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1.役員たちに取り囲まれる

 前に子爵から拉致を受けて命からがら逃げだした。その後はまたの拉致を恐れて西側の地域にばかり入り浸っていた。その後始末がいろいろある。


 拉致はいま住んでいるクルーズンつまり伯爵領で行われたことだ。俺も伯爵領の住民となっている。


そこに子爵の手下のならず者が拉致を行ったとなれば主権の侵害で大問題だ。伯爵領としては武力行使も辞さないと言う話になる。


ただ具体的な証拠が全くないのでは介入するわけにもいかない。あくまで俺の証言だけだ。



 そこで伯爵領府は財産争いの方から介入することにした。また発端は俺なのだが、子爵領のクラープ町の商会に出資していた。


出資というよりはむしろ俺が創業して経営していた商会を別の商会と合併させて、合併先の店主に経営してもらっていたところだ。俺の持ち分が大半で出資としている。


そこに子爵が俺がけしからんと言って俺の出資分を取り上げようとしたので、その前に伯爵と司教に(実は形の上だけだが)売ってしまった。


その状態で取り上げを行う。さすがに子爵領の家宰や重臣たちは無理と判断したらしいが、無能な子爵やその部下のウドフィは強行しようとしている。


その争いをもとに王府に訴え出たのだ。いま王府の役人が調査に入っている。ついでに俺の拉致のことも調べるらしい。



 それはそうと、いま商会でマルコに呼ばれている。話があるので、少し時間を取って欲しいと言われた。会議室に集まる。すると俺を取り囲むように役員がずらりとそろっている。


マルコ「今日はちょっとお話があります」

何かちょっと不穏な雰囲気だ。解任でもされるのだろうか。資産は十分あるので、それならそれでうれしいのだが。あとはクロと一緒に遊んでればいい。ただそうすると一日中あの神と顔を合わせることになるのだけは何か嫌な感じだ。


フェリス「はあ、何でしょうか?」

マルコ「西部の旅行ですが、一週間で帰る予定ではなかったのですか?」


そう言えば最初はそんなことを言っていたな。けっきょくレオーニ氏に付き合って2か月になってしまったけれど。


レオーニ氏が帰らないと言ってぼやいていたが、俺の方も同じように思われていたらしい。あまり人のことは言えない。


フェリス「いろいろと向こうで事件がありまして……」


マルコ「それはわかっています。ただ本業の方にももう少し気を配ってもらわないと」

フェリス「いちおうこっちにはギフトで帰ってきて仕事の処理はしていまして……」


マルコ「いいですか、あなたは商会の主人です。パートタイムで務まる仕事ではありません」

やっぱり怒られている。今更気づいたが言葉遣いが硬い。いつもはもっと砕けた感じだ。


フェリス「はい、その通りです」

マルコ「本当にその自覚があるのですか?」

フェリス「はい……」



マルコ「いいですか、商会の主人ともなれば判断しなくてはならないこともたくさんありますし、会合や顔見せなどにも出なくてはいけません」


何か諭されているようだ。マルコは俺より数か月年下だし、転生している俺から見ると何十年も年下で、まだ15歳の成人前だが、まるで管理職の用だ。いや実際管理職なのだが。


もっとも部活の先輩あたりでも大人ぶったことを言う者はいるのでそう言うものなのかもしれない。


大人のようであっても中身はまるで子どもという人も多いので、年齢だけで何か言えるわけでもない。


実はある社会ではしないといけない振りというものがあって、大人の方がそれが多いだけというのが正しいところだと思う。


なお回りの役員たちもちっとも優しい表情は見せてくれない。睨みつけているとは言わないが、マルコの言うことがもっともだと思っていそうだ。



フェリス「ただ……、また子爵の襲撃があるかもしれないわけで……」

マルコ「それはわかっています。とはいえ伯爵も見回りを強化してくれています。こちらも馬車もつけていますし、シンディに警護もさせています」

それが窮屈だから外を出歩きたいのだが、それはわかってくれないようだ。


フェリス「いちおう西側のツアーの開発など仕事をしてきたわけだし」

マルコ「それは商会の主人のする仕事とは思えません。旅行業専業の商会でもっと規模が小さかったらそれでもいいでしょう。ですがうちは違います。担当者がすればいいことです」


確かにその通りだ。今回してきた仕事が無駄とは言わないが、うちほどの規模のしかも旅行業が本業でない商会の主人の仕事とはいいがたい。


マルコ「それにですね、西側だって安全かどうかはわかりません。むしろ市内の方が伯爵領府の目が届くだけ安全です」


それも間違いではない。いま襲われないのはたぶん俺がどこにいるか子爵たちがつかめないからだろう。その情報がわかればむしろ伯爵領外の方が暴漢は自由に動ける。


マルコ「とにかく、当面は市外への出歩きは禁止にします」


はっきり宣言されてしまった。役員たちもそれがもっともだと言う顔で見ている。俺が出歩いている間にすでに相談があったのだろう。


やれやれ、早く隠居できないものかと思う。マルコを養子に取ればそれもできるだろうが、そんなことを言ったらもっと怒られそうだ。

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