんな感じにすればいいの?」

マルコ「ああ、これはこの例を参考にすればいい、あと前に会議に出た資料を見れば実例がたくさんあるよ」

シンディ「実例とかじゃなくていまどう書くか知りたいの」

マルコ「役につくなら十分に見ておいて書類を自分で一から書けるようにならないと」

シンディ「いま書き方を教えてくれれば書くわ。それで慣れて行けばいいでしょう」


マルコはいま彼女がすべき具体的な書き方を教える係りでもないし、それを教えるくらいならマルコ自身が作ってしまった方が楽だろう。


やっぱりシンディが十分に頭を使って慣れて行かないといけない。教えちゃいけないと思っていると、マルコは上手いこと反論した。


マルコ「あのさ、シンディは僕に道場に行けっていうよね」

シンディ「ええ、そうね。道場に行って剣術を習えば暴漢だって防げるわ」

マルコ「道場では暴漢のあしらい方だけ教えてあとは実戦に投入したりする?」

シンディ「するわけないでしょ。そんなの危険よ。十分に剣術に上達しないといけないわ」

マルコ「そうだよね。書類作るときだって書類に慣れていないとダメだよ。目先のやり方だけでは危険だ」


そう言われてシンディもあきらめたらしい。それで素直に他の書類も読み始めた。


それで2日くらいかかったようやく書類を作ってきた。またマルコが見ることになったようだ。


それでマルコはかなり多くのことを指摘している。こういうことが苦手なシンディがくじけないか心配になり、後で聞いてみるとそうでもなかった。


フェリス「何かマルコと話していたの?」

シンディ「ええ、あれは実戦練習のようなものよ」


得意の剣術に引き付けて理解したらしい。とにかく腐らないのはよかった。何度かマルコに見てもらってかなり整った書類ができたようだ。


ただシンディはマルコに指摘されたところを素直に直すのだが、一点だけがんと譲らないことがあった。アレックスのことだ。


マルコはあるときに指摘したようだ。俺から聞いたとは言わずに、書類を見て初めて知ったような風で言ったらしい。


マルコ「このアレックスって、あのクラープ町のアレックス?」

シンディ「そうよ」

マルコ「ちょっとまずくない?」

シンディ「何がまずいの?」

マルコ「だって彼まだ子どもだよ。護衛はさすがに無理なんじゃない?」

シンディ「それを判断するのはあたしよ。書類の形式の方のことは聞くけど、内容のことはあたしが判断するわ」


そう言って譲らなかったという。ある意味ではもっともなことだ。マルコの言ったことは確かに内容面だ。書類の添削で指摘するべきことではない。


ただ会議を通すことを考えたら内容面のことも相談しておいてもよかったとは思う。

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