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シンディの逡巡

 子爵に襲われてから、シンディが俺の警護をしていたが、人を入れて組織的に警備することを考えている。

冒険者ギルドのスコットから勧められてシンディにその話を振ってみた。シンディはあまり乗り気ではない。



 人に大きな仕事を任せられたときどうするべきかというのは一概には言えないと思う。


どんどんやれと言う人もいて、それはそれで一つの見識だ。難しい仕事をすることで地位だけでなく能力的にも上に上がる可能性はある。


だがもちろん失敗する可能性だってある。ただ勧めた人は失敗についてある程度は見込んでいるので、勧められた人がそこまで気にすることもないとは思う。


もちろん明らかにするべきことをしないのであれば非難もされるべきだが、能力が足りないとか向かないなら勧めた方が大半の責任を採ればいい。



 そうは言っても断った方がいいこともあるとは思う。本人の感性とか生き方にそぐわない場合だ。


実はそれらは実はそれほど本人にとって明らかというわけでもない。わかっているつもりでわかっていないし、してみないとわからないこともある。


ただどうしても合わないならしない方がいいし、勧められた仕事が多くの人を巻き込むのなら最初から断るのもいい。



 断った場合にどうなるかについては、再考を促されることもあるし、逆に声がかからなくなることもある。


前世の経験でも両方あった。断ってから後で後悔したこともある。あまり目の前で即断即決を求めないで欲しいようには思う。


よく考えて断ったなら自分の責任として引き受ける気にもなるが、話を持ち掛けた目の前で決めろと言われたときは相手の持って来方が悪いようにも思う。どうも即断即決を求めるタイプは思い付きで物事を決める人に多い。



 俺自身が前世で他人にちょっと成果につながる仕事をしないかと声をかけて断られたことがある。


再考を促したこともあったし、同じ人には似たようなことは頼まなかったこともあった。頼まなかったのは断られて恨んだとか見放したわけでもない。


ただ単にそういう考え方なんだなと思ったまでだ。あるいはちょっと声が欠けにくいと思ったのかもしれない。



 それでシンディの話に戻ると、やはり再考を促してみることにした。彼女の生き方にそぐわないわけでもないと思う。


もちろん今から冒険に出たいとなれば、途中で仕事を投げ出すことになるから、しない方がいい。だけど商会にいるならたぶん悪くない仕事だ。


即断即決を求めるのはそれこそ本人が困ることになりそうなので、それは避ける。


フェリス「うーん、シンディは冒険に出たいとか外に修行に出たいとかはあるの?」

シンディ「まあ、いずれは行って見たいとは思うわ」

フェリス「すぐには?」

シンディ「特にそうは思っていないけれど、なんかあたしがいたら困ることでもあるの?」

なんか変な方向に行ってきた。


フェリス「いやいや、そんなことはないよ。とうぶんはここにいたいならその方がいいんだ」

シンディ「そう」

フェリス「それでね、さっきの話だけど、やっぱりシンディにしてもらいたいんだ」


実はあまり失敗が許容される話ではない。子爵の襲撃自体は一度失敗して伯爵も警戒している上に、いまは王府まで介入しているので可能性は以前よりは低い。


ただ彼は常識が通用しないほどの愚か者であるし、起こった場合にはあまりに重大な結果になる。今度は本当に始末される可能性もある。そうは言ってもいまの警備状態よりはよくなるとは思うのだ。


もちろん他の者に任せた方がより良い結果になる可能性もある。ただその場合はシンディは警備から外れることになる。別の人間が上に立って警備を統括するのに、シンディが警備に入るとなるといろいろ齟齬が起こるだろう。


そうなるとシンディは完全に浮いてしまう。マルコとの3人の関係も、役員の間の関係もいろいろ見直しになりそうだ。


シンディ「あたしに長がつとまるかしら」

フェリス「長と言ってもはじめは数人のリーダーくらいでいいんだけどな」

そういうと、少し考えている。

シンディ「そうねえ……」

何かふだんは即断即決のシンディらしくない。いろいろ悩むことが大きくなったのか、処理しきれない問題だからなのか。


フェリス「そんなにすぐに結論は出さなくていいよ。1週間くらい考えてみたらいい。必要なら代わりの護衛を頼んでもいいよ」

自分の過去の経験で結論はすぐに求めない。ただなにか考え事をしている護衛というのもあまりいて欲しくない。そういう意味でも護衛は複数いた方がいい。


シンディ「そうね。少し考えてみるわ。有給休暇を取ってみる」


こちらの世界では休暇は明示的にあるわけではない。なんとなく関係性で重要な用事があれば休めるだけだ。


それも職位や身分に左右される。うちではきちんと明示的な制度として位置付けている。


休暇を取るかどうかはそれぞれの人次第だ。アランなどは売れない歌を歌いに行くためにしょっちゅうとっている。


シンディはたまに剣術の大会に出るために3日ほど休んだことはあるが、それ以外はない。


その彼女が休みたいと言うのだから、尊重するべきだろう。ただそれでまた考えなくてはならないこともあった。


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