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護衛の仕方

 子爵に襲われて、シンディを中心に警護してもらっている。だが組織的な警護をした方がよさそうだ。


冒険者ギルドのスコットからシンディが組織したらどうかと勧められ、本人に振ってみると、少し迷っているようだ。シンディは休みを取って考えてみると言っている。



 シンディが休みを取るのは少し困るが、いろいろと考えなおすのはいいことだと思う。


いつものことをしていると考えが狭くなる。少し仕事を離れて、いっそしばらく遠出でもすればいいと思う。



 とはいえ、そうなると、代わりの護衛が必要になる。ブラック企業だと1人いなくなって仕事が動かなくなることは多々ある。


そして上役はなんであいつはいないんだと叫ぶ。そりゃ年がら年中いないならともかく、たまにいなくなったからと言って組織が回らなくなる方がおかしい。


それは勤め人ではなく、経営や管理が心配するべきことだ。1人がいなくなっても組織は動かなければならないので、その手当を考える必要がある。


シンディ「あたしがいなくなって大丈夫なの?」

フェリス「そりゃ長い間いなくなるなら困るけど、短期間なら何とかするよ」

シンディ「そう……。でもそのまま修行に出ると言ったらどう?」

フェリス「それがシンディがよく考えて出した結論なら尊重するよ。思い付きなら考え直してほしいけど」

シンディ「あたしがいなくても困らないのね」


何か様子が変になってきた。その辺は理解してもらわないと困る。


フェリス「それは……、商会はみんながそれによって生活しているからね。1人がいなくなって組織が動かなくなってみんなの生活が脅かされたら困る。主人の俺がいなくても動くようにしなきゃいけいないくらいだよ」


長年一緒にやってきた幼馴染相手に言う言葉にはそぐわないとは思う。だけどいい加減な嘘を言っても、彼女には通用しないと思う。


だから厳しいことでも言ってしまう。厳しいというと、上位の者が下位の者になにか嗜虐的な意図で何か言うこともある。今回はそういうことではないと思っている。


シンディ「そうね、あたし一人がいなくなって商会が動かなくなったら困るものね」

何か珍しく弱気になっているようだ。慎重に言葉を選ばないといけない気がしてきた。


フェリス「商会はね、動かないと困るよ。俺がいなくなったときだって、シンディが前に立って商会を動かしたじゃないか。だけど僕らが個人的にさみしくないかと言えば別だよ」

シンディ「そんなに深刻にならなくていいわよ。1週間で帰ってくるから」

少しは納得がいったのか、表情がすこし落ち着いた気もする。




 シンディの言うことがちょっとフラグっぽくて心配していたが、結局1週間で帰ってきた。


俺は前世では中年だったので、人との別れというのもずいぶん体験している。また会うつもりだったのに、ずっと会わなくなった人もいる。


あるときは大事な人だったけど、会わなくなるといつの間にかそれが当たり前になり、それで済んでしまうことも経験している。


ずっと会わなかったのに突然何かのきっかけで再会した人もいる。それでよかったと思う人もいれば、会わなければよかったと言う人もいる。




 シンディのいない間は馬車で行き来して、冒険者ギルドから回してもらう護衛に少し長めにいてもらった。


やはり行動は制限されていろいろ面倒だったが、1週間と時間が限られているので、さほどいやだとも思わなかった。


見通しがついているとやはり気が楽だ。逆に見通しのつかない状況で不便があると、けっこう堪えると思う。



シンディ「ただいま」

何か少しやせた気がする。

フェリス「おかえり。どこか行っていたの?」

シンディ「ええ、ちょっと山の方に」

よくよく聞くと山籠もりをしていたらしい。武道家というのはそういうものなのだろうか。ただいつもとまったく違うところに行くのはいいことだ。シンディの場合もう少し普段と違ったことをしてもいいとは思うけど。とはいえ俺も1人だったらそういうことはできないかとも思う。


フェリス「それでどうする?」

シンディ「とりあえずはフェリスの身の回りを守ればいいんでしょ」

フェリス「まあ、そうだけど」

シンディ「フェリスがいつも言っているじゃない。新しいことを始めるときは小さくって」


それはその通りだ。新しいことに手を付けるのはいいが、いきなり大きく始めるのはよくない。手探りで知見や力量を付けながら広げていくべきだ。


フェリス「そうだね」

シンディ「じゃあとりあえずあたし以外に2人か3人護衛をつけてあたしが指揮するわ」


ちょっと拍子抜けした。それでも、組織というほど大きいものではないが、初めはそれくらいがちょうどいいのかもしれない。


とにかく彼女との別れにもならないで済んだし、こちらの必要な警備も手に入りそうだ。


何か作るときは、大きなデザインを作って構築するのではなくて、とりあえずそんな風にとりあえずできるものなのかもしれない。必要があれば大きくもなるだろう。






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