シャルキュでの冷蔵流通の準備
西部への旅行の後片付けをしている。ツアーについて食事面を中心にテコ入れするためにレオーニ氏たちと西部に行ったはずだったが、いろいろ騒動があって中途半端になってしまった。あらためて1人で西部に向かっている。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
いまはシャルキュで冷蔵流通の準備をしている。この町にレオーニ氏お気に入りの店があって、そこから冷蔵で運ぶはなしだ。
もともと西の方に運ぶはずが、レオーニ氏はすっかり東のクルーズンに運ぶつもりでいる。それはともかくそういう計画ができたとしても、実現するには面倒な準備が必要なのだ。
人を採らないといけないために教会に向かう。こちらの世界では教会がいちばん採用には向いている。
さいわい俺は教会育ちのために割と行くのには慣れている。とはいえ紹介状がなければ相手は信用してくれない。
それは信仰の濃淡はあっても自分の教会の信者を何かの仕事にあっせんするとなったら信用できるかどうか見極めるのは当然だろう。前世では闇バイトなんてものがあったが、こちらだって犯罪まがいの仕事はある。
その紹介状だが、司教の書付があるのでそれを見せればよさそうだが、前に見せて大事になったことがある。
偽物かもしれないと信用されなかったり、ずっと格上の相手だと思われて話が面倒になったりしたのだ。
だからあらかじめクルーズンの教会でもっと下役の司祭にお願いしておいた。それをもってシャルキュの教会に赴き、そちらの司祭と話す。
司祭「こんにちは、神の家に何か御用でしょうか?」
少し品のよさそうなし司祭が迎え入れる。あの銭ゲバの司教あたりが神の家と言っても、神の家はうちだと悪態をつきたくなるが、善良な信者が心の拠り所とするところにはそう言う気も起きない。もっとも神なんてものは猫の下僕でしかないのだが。
フェリス「私、クルーズンで商会をしておりますフェリス・シルヴェスタと申します。今日はうちの従業員の募集でお願いに上がりました。こちらが紹介状です」
そう言って紹介状を差し出す。
司祭「それでは拝見いたします」
司祭は一通り紹介状に目を通す。
それから具体的な話をする。氷魔法使いの候補が欲しいこと、素質のある者だけ雇うこと、素質を測る必要があり参加者を多数集めたいこと、
採用に至らなくても参加者にその分の払いはすること、半年ほど留学が必要でそれはこちらが出すことなどだ。
司祭「ずいぶんと条件が良いようですが、こんなに大盤振る舞いで大丈夫ですか?」
フェリス「氷魔法使いは希少です。それに冷蔵流通で他地方の産物を持ってくると高く売れます。十分に元が取れます」
司祭「そうですか。それでしたら、私どもの信者の方にも良いお話のようですし、声をかけてみましょう」
フェリス「ありがとうとございます。詳細についてはあらためて担当の者に伺わせます」
教会に来たのは単なる顔つなぎだ。だいたい細かいことは部下や支店に任せた方がよほどスムーズに行く。
支店だったら紹介状すらいらなかったかもしれない。ただそれなりの地位のある人物とはいちおう会っておいた方が信用されやすい。
クルーズンではそれなりの規模の商会だが、有名な大商会というほどでもない。顔を売っておいて損はない。
氷魔法使いの方はそれでいいとして、馬車業者の方も手配しないといけない。ただこちらはすでに旅行ツアーの方で一度会っている。
とは言え、もっと増やしてもらう可能性もあるため、会いに行く。通常通りとかそれから少しだけ大きいくらいの取引なら担当者でもいいが、取引が大きく拡大するとなると上の者が行く必要がある。もちろん役員のアランだっていいのだが、ついでだ。
馬車業者「どうもシルヴェスタさん、お久しぶり、今日はどんな御用で」
フェリス「お久しぶりです。実はまた数か月後ですが、少し輸送量を増やしてほしいかと思っております」
馬車業者「はあ、ツアー客が増えるんですか?」
フェリス「いえ、クルーズンで冷蔵流通というのをしていて、氷魔法で冷やした食材を保温庫に入れて運んでいますが、それをこちらでもしようかと考えています」
馬車業者「それは面白い話だ。どれくらいの規模で?」
フェリス「まだそれはわかりません、改めて担当者に連絡させます」
馬車業者「わかりやした。どうぞよろしく」
それ以外もごたごたと細かいことを処理する。例のレオーニ氏懇意の店での実験に2日かかるからだ。そちらにも毎日顔を出す。
フェリス「実験の結果はどうでしょうか?」
主人「なるほど、面白いものだな。原理は簡単だがこんなことができるんだな」
フェリス「ええ、ただいろいろ難しいこともあります。悪くならないようにしないといけないですが、凍らせてしまうとまずくなってしまうものもあります。冷やし方も食材に応じて工夫しないといけません」
主人「そうみたいだな。これは悪くはなってないがあまりうまくはない」
フェリス「ええ、間接的に冷やすとかいろいろ方法があります」
前世だって何でもかんでも冷凍食品にできるわけでもなかったし、冷蔵のものは保存期間も短かった。冷凍食品だって冷凍の仕方次第でずいぶん味が違っていた。その辺はかなり複雑だ。
主人「レオーニがやりたがる理由もわかるな」
フェリス「ええ、彼は食べ物にかけては情熱的ですから。ただその下準備はずいぶん面倒なので、ほどほどにして欲しいですね」
主人「あ、そうだ。その冷蔵・冷凍の仕方の工夫だがレオーニにさせたらどうだ。あいつだったそう言うことにはこだわりがあるだろう」
確かに彼はそう言う実験は好きそうだ。とは言え、彼が店を空けるとなるとまたマンロー氏は胃が痛いだろう。
フェリス「ええ、お店の都合がつけばやっていただきましょう」
主人「そんなの呼びつければすぐ来るだろう」
そんな気もする。ただだからと言って簡単に来させるわけにもいくまい。適当に話をはぐらかす。
フェリス「今回はご面倒な仕事をお引き受けいただいてありがとうございます。規模を大きくするとなるとご面倒もおありでしょうに」
主人「ああ、そうだな。ただ冷蔵流通となるとクルーズンからこっちにも運んでくるんだろう。それは楽しみだ」
なるほどそう言う狙いもあるのか。確かに冷蔵庫を片道だけ食材を詰めるとなると輸送費が無駄になる。商売を考えたら双方向にせざるを得ないのだ。
ともかく少しは話が進んだ。




