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警備の問題

 前に子爵に拉致されて、命からがら戻ったが、まだ子爵は摘発できていない。また襲われると怖いので、市外の西部の方に入り浸っていた。


ところが商会主人だけにいろいろ仕事もある。射なくなったときの予行演習と称して、役員たちに代行させていたが、さすがにそうもいかなくなった。


役員たちが雁首揃えてマルコを筆頭に外を出歩くなとか仕事をしろと迫ってくる。これでは前世のブラック時代と変わらない気がする。



 あまりにもブラックだと嘆くが、役員たちは聞く耳持たない。

フェリス「これじゃ、働き過ぎだー」

マルコ「朝は来ずに10時か11時ころに来て、割とすぐ昼食で、その後も散歩に出かけて、5時までいない人のどこが働きすぎなの?」

ジラルド「ええ、うちでいちばん働いていないと思いますよ」

アーデルベルト「さすがにかつて務めた商会でも、店主ほどお時間に余裕のあるかたはいらっしゃいません」


ああ、なんか真面目組が目の前にそろっている。この点、シンディとかアランとかカミロとかだったらもう少し楽しそうなことを言ってくれそうなのに。そう思って後で聞いてみると、そっちはそっちでさんざんだった。


シンディ「時間に余裕があるのに道場に来ていないわね。道場にちゃんと行っていれば暴漢なんか防げたはずよ」

アラン「西部旅行のことはこちらでしておきますから、店主は管理の方お願いします。いろいろ決裁していただかないといけないことも多くありますから」

カミロ「ちょっとこちらのシミュレーションを手伝ってもらっていいですか? え? 管理業務で忙しい? まあ、そっちはやっていただくと言うことでこちらも」


シンディはともかく、あとのふたりもワーカホリック気味だ。




 それで仕方なく、執務室で決裁などを行う。だが退屈だ。役員だけしか出入りできないスペースがあるので、そこから家に戻りクロをモフモフしたりする。だがそちらはそちらで昼のうちは神と競合する。

神「こら、クロ様を取るでない」

フェリス「さんざん仕事してきたんだからいいだろ」

神「ふん、ふつうはもっと働いておるじゃろ」


何も働かずに日がな一日猫と遊んでいる暇神ひまじんがなんか言っている。もっともこれが何か神通力を使って世界に影響を及ぼしたらそれはそれでよくない気もする。




 ところで子爵の拉致から戻ってからいろいろ警備が強化された。外を出歩くときは基本的に馬車だし、人と会うときもたいていシンディが一緒にいる。


さらに家の入口には領主である伯爵の付けた衛兵が立っている。それもギフトバレしないように入口が2つあるので2人だ。


さすがに衛兵の費用は伯爵持ちだが、それでもこちらで門番小屋を作ったり、門番に簡単な飲食を出したりと持ち出しもある。


それ以外でも警備がらみの出費は多い。いま伯爵が王府に申し出て子爵を調べているが、罪が確定したらその分も損害として請求したい。



 そんなわけで警備費用について役員たちに聞いてみた。

フェリス「最近警備が強化されて警備費用がかさんでいると思うけれど、その辺はどうなの?」

マルコ「費用が掛かるのは痛いけど、こればかりは仕方ないところもあるし、利益は十分に出ているよ」

ジラルド「店主だけでなく従業員を狙うこともあり得ます。うちに勤めたら犯罪の被害に遭いやすいなどと言うことになれば、人を採るにも苦労することになります」

それはその通りだ。


アーデルベルト「いや以前に勤めていた商会に比べると、むしろ警備の費用は少ないくらいですな。大きくなれば狙われます。うちも大きくなったということでしょう」

なるほどそう言う考え方もできるのか?


シンディ「あのー、警備って自前でできないの?」

いまの警備は冒険者ギルドや剣術道場などに依頼して用心棒に来てもらう形だ。警備会社のようなものはない。


シンディの言っている意味が解らないので、聞き返してみる。質問に質問で返すのはよくないと言って一つ覚えの武器のように使う人がいるが、それは場合による。よくわからない質問やそもそも適切でない質問なら、質問で返すのも仕方ない。


フェリス「えーっと、それは僕らが剣術を習うってこと?」

シンディ「フェリスがいくらやったって暴漢なんか跳ね返せるわけないでしょ」


はっきり言われるのもつらい。それにそうだと思うなら、何も道場に来いと言わなくてもよさそうなものだと思う。


50年前まで戦争していたり、いまでもそれなりに武力が幅を利かせている世の中なので、実は他の役員たちもだいたい剣術は習ったことはあるのだが、たいていいまいちなのだ。


アランは人よりは少しうまいが暴漢相手にはなりそうにない。マルコもカミロも全然ダメ。ジラルドもまじめに取り組んだみたいだが芽は出ない。シンディだけ特異なのだ。


フェリス「じゃあ自前でって言うのはどういうことなの?」

シンディ「ほら、氷魔法使いはうちで育てたじゃない。ああいう風に剣術の素質がありそうな人を育てて、警備に当てるのよ」


何となくそれはいい気がしてきた。シンディは単に剣術を振興したいのが先にあるのだろうが、警備の面でも商売の面でもよさそうな気がする。

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