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レオーニ氏の大風呂敷のあと片付け

 レオーニ氏のレストランの出資者の会に出ている。シャーベットのお披露目で終わるはずが、レオーニ氏が冷蔵流通を西部に広げたいと言い出したのでややこしくなった。


そんなにすぐにできるわけでもない。その辺のことは出資者たちに説明した。だが出資者の方も前のめりだ。氷魔法使いが足りないと言っても王都や商都から引っ張ってくればいいと言う。


方々への細かい調整があるので、さすがにこれ以上話を進めるわけにはいかない。うちの商会内だって調整しないといけないし、魔法学校だってそうだ。西部の取引先だってまだまだ準備はできていないだろう。


フェリス「冷蔵流通については前向きには検討しますが、まだ実務者間で調整しないといけないことが多すぎます」

それで出資者たちも少し我に返ったようだ。とは言え進めることは進めたいらしい。

出資者「それでは実務者たちに検討させよう」

出資者「うちも番頭に声をかけておく」


そんな調子で話が進んでしまった。このままだといちおう話はしないといけない。もちろんうちの条件が悪ければ最終的に断ることはできる。その辺は条件闘争次第だ。とはいえ面倒は抱え込んでしまった。


レオーニ氏の方はもはや話が進めば後は興味がないらしい。あとはマンロー氏に丸投げだ。しかし彼もそこまで何でもかんでも丸投げでいいのだろうか。


マンロー氏は誠実だと思うが、世の中には番頭が大金を持ち逃げしてしまったなどと言う話はいくらでもある。


警察が全国で連絡して捕まえやすい前世だってそうだった。こちらの世界ではもっとありそうなことだ。もう少しきちんと事業のことを押さえておいてもいいように思う。




 実務者級の話し合いとなるとトップの俺が出るのはまずい。俺も実務の細かいことまでよく知らない。


それに番頭が話したことは最終決定でないので商会に持ち帰って再検討して取り下げることもできるが、主人だとそう言うわけにもいかなくなる。


だからしばらくは番頭に話をさせておくほかない。結局悪いなと思いつつ、マルコとジラルドとアランに投げてしまう。彼らだって仕事はあるのに。



 彼らとも話す。

フェリス「というわけでレオーニ氏の店の出資者たちが冷蔵流通に一枚かみたいらしいんだ」

アラン「出資はありがたいですが、いろいろ面倒になるんじゃないですか?」

マルコ「その辺はそちらだけの新商会を作って株式の方式でかじ取りしてもよさそうだね」

ジラルド「魔法学校を大きく広げるとなると資金も必要ですし、リスクも大きくなります。出資を受けるのも必ずしも悪いことではありません」


確かにその通りだ。事業というと成功例ばかり目につくから自分だけでしないと損に見えるが、実は失敗も数多い。


失敗の方は大失敗でないとあまり世の中に話しとしては広がらない。だから必ずしも自分だけで抱えるのがいいわけでもないのだ。



 そうこうしているうちに実務者たちの集まりが開かれることになった。レオーニ氏も一枚かむが、彼は表に出ない。


もちろん細かいことはしたくないのでマンロー氏に丸投げだ。丸投げは俺もだが、彼の方は自分が主体的に動いておいてとは思う。


ともかく、魔法学校も含めて実務者たちが話しあって、漸進的に魔法学校を拡張しつつ生徒も受け入れ西部での冷蔵流通も進めることになった。


その辺の詳細はあまりにも細かすぎるし、俺も全部はわかっていないので話さないが、とにかくいろいろ面倒だった。



 後でマンロー氏と愚痴を言い合う。

フェリス「けっきょくレオーニさんは丸投げで下の者が苦労しましたね」

マンロー「ええ、いつものことです」

フェリス「西部の方のシャルキュの店の食材は手に入ったのですか?」

マンロー「送ってもらっています。ただ向こうの店主も当惑していました」


それはそうだろう。あの西部からの帰りに立ち寄ったときにとつぜん持ち出されて、ゆっくり進めればいいとの話だったのにどんどん話が進んでいくのだ。


フェリス「それはあちらのお店の方も大変でしたね」

マンロー「ええ、ただ……、うちの主人のことはよく知っているようで、むしろ同情されました」


けっきょくうちの店もシャルキュの支店を拡張して冷蔵流通を進めることになった。人を取る必要もあり、向こうの店にもいろいろ手伝ってもらった。


魔法学校の方も商都で氷魔法使いを探して連れてきた。人だけでなく学校の設備の方も拡張しないといけない。もちろん輸送についても馬車業者と長期契約が必要だ。


もろもろの費用が掛かり、出資者間で分担する必要もある。そう言う面倒な調整はだいたい番頭間でなされたようだ。


ブラック化したいわけでもないのに、何かブラックが入り込む。レオーニ氏が関わった時点でそう言うきらいはあったのかもしれない。


フェリス「よくレオーニさんの下でやっていけますね」

マンロー「ええ、なかなかつらいですが、やはりこの店があるのは彼の才能のおかげなんです」


それはそうだろう。ただ天才がいたとしてもそれを実現する下支えがないと大きな事業はできない。それに天才だってすべてを見通せるわけでもない。


時には阿呆な思い違いをする。もし正しいものを見ていたとしても、時代の状況が整っていないこともある。3年先を見ていれば上手く行くことでも10年先を見てしまえば失敗することもある。


2人で愚痴を言っているが、レオーニ氏は別の部屋でまた自信満々に部下に指示を飛ばしている。



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