グランルスでのならず者たちの末路
西部への旅行の後片付けをしている。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
シャルキュでレオーニ氏の懇意の店の主人と話す。冷蔵流通の計画を進めるためだ。あちこちに顔見せはしておいたので、後は担当者に頼んでおけばよさそうだ。
それからシャンプに行く。シャンプでももちろん支店くらいは顔を出す。レオーニ氏がいろいろ買い込んでいたので、それはギフトでクルーズンに送ってしまった。
クルーズンの俺の家が広いからいいが、結構な量だ。シンディやマルコも呆れている。彼の店に置くところがあるのだろうか。
グランルスでは世話になった里の飯屋に行く。大型店がヤクザ者を使って嫌がらせをしていた店だ。しかも自警団までそれを野放しにして加担してた。
ならず者たちがいなくなってずいぶん風通しがよくなったようだ。飯屋の主人と話す。
フェリス「その後はいかがですか?」
主人「ええ、おかげさまで、ずいぶん商売をもしやすくなりました。多くのお客様にも来てもらえますし、町会でも我々のような小さい店の意見も耳を傾けられるようになりました」
もともと悪くない店だったが、さらになんとなく雰囲気があか抜けた気がする。
さらにヤクザ者や大型店の結末も気になったので聞いてみる。
フェリス「ヤクザ者たちはどうなりました?」
主人「ええ、ヤクザ者たちは捕らえられ重労働に、依頼した店の方も財産没収の上で追放になり、自警団も幹部が何人も入れ替わりました」
なるほどそれなら、もう悪さはできまい。それに同じようなことをしてくるのも出にくくなるだろう。街の汚れを片付けられたと思う。
食事をして支払いをしようとしたら、お礼なのでいらないと言う。ただそう言うのもあまりいいとは思わない。
きちんと払うと言ったが、主人は固辞する。仕方がないので、今回限りということでごちそうになった。
主人「またぜひいらしてください」
フェリス「ええ、ぜひ」
いつ来れるかはわからないがまた来たいとは思う。
ついでに騎士団の方にも顔を出す。ヤクザ者の逮捕に重要な役割をした騎士たちだ。
フェリス「お邪魔します。以前にお世話になったシルヴェスタです」
騎士「おお、お前か。よく来たな。今日は何の用だ?」
フェリス「ええ、ヤクザ者たちの排除をしていただいたお礼に伺いました」
少しばかりクルーズンからの菓子など土産に持って行く。
騎士「まあ、それが俺たちの仕事だからな。とは言え、お前さんにはなんだか担がれた気もするな」
げっ、ばれたか。さすがに利用されたとなると気分もよくないだろう。適当にごまかす。
フェリス「いえいえ、決してそのようなことは……」
騎士「ふん、我々がたまたま外からは見えないあの個室にいて、たまたまヤクザ者が来て不届きを働いたと言うのか?」
確かに俺がヤクザ者が暴れているところを騎士に見せるように図ったのは間違いない。
正確にはいつヤクザ者が来るのかわからないので、食事で騎士をおびき寄せてできるだけ長くいてもらうようにしたということだ。
ついでにヤクザ者が暴れる前に騎士を見つけたら犯罪をその場だけやめるのは目に見えているので、それを見越して騎士を個室に入れた。
とはいえ、そこまで確実に騎士とヤクザ者がぶち当たるように精密にコントロールはできないので、あくまで確率を高めたまでだ。
フェリス「はい、私どもにとっては幸運でございました」
騎士「ふん、あくまで言い張るか。まあよい。あのならず者共は排除できたし、あの店にうまい料理もできたしな。その方に乗せられたのも悪くはない」
この辺でどこまで認めるかは少し塩梅が難しい。相手にもよるからだ。いかにも俺の策略だと言うことになると騎士も気がよくないだろう。
まして町民たちがそんなことを吹聴するようになったらもっとまずい。ただ騎士が言っていることを否定し続けるのもまたよいことでもない。
もう少し付き合いが深くなって相手の行動が読めるようになれば、それに応じた受け答えができるのだが、いまだそこまでではない。
フェリス「騎士様のおかげをもちまして、私どもも安心して商売ができます。大変に感謝申し上げます」
騎士「まあな。もっと早くに捕まえられればよかったのだが……」
それはその通りだ。その辺はもう少し知りたい。
フェリス「何か難しいところがあったのでしょうか?」
騎士「ううむ。どうにも胡散臭いところはあったのだが、被害者たちも報復を恐れているのかなかなか話してくれなかった。それに自警団に自治を認めている手前、なかなか手出しもできなくてな」
確かに被害者は加害者を恐れて思い切った行動には出にくいことは多々ある。それに自警団が形だけは住民の総意で動いていることになっていて、実質は大型店や有力者に牛耳られていたのもまずかった。表面上は問題がないことになってしまっていたのだ。
フェリス「ところでヤクザ者たちは重労働、依頼者の店主は追放と聞きましたが、そのようなご判断だったのですか?」
騎士「ああ、その通りだ。ヤクザ者は数年は出てこられないだろう。あの店主は財産も取り上げとなり、町からは追放された。もう戻っては来れまい」
一応確認しておく。街中の噂話というのは実際の話とは異なることも多いからだ。もっと正確な情報が欲しければ領府の役人に文書を見せてもらった方がいいが、今はそこまでは必要ない。
ともかく彼らとこの町で会うことは数年はないだろうし、その後の復活も難しいように思う。
ヤクザ者の末路はそんなものだろう。大型店の店主も欲をかかずにまじめにすれば、それなりに安泰な生活があったからだ。中年過ぎてまったくのゼロから始めるのはつらいだろう。
騎士と別れる。領主の男爵については、悪い人ではなく会いたくないわけでもないが、さすがにふらっと立ち寄って話をするわけにもいかない。かといって何もせずに町を立ち去るのも感じがよくない。支店から手紙と礼の品などを届けさせることにする。
なおこのグランルスでもレオーニ氏が調理道具をずいぶん買い込んで支店に置いてある。これもギフトでクルーズンに移してしまうことにする。
シンディとマルコが呆れたような目で見ている。箱にクロがのっかったりして遊んでいる。
グランルス周辺でレオーニ氏が目をつけておいた仕入れ先との交渉についてはさすがに追いきれないので、支店の従業員に任せることにした。




