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冒険者ギルドのスコットの提案

 子爵に襲われて警備の必要性を痛感するようになった。実は襲われる前から必要でなかったわけではない。


うちが新しい商品やサービスを開発するとまるで昔からの友人の用に近寄ってきてよこせと談判する人は多数いたのだ。


また相手が悪いと思ってはいるが、クラープ町でもクルーズンでも商売敵を潰したり、あくどく何かふんだくろうとする従業員を首にしたりしてきた。


彼らが逆恨みしたってまったくおかしくはない。正々堂々正面から訴訟をしてくれればまだいいのだが、そうでない手を使ってくる可能性は多々ある。




 訴訟してくればまだいいと言ったが、まだいいだけでやはりくたびれる。前世でもとんでもない人はいた。


あまりにも無理筋の難癖をつけてくるのだ。もっともらしい主張に見えるが、主張が妥当となるための要件がまったく足りない。その点指摘して反論してもあくまで言い張ってくる。


要件がダメと指摘されたら諦めればいいのにどうしても主張を押し通さないと損だと思っているのか、あるいは無理筋の主張をするのが有能だと思っているのか、引き下がらない。


変な理屈は使うのだが、本人にとって都合の悪い方の理屈はだんまりである。どうもごね得で何かつまらないものを得てきたようなのだが、結局は警戒されて損しているようにも思う。


訴訟まで行かず苦情あたりのこともあるが、いずれにしても受ける側は勝ってもなにも得しない。ただ疲労感が増すばかりだ。



 前世で実力行使ということはほとんどなかったが、こちらの世界はそうでもない。やはり戦争が50年くらい前まであったから、その記憶が残っている。


社会のあちこちに実力行使していいとか、粗暴な扱いが残っているのだ。それにいまも魔物や大型動物などの危険が多いから帯剣している人も多い。


そうなるとどうしてもそれを使う場面も増える。だいたい道場だって少しくらいのケガはかまわないと考えて稽古しているのだ。とてもついていけない。



 ともかくそんな状態なので、警備が必要だと言うことにつくづく思い至った。それで護衛を募集するには冒険者ギルドで頼むか、道場に頼むのがいい。


もうすっかりご無沙汰してしまったが冒険者ギルドのスコットと話す。セレル村にいたころからお世話になり、俺のギフトのことも知っている。


スコット「また用心棒の用か?」

フェリス「はい、お願いしたいと思います」


スコット「フェリスは結局冒険者にはならなかったんだな」

フェリス「ええ、すいません。いろいろ教えてもらったのに」


スコット「まあ向き不向きがあるからな」

言い方は中立的だが、要するに俺は不向きだと言うことだろう。ただ彼は俺がギフトを使ってオークを退治したことは知っている。

それでも不向きだと思っているのかもしれない。

フェリス「ええ、商売の方が楽しくて」


スコット「そうだな。フェリスはそれでいいが、シンディの方はどうなんだ?」

フェリス「ええ彼女の方は商売はそれほど好きでもないみたいです。ただこの前に俺が拉致されたときは商会でもずいぶん活躍しましたよ」

スコット「ふーん、どんな活躍だったんだ?」

フェリス「ええ、他の役員たちは右往左往していたみたいですが、彼女ははっきり騎士団に通報しろといって、さらにマルコを代理に立てました」

スコット「荒事には強いな」

フェリス「ええ、そうですね」


そうは言って見たが、訴訟沙汰などだとちょっと難しい気がする。やはり得意なのは暴力が絡む問題だ。スコットは何か考えている。


スコット「商会の内部で警備を組織的に行うとか言っていなかったか?」

フェリス「ええ、そのつもりです。今回のことでその必要性を痛感しました」

スコット「その警備の組織の方だが、シンディに長をやらせてみたらどうだ?」


それは考えていなかった。シンディはあまり組織の運営には向いていないと思っていたからだ。

フェリス「うーん、どうなんですかね。彼女はあまり組織の運営には向いていない気もしますが」

スコット「長と運営は別だ。こまごましたことは下に誰か人を付ければいい」


確かに長と実際の運営は別であることは多い。ただそこまでしてシンディを勧める理由はなんだろう。もちろんスコットが彼女やその父親と個人的な知己ということはある。


ただそれだけで勧めるようにも思えない。だいたい失敗したら彼女も傷つくし、評価も下がる。その辺を聞いてみる。

フェリス「何でシンディがいいと思ったんですか?」

スコット「あのな、護衛になるようなのは腕に何か覚えのある者ばかりだ。そういう連中はひ弱で帳簿いじくっているような奴の言うことなんか聞かないぞ。少しくらい他がまずくても、とりあえず強い奴を上に置いておいた方がいいんだ」


なるほど確かに護衛となると特にこの世界では少し荒っぽい者が多い。組織運営が得意な人でも人がついてくるかどうかは別問題だ。線の細い美少年で少し早口のカミロが筋肉隆々の彼らを前で号令をかけていてもあまり様にならない。


制度を作って報酬というエサをつければ動くかもしれないが、それでは心腹というわけにはいかないだろう。


いやもちろん制度や報酬でぶれない一定の仕事をさせることは必要は必要だが、それ以外の要素だって考えた方がいい。


フェリス「うーん、ちょっと考えてみます」

スコット「いい返事を待っているぞ」


ちょっと考えるは断りの常套句とも考えられている。ただ今回はそうでもないのだ。本当に考えてはいる。ただ結果として却下になることはありうる。とはいえ、やはり本当に考えないといけないとは思っている。









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